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補給の為立ち寄った小さな村を出て、歩き続けているうちに少し日が傾いて、体感温度は更に低下した。

時折吹く突風が冷たく、ルルーはその歩を幾度か止めた。

そのたびに、ジェイが気遣いの言葉をかけてくれる事が、嬉しくもあり、申し訳なくもある。


「ルルー、もう少し、歩ける?」

「ん、大丈夫。」


短い言葉、小さな声かけがこんなにも心を暖かくするのか、と、ルルーは思った。

世の中、やはり経験して初めて分かる事は多い。


女将さんが、疲れてなかったとしても、見かけた村には必ず寄り、体調と装備、荷物の確認をするように、と何度も言っていた。

もちろん、ルルーもジェイも、強硬な日程で進めるつもりではなかったが。


ジェイ1人なら、こんな行程簡単だったかなぁ。


今更自分が足手纏いになっている事実を思い悩んだ。


「ルルー?頑張ってくれて、ありがとう。俺が、連れ出してしまったから…」


浮かない顔を覗くジェイが、そう言って気遣ってくれる。

その行動にさえ、ルルーの胸はチクリと痛んだ。

寒さと疲れで、苛立っていたのか。

子供じみた意地悪だった。


「わ、私が、必要なだけ、なんでしょう。貴方の目的のために。だから、私を連れ出したんでしょう!やっぱり、家に、居たら良かったんだ…」


ルルーは、胸に刺さる小さな棘をジェイにぶつけた。


「ルルー…君は…」


「あ、あっ!わ、私、何言って…!ごめんなさい!」


ルルーの言葉に、驚き戸惑い、最終的に拳を握り締め、悲しそうに眉を寄せるジェイに、自分の言葉がいかに無遠慮なものだったのか、後から気付く。


ジェイは、無言で半歩先を行く。


景色は変わらず、見渡す限り枯れた大地が広がり、すれ違う人も大分減った。

時折獣の声がするが、それはまだ遠い。


さっきまで、チラホラと見えた粉雪は、いつしか牡丹雪に変わり、ゴツゴツと荒い地面を濡らしていく。


時間が経つと共に、寒さが深まっていく。

まるで棘となって身体中に刺さっているようだ。


「悲しませるつもりは、無かったの!ごめんなさい。そもそも、貴方と私は、目的地が同じだったから。…貴方が現れなくても、私はここに来ていた。」


ジェイからの返答はない。


怒らせたから、悲しいのではない。

ここに来るまでに、沢山貰ったジェイからの気遣いを、まさに、仇で返してしまった。

その胸の痛みを慮ると、ただただ、ひたすらに悲しかった。

もう、何を言っても言い訳に過ぎない。


視界がボヤけるのは、涙を堪えているせいか。

大声で泣き出したい感情を押し殺し、務めて穏やかに、ルルーは言葉を押し出した。


「…だか…ら、貴方は、悪く…ない。」


そう、言い終わるか終わらないか。

周囲が歪み、ぐるりと回りだすと…。


ルルーの意識はプツリと途切れ、闇に覆われた。




「ルルー、ルルー、起きて、大丈夫?ルルー。」


近くで、ジェイの声がする…

なんだかとっても暖かい。

久しぶりに、凄く深く眠った気がする。


ルルーはゆっくり目を開けると、ボヤけた視界か少しずつ形を取り戻していく。


「ジェイ?……」

口を開こうとして、ジェイの指を唇に押し付けられて、ハッとする。

「…ここって?…」 

見渡すと、崖の間にできた窪みのような所だ。

火を焚いて、暖を取っていてくれたらしい。


ジェイを見ると、少し険しい表情で様子を伺っている。

「火を焚いたせいで、獣より悪く奴らを招いたようだ…」


シュンッ!


ジェイが言い終わらないうちに、風を切る音と共に少し手前に矢が突き刺さる。


「荷物を全部置いて行け。」


暗闇の中から声だけが響く。


「姿を見せろ」


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