17
初めて、彼女を見た瞬間は、今でも覚えている。
シャワーの栓を開け、全身に熱めのお湯を浴びながら、ジェイは、目線を足元に落とした。
あの火山の中腹で彼女を発見した時、満身創痍、と言う言葉がぴったりだった。
服はボロボロ、身体は傷だらけ。
それでも、自分の背丈の倍はあろう魔物を前にして、歯を食い縛り剣を振るう。
その瞳だけは、生き抜く事を諦めず、依然、強く輝いていた。
返り血を浴びても輝くそのブロンドを、剣よりも細い手を、華奢にみえる肩を…。
彼女のその全てから目を離せなかった。
恋はするもの、と思って生きてきた自分が、何と馬鹿だったのか。
恋とは、落ちるもの。
本当に、堕ちてしまった。
全てが手につかない。寝ても覚めても、彼女の事が頭に浮かぶ。
笑って欲しい。俺だけに、笑いかけて欲しい。
美しいブロンドも、澄んだアイスグリーンの瞳も、女神とも思えるその身体も。
全て、この手に、、。
だから、全てを犠牲にしても良いと思った。
国も、仲間も、自分自身さえも。
「愚か者…」
呟いた言葉は、自分しかいないこの場所で。
必然的に自分に戻ってくる。
さっき見た、ルルーの涙が焼き付いて離れない。
「クソッ…。」
握り締めた拳を、壁に当てつける。
彼女を救いたい、それなのに、俺は…
俺は、一体、何をしているんだ…
シャワーから出ると、ルルーはすでに部屋に戻っていたようだった。
見渡すと、清潔だが、整然と、必要な物だけ揃えられた、広いこの部屋は、どこか執務室を思い出させる。
連想ゲームのように浮かぶのは、王座も討伐も、婚約者さえも押し付けた、銀髪の、最愛の弟。
「あなたは、いつも、ズルいひとだ」
涼しげな瞳を細めて、呆れたように笑う。
ルルーを連れ帰った俺を、どう思うだろうか。
ただ、自分の欲望の為に…お前さえも、犠牲にしたこの義兄を。
「…本当に、俺は、ズルいよな。」
あぁ、それでも。
それでも、貴女を、愛してしまったから…
そう呟き、ジェイは、大きな手のひらを見詰めながら、ぶつぶつと何かを呟いた。
全身が白い光に包まれて、消え行くと共に、ジェイの見た目は男性から青年へと逆行した。
待っていて下さい。
もう少しだから。




