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「…さて、と。」
ドヤ顔の女将さんの手によって、ドサッ、と、わざと音を立て、テーブルに幾つかの装備品が並べられたのは、あの晩から2日後の事だった。
どれも動物の皮が使われた、防寒具のよう。
ブーツには、これでもかと毛皮が巻かれ、靴底には見たこと無いような楔が刺さっている。
「お…女将さん、これ?凄いわ、凄く、なんて言うか、大袈裟ね。」
見たこともない大きなブーツに、ルルーは目を丸くする。
生まれた村は、冬は冷え込むが大雪は降らない。
ルルーにとっては想像も出来ない光景だ。
「バカ言うなって!こんな装備のブーツも知らないなんて…。ゾイのヤツ、この娘をこれでもかって程厳重な箱に入れて育てたようだね。…エミリアの娘でもあるのにね。…まぁいい。北に近づいていけば、雪は深く、凍えるように寒くなってくるよ。…心の臓から遠い場所ほど、冷やしたら早死にするからね。先っぽから凍っていくんだよ。」
女将さんは、そう言いながら大袈裟ブーツと手袋をポンポンと叩いた。
「…むしろアンタたち、んな軽装でよく旅をしようと思ったね。…通用したのは、ここまでだよ。ここからは季節も何も関係ない。何か狂ってるんだよ…北の山は…。」
それ、アタシも言ったんだけど…
途中で調達するとかなんとか言ってた奴いたよなぁ…
恨みがましくジェイをみるが、反対を向いて知らんぷりだ。
「おれは、戦闘特化だから。身軽じゃなきゃ動けない…」
不穏な空気を察知してか、ジェイは立てた両膝に顔を埋め込んでいる。
「戦闘もなにも!凍え死んだら大好きな戦闘もできないんだよ!バカ言ってないで、装備してみなさいっ!」
女将さんの大きな声が全ての反論を許さない。
自称旅のプロのジェイは、ぶつぶつとムクレながら、大袈裟ブーツに足を突っ込んでいる。
「ありがとう、女将さん。…アタシ、遭難する所…だった?」
頼りない相棒を連れたルルー一団には、女将さんのこの強引さが、本当に有難い。
女将さんは、大きな身振りで右手をおでこに当てると呆れたように首を振った。
「…アンタ、ルルーちゃんの事、命がけで守りなさいよ。家に居れば、普通の生活ができたこの子を。少なくとも、旅に出ると言う選択肢を提示したのはアンタでしょう。」
厳しい目つきで、ジェイの肩を掴んだまま、女将さんは、耳元で何かを呟く。
ドクンッと、聞こえそうな程驚いた表情をしたジェイは、女将さんの手を肩から引き剥がしながら大丈夫だ、と笑う。
「おれにとっても、この上なく大切な娘だ。失う訳にはいかなくてな。」
そう言いながら、ジェイはぴょこんと立ち上がり、つま先をトントンとさせた。
「ルルー、準備できたら、発つぞ。」
「はぁい!」
大切な娘…
その言葉に、ルルーのこの上なく小さな胸は、いつになく弾んでいた。
「…ルルー、もう少し、早く歩いて?」
「…ん、わかってる、けど。足を取られて!」
世話になった女将さんに挨拶をして、町を出たのは、もう1週間にもなるだろうか。
最初こそ順調だった旅は、北に向かうほど厳しさを増す。
村と村を点々と移動するしか方法はなく、




