私は魔法少女…だった
この国は表向きはおとぎ話みたいだけど、内面も治安も腐りすぎていた。
さらに、それを裏で暗殺、隠蔽しまくってるいる。
でも、誰もそのことに気付かない。
なぜなら…
「オーホッホッ、悪の女幹部オニオン参上!
今日も殺しまくって闇エナジーを集めまくりますわ!」
「「「「キー!!」」」」
グサッグサッグサッ
今日も大量殺人が始まる。
「あっはっはっ!
楽しすぎるわ!あの魔法少女たちと《遊戯》を楽しむのも面白いんだけどねぇ!
そう思いません?ーーー大首領さまぁ!!!」
オニオンは私の後ろにいるキュイースに話しかける。
キュイースは中性的な顔立ち…主観で言わせてもらうなら、謎めいた雰囲気で女をよろめかせて愛でる大変な変態女…ごほん、悪の大首領である。
「うん、ボクら異星人の侵入を、暗殺と引き換えに許すバカな王様のおかげで《法的に》殺せるしね」
本当にこの国は愚かだ。
魔法少女はこの星が自己防衛のために産み出したものでもあるのに、自分達の欲望を優先させて悪の組織を支援するなんて、本当にバカ。
キュイースが私の髪をいじくる。
「ねぇ、君もそう思うでしょ、魔法少女ペルシィ」
「…よくしゃべるコブタさんは嫌われますよ、
愚国の家畜さん?あら、悪の大首領さまでしたか?」
私はこのバカな国の下級貴族で、魔法少女だったため、バカな王様のせいでこの変態に売り飛ばされた。
その後、キュイースが大変な変態なため、気に入られてしまった魔法少女である。
「貴様、大首領さまになんたる…!!」
「ーーーオニオン、止めろ」
「はっ」
キュイースの一言と若干の威圧で、オニオンは引き下がる。
腹立たしいことにキュイースは統制者としての威厳と人望は持ち合わせているのだ。
キュイースは一転して私に穏やかな笑顔を向けるが…
「こういうのはさぁ!!
強気な女の子を屈服させるのが面白いんだよ!!」
うわぁ。ヤバイこいつ。
「さすがですわ!大首領さま!!」
部下も部下だった。
「と、いうわけでぇ、この場はオニオンに任せて、ボクらはイチャイチャしよ♡」
「いやです」
「即答!!
御飯おごってあげるよ?!お菓子もあま~いジュースもぜーんぶあげるよ!?」
お菓子…ジュース…欲しい。
バカな国のバカな政策のせいで全然食べれてないけど、隣国の旅商人が安く売ってくれたアメはとてめおいしかった。
「おっ!!
目が光ったね!初めての反応だ!!
もしかして甘いもの好きかい?!」
「さ、さあ?」
好きだし、なんなら魔法少女だって、この星の人を守るよりお菓子を守るためにやっている。
ーーーなんて言えるはずがない。
「もし、君がボクを愛して、ダーク魔法少女になってくれるなら毎日あげちゃうよ?」
毎日…!!
で、でも…さすがに裏切りは…
それに…
「ダーク魔法少女になるには闇エナジーを取り込みますよね?
絶対、正気を失うパターンですし、い・や・で・す!!」
「え~、失わないよ?
記憶は跳ぶかもしれないし、ボクのこと以外考えられなくなるかもしれないけど…ボクの愛する君が壊れないように優しく注いであげるから」
副作用、やっば!!!!!
「あ、記憶無くなるなら名前入らなくなるよね?ボクが新しく考えてあげる。
君はボクに与えられた名で、ボクだけを見て、ボクに忠誠をささげ、純潔を…!!」
「最後におかしなものが混ざってますよ!!」
あと、キュイースの目が血走ってる。
本気でヤバイやつだ!
私はキュイースを蹴り飛ばす。
「この痛み、痛きもちいぃ♡」
ひい!
「このド変態が!!」
「あ、罵倒も最高♡」
私は捕虜なので、さすがに手は拘束されてるものの、足はあのへんた…おかしな人が外してくれていた。
そのことに多少は、多少は!…感謝し、全速力で逃げる。
はやく、はやく、はやく、
あと少しでトモダチのウフの家に…!!
「捕まえタァ♡」
突然、背中が重くなる。
「逃げるなんてひどいねぇ、ペルシィ?
君はもっと弁えてると…いや、毒舌ばっかだったけ。
まぁ、そこがボクのハートにズッキューン!!…と来たわけだけど、ね…。
ーーーボクから逃げるのだけは許せない」
キュイースの声が一段低くなる。
威圧感も先程の幹部に見せた軽いものから、リミッターを外してしまっていて、怖い。
私は小鹿みたいにプルプルと震えた。
もはや、動けない。
…どこへも、いけない。
そんな私の様子を察したのか、キュイースの声音が朗らかなものに戻る。
「うんうん、諦めてくれるのが一番。
君から絶望の闇エナジーを感じるよ。
…うん、とっても甘くておいしいね!」
キュイースが私の首筋をペロリと舐める。
「ひぅ!!」
私はこそばかったが、動けばまたさっきの威圧感を向けられるような気がして、耐えて泣くことしかできなかった。
「うん、健気になってきたね。
でも、主に逆らったんだから、お仕置きも必要だよね」
「え、いやぁ!!」
「暴れない、暴れない」
キュイースが私の肩を押さえつける。
「だーいじょうぶ、痛いことはしないから。
というかボクが愛する者にそんなことするわけないだろう?」
キュイースの宥めるような声は闇の魔力が滲んでいた。
聞いてはダメ…!
そう思うけど肩を押さえられてるせいで耳を塞げない。
「君はただボクを愛し、ボクの愛に応えてくれるだけでいい。
あ、それ以外の感情も邪魔だから除けようかな?」
「この地球も記憶が戻ったら困るから消さないと、だね」
「あと、人間の体じゃ年とっちゃうし、ボクと永遠に生きられないから直ぐに捨てようね、ペルシィ…いや、もう君は【ペルシィ】じゃなくなるんだっけ?」
ペルシィ…?
それは誰の名前だっけ。
「さぁ、ボクを見て」
私は命じられるまま目を合わせる。
キュイース《さま》の血色の目はどこか恐ろしくて、…いえ、私は何を言っているのかしら。
キュイースさまの深紅はこんなにも《美しい》のに!!
「君はボクのもの。
ボクだけのために踊る可愛らしいマリオネット」
私はキュイースさまだけの、もの。
「すべてをわすれてしまったのだろう?
可愛いお嬢さん」
「ボクがすべてを与えてあげる」
「だから君もボクだけを欲せ」
私はあなただけを…
私はコクリと頷く。
「いい子だ。
与えよう、君に新たな名を。
君の名は…」
ーーーーーーーーーーーードール。
貴方だけのお人形。