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鉱物工房の魔法使い  作者: ボルツ・アルマース
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初めまして異世界 1

炎天下の夏、毎年テレビから流れるのは例年より暑い夏、異常気象といった類。まあ日本列島がそんなであっても、私のすることは変わらない。


毎日毎日会社行って、毎日仕事をこなして週末のご褒美に本屋で漫画を漁る、そんな日々。ストレス発散方法なんて人それぞれで、ストレスのかかり方も人それぞれ。

電話口で謝ったり、仕事でミスして凹んだりーーーーだけど!


今日は私が待ちに待ったイベント!!ミネラルショー!!これが凹んだままでいられます?いられない!

好きなものには正直に!これが私のモットーです!


「よし!行くぞー!!」

「おー!」


少し年上のお友達、るい)。彼女も私と同じ鉱物好きで、よくミネラルショーに一緒に行く鉱物女子だ。まあ、財布の紐は私よりゆるいですが、財力があるっていいよね。


さて、ミネラルショーをご存知だろうか?もしくはミネラルマルシェ。簡単に言えば鉱物や化石をメインに販売するイベント。日本中、果ては海外の方までイベントに参加する私の中での一大イベントなのです。もちろん売る側にとってもね!

夏休みに書店で鉱物化石フェアがあるでしょう?それの超拡大版だと思っていただければ。


「雫、これ!お目当ての石だよ蛍石だよ!」

「おいしそう」

「食べないの」


値段は…まあ、5桁近い数字ですよねーーーー!知ってた!鉱物の値段は安いものから高いものまで。もちろん財布の紐はゆるくはなるけど、それでも上限というものがありまして…綺麗で大きなものであれば、やっぱりそれなりの値段するんですよねー。でも欲しいなあ、蛍石。ブラックライト当てると光るので、蛍光鉱物と呼ばれる類です。


「あー値段…んんだが欲しい!んー、どうするかなー」

「知ってる?雫、私たちの財布には魔法のカードがあることを…」

「来月現実で苦しむ魔法のカードじゃん…しかし一括じゃなければ払えるのでは…?」

「そう、二回に分けてあとは節制したら払えるの」

「悪魔の囁きしやがって…!」


しかし魔法のカードで二回に分ければまあ、節制すればなんとか生活できそうだな。ほんと。

んんーーーどうしよう。蛍光鉱物好きとしては、ここまで綺麗に発光する蛍石を逃して良いものか…。


と、悶々と店先で悩んでいると、視界の端に何か綺麗な緑色が映り込んだ。

映り込んだというか、視界に飛び込んできたというか。

それは蛍石の緑よりも深い、深みのある色だった。でも蛍石の中にもこんな感じの緑があったような?

琥珀糖の緑というよりは、何層にも緑が重なったような色。深みも奥行きもありそうな、それは海の底を眺めているような、透明度が高い緑。


「それ、気になります?」

「え?」


その緑色の石をひょいと持ち上げて、私の前に持ってくる。


「良い色をしているでしょう?でもこれ、現存している鉱物の構造とは違うので売り物じゃないんですよ。誰かがこれを知らないかなと思って、飾ってみてるだけなんです」


売るつもりはないのかーそっかー。

って、ここに並んでたら売り物にしか見えないよ。


「これ買えないんだって…こんな良い色してるのに。欲しいよね、ねえ累ーーーーー」


でもすごく綺麗だから、友達にもみて欲しくて。そういて声をかけたら





いなかった。


いや、居なかった??むしろさっきまで出入り口をふさぐぐらい人が往来していたのに、部屋から人が消えた。

まるで最初から人がいないかのように、そこには鉱物しかなかった。


「は?」


ちょっとさっきまで友達と喋っていたのに、累もいない。誰もいない。なのに自分は存在していて。


「え、る、累?!だ、だれかいません?!え、なんで誰もいないの?」


途端、景色が一変した。先程までいた、鉱物や化石が並ぶ楽園から、最後に見た鉱物のような、あの深みのある緑の水の中に。

瞬きの間に一変した世界は、息を止めるには十分な理由だった。このまま口開けば、空気が漏れる。でもずっと息を止めるわけにもいかない。

体にまとわりつく水は冷たすぎず、けれども体温を奪うには十分だった。このままでは溺れる、だって私あんまり泳げない!!!



『おや、そのままだと沈んでいくだけだよ?』

「?!」


誰??!声、声だ!どちら様ですか!!


『まあ、いきなりこの状況で咄嗟に泳げる人間はそういないか。でも大丈夫。これはただの水ではないので、息もできるし声を出せる。というか、君ならできる』


なんだその理屈。


『んー、でもこのままだと君、記憶されてしまうからなぁ。やっぱり声を出すのは無しね。見つかったら、殺されてしまう』


どっちだよ!!ていうか殺されるとか物騒なんですけど!


『時間がないので手短に。君は我々の世界に召喚される、大切な生贄であり後の英雄。帰りたければ中央塔を目指すことだ。そこに帰る手段が残っている。もちろん、成すべき事を成してもらわなければいけないけれどね。あと君には幾つかの贈り物をしているので、どう使うかは任せるよ』


待って待って聞き捨てならない言葉でてきたよ?生贄??生贄っていった!?あと贈り物ってなんだよ??なにこれ、もしや流行の異世界召喚??え、読んではいるけど自分には求めてないんだけど?!


『ああ、それと君に見せたあの石だけど』


そういやありましたね、今この状況だったんですっかり忘れてましたけど。

ていうかあなたあの店の人か!!客になにしてんだ!


『あれは世界を目覚めさせた5人目の祈りの結晶。あと4つ、これと似たような石がある。その石を探すんだ。参考にさっきの石は君にあげるよ』


あーあの綺麗な色の石…いし、この状況でくれるって言われてもなあ!!いや綺麗だったんで欲しいけどね?


あ、ちょっとまって、なんか感覚がなくなってきたぞ?


『ん、そろそろ終わりにしたほうがいいね。異変に気づき始めた』


異変?誰が気づき始めてんの?そもそも私をこの状況から助けてくれませんか?

足先から、指先から感覚がなくなってきてる。え、ちょっとまって透けてない??透けてるねこれ!!


『君は然るべき者に預けるので、衣食住の心配はしなくていい。それと君を選んだ理由だけど』


透けてる、足がもうほぼない?!これホラーじゃん!!

そして理由?理由って?いまこの状況でそれ言うの?!


『大きな地図に矢を投げる感覚で、あの場所にいた人間であの石に見惚れた者って理由だよ。まあ巻き込まれるべくして巻き込まれたので、君の悪運を呪うといいよ☆』



ダーツ感覚で人を巻き込むなーーーー!!!!


こんにちは異世界

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