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初めて、彼女を見た瞬間は、今でも覚えている。


シャワーの栓を開け、全身に熱めのお湯を浴びながら、ジェイは、目線を足元に落とした。


あの火山の中腹で彼女を発見した時、満身創痍、と言う言葉がぴったりだった。

服はボロボロ、身体は傷だらけ。

それでも、自分の背丈の倍はあろう魔物を前にして、歯を食い縛り剣を振るう。


その瞳だけは、生き抜く事を諦めず、依然、強く輝いていた。


返り血を浴びても輝くそのブロンドを、剣よりも細い手を、華奢にみえる肩を…。


彼女のその全てから目を離せなかった。



恋はするもの、と思って生きてきた自分が、何と馬鹿だったのか。


恋とは、落ちるもの。


本当に、堕ちてしまった。

全てが手につかない。寝ても覚めても、彼女の事が頭に浮かぶ。

笑って欲しい。俺だけに、笑いかけて欲しい。


美しいブロンドも、澄んだアイスグリーンの瞳も、女神とも思えるその身体も。

全て、この手に、、。


だから、全てを犠牲にしても良いと思った。

国も、仲間も、自分自身さえも。


「愚か者…」


呟いた言葉は、自分しかいないこの場所で。

必然的に自分に戻ってくる。


さっき見た、ルルーの涙が焼き付いて離れない。


「クソッ…。」

握り締めた拳を、壁に当てつける。


彼女を救いたい、それなのに、俺は…

俺は、一体、何をしているんだ…


シャワーから出ると、ルルーはすでに部屋に戻っていたようだった。


見渡すと、清潔だが、整然と、必要な物だけ揃えられた、広いこの部屋は、どこか執務室を思い出させる。


連想ゲームのように浮かぶのは、王座も討伐も、婚約者さえも押し付けた、銀髪の、最愛の弟。


「あなたは、いつも、ズルいひとだ」

涼しげな瞳を細めて、呆れたように笑う。


ルルーを連れ帰った俺を、どう思うだろうか。

ただ、自分の欲望の為に…お前さえも、犠牲にしたこの義兄を。



「…本当に、俺は、ズルいよな。」


あぁ、それでも。

それでも、貴女を、愛してしまったから…



そう呟き、ジェイは、大きな手のひらを見詰めながら、ぶつぶつと何かを呟いた。

全身が白い光に包まれて、消え行くと共に、ジェイの見た目は男性から青年へと逆行した。



待っていて下さい。

もう少しだから。






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