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「オリバー!?…あんた、どうしてたの!?」


会議に割り入ってきたのは、あの日、親友を一度に2人亡くし、遺体を弔った後に姿を消していた、オリバー、彼であった。

1番に声を上げたミアですら本当にオリバーか疑っている。


騎士団でありながら、戦闘向きとは言えない容姿だった彼は、以前とは少し風貌が変わっている。


汚れたマントに隠されてはいるが、以前より身体が発達している。

何より、野生に近い眼光の鋭さ、身に纏う空気が、仲間たちを動揺させた。


「オリバー、よく帰った。…話しを。」


ゾイだけは、事情を知っているようだった。

落ち着いた素振りで労うと、オリバーを地図の正面に据える。


ふぅ、と小さく溜息を吐くと、用意された椅子に極浅く座る。

ゾイに手渡されたカップから、お茶を啜り、ゆっくりと飲み下すと、机に置かれた地図に目を落とした。

白いテープが巻かれた傷だらけの指で、地図の村をトンっと指指すと、いよいよ、事の次第を話しだす。


「あの日の少し前、テハタの村長から山がおかしいと報告を受けていた。鳥の声一つ聞こえない、と。テハタの村は北の山を背に門番の役割だ。…もう何年も前、テハタの村の前、テハータキ町という町があった。同じように魔物の襲撃を受け、兵団が派遣された。が、帰還した兵士はゼロ。町は全滅。…逃げ切れた町民が言うには兵団は町を北の山へ抜け、消息を絶ったと…。」


オリバーは、言葉を止め、まだ少しお茶を口に含む。


顔を上げ周囲を見れば、息を呑み話しを聞いている者が大半だ。

明らかに動揺しているのは、ミアひとり。

ゾイの顔色を伺っている。

付き合いが長いだけあり、知っているのだろう。


その時に消息を絶ったのが、ゾイの妻、エミリアを隊長とし、副隊長に親友のゲランを措いた一団だった。


一方のゾイは、眉ひとつ動かさず、オリバーを見据えている。


続きを話します、とでも言うように、オリバーはゾイに目配せをすると、隊長は一つ、頷いた。


「この地は、そんな事を繰り返す。説明のつかない不可思議な事もある地域だ。過去を知る年長者が、異変だと言っているのであれば、無視できないという判断が下された。俺たち…3人は取り急ぎ、様子を見に向かい、村に滞在して調査をしようとした、矢先、だった。…あの日。」

ほんの一瞬、苦しげに目を伏せて。

オリバーは続けた。


「カイデンとエリシャを弔った後、隊長に少し休むよう勧めてもらったが、…どうにも納得出来なかった。あいつらは、どこから来て、どこに行くのか。北の山を、身軽に1人で調査させて貰えないか、隊長に頼み込んだ…。」


記憶が蘇り、再び襲いかかる悲しみにオリバーは口を閉ざした。


ポン、と、肩が叩かれ、顔を上げると、傍らにゾイが立つ。

「…俺が、オリバーに調査を命じた。何度か、北の山には俺自身、調査に来たが。…有意な発見が無かったんだ。」

ゾイは、少し言葉を選びながら、説明を続けた。

「そして、今回、オリバーが北の山に篭って調査した結果…このあたり、このあたり、そして、このあたり。3箇所に洞窟らしきものを発見。入り口はいずれも小さく、2箇所については調査を断念。本部に通達し、入り口を封鎖する事にした。」


ゾイは簡易的に描かれた地図の中に、赤い丸をつける。

更に、丸を付けた上にバツを描き、最後の1箇所に、二重丸を描き込んだ。


「恐らく、厳しい行程になるだろうと思われる。洞窟の調査は、俺が先行する。付いて来たい者は、明日までに言って欲しい。…それ以外は本部隊を待ち、他2箇所の封鎖作業に合流するように。以上。」


説明を聞いていた隊員達に、動揺や恐怖、怒り、様々な感情が沸いている事を、十分すぎる程、ゾイは理解していた。

だからこその、志願制とした。

1人でも、行くつもりだ。

ルルーの方が歳が近いような若い兵士達を、道連れになんかできるか!


こんな…自分の、我が儘に…


焼け落ちた村の跡地に建てた、自分のテントに戻ったゾイは、そんな心苦しさをギュッと握り締めた。

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