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ダークサイド星の王子様



 昭君の作った焼肉祭りは、食欲の権化ともいえる男子高校生(しかも運動部)十名の腹を満足させるだけの味を伴って開催された。

 例え肉の原料が謎のイキモノでも。

 ここがどことも知れない(明らかに地球じゃない)場所でも。

 食欲が満たされればひとまず満足する、それが男子高校生という生物である。←偏見

「さて、人心地ついたところでそろそろ帰る方法について話し合おうか」

 そして和さんが切り出した一言で、バスケ部員達はハッとした。

 そうだよ、ここ異星だよ!

 どうやって帰るんだよ!

 そもそも帰れるのかよ!?

 疑問が噴き出せば、不安も噴き出すもの。

 帰る方法が見当もつかない今は、特に心が蝕まれてしまう。

 バスケ部員達は一様に、表情に暗いモノを落とすが……

「兄さんの魔力(ちから)で帰れるんじゃない?」

 何故か彼らよりも幼く、精神面でも未熟なはずの男子中学生は飄々としていた。

「うぅん、昭くん? 魔力ってね、そんなになんでもかんでも叶えられるほど万能じゃないんだよ?」

「携帯電話の座標を軸に、物質転移が出来るのに?」

「それは昭くんの携帯電話っていう座標を特定できるポイントがあったからだよ」

「それなら地球にそれこそ座標を掴むのに有用なものが幾らでもあるんじゃないの」

「ここがどこかもわからないよね? 物質を転送するには、出発点と到達点の二つの座標を明確にする必要があるんだよ。加えてこの星からどちらの方向に突き進めば地球があるのかもわからない。魔力を伸ばして地球を探そうにも、方向すらわからない状況で探査のしようがないんだよ」

「そう。それじゃあ仕方ないかな」

 先程から頼れる副部長が、バスケ部員達には未知の生物に見えて仕方がない。それこそ異次元に迷い込んで未知との遭遇をしてしまったような……いや、現状まさにそれでしたね。

 兎に角よく見知っていた筈の副部長が、この異常な状況下で更に異常な言動を繰り返すのでバスケ部員たちは次第に自分の正気を疑い始めていた。

 えっと、魔力って何ですか。

 フレイムアローって何なんですか……?

 彼らの信頼していた副部長は、決して掌から火の玉を射出するような吃驚人間ではなかった筈だ。その筈なのだ。いきなり放り出されたどことも知れない(ばしょ)で、いきなりサバイバルに順応するような野生児でもなかった筈なのだ。

 今もこうしてほら、改めて眺めてみれば。

 紅茶を片手に微笑んでいそうな顔で、その手元は兎(っぽいナニか)から剥ぎ取った毛皮をどうにか加工しようと忙しなく手を動かしている。

「うぅん、鞣し剤が手に入ればなぁ……」

 貴方、皮を鞣す技術をお持ちなんですか……?

 そういえば西洋人って紳士のイメージがあるけれど、歴史を遡ってみれば立派な肉食系戦闘民族なんだよな……部員の一人は、ふと何気なくそんなことを考えて現実逃避に走っていた。

 三倉さんとこのお父さんは、どちらかと言えば西洋人ではなく海底人(マーマン)なのだけれど。

 バスケ部員達が得体の知れないモノを見る眼差しで和さんを見ていると、その弟はバスケ部員達の奇異な眼差しなどどこ吹く風で。

 何故か、携帯電話を取り出した。

「おいおい弟君、携帯なんかどうするんだよ。ここ別の星なんだろ? 電波は……」

「――あ、もしもし康則?」

「通じたのかよ!?」

「え、マジで!? ちょ、俺も電話電話!」

「……ってやっぱ通じねえよ!! 電波死んでんじゃねーか!」

「超圏外! 圏外なのになんで弟君の電話から向こうの声が漏れ聞こえんの!?」

「あー……昭くんの携帯、僕が手を加えたヤツだから」

「だからお前はいったい何者なんだよ和ぃ!!」

「みんな……今まで僕、黙っていたけど。実は僕、異世界からTS転生してきた魔法使いなんだ」

「……OK、わかった。その手の世迷言は理解不能だから黙れ、和」

「あのさ、電話中なんだけど。少し静かにしてくれない?」

「「「すみませんでしたぁ!」」」

 全員、一斉に頭を下げて沈黙した。

 何がどうして電話が繋がったのか、よくわからないが。

 だがそれでも地球と連絡がつくと聞けば、何故か一縷の希望に感じてしまうのは何故だろう?

 冷静に考えれば、地球と連絡が繋がっても決して帰れる訳ではないと理解できそうなものなのだが。

 取敢えず後で電話を貸してほしい。家に連絡したい。

 それが、バスケ部員達の共通意識だった。

「それで康則? 君のバイト先の同僚についてなんだけど……うん、そう、四天王の。そこにさ、魔法少女いたよね。そうそう、それ。金髪ドリルのツインテールの。あと超合金ロボもいたよね。…………うん、それがさ、その魔法少女が嫉妬を拗らせて僕の妹に嫌がらせを。……………………ああ、詳細? 僕と、妹の明と和兄さんと、兄さんの部活仲間十名が巻き添えだよ。どこかのよくわからない異星に放り出された」

 時折、電話の向こうから押し殺した呻きや、絶叫のような喚き声が漏れ聞こえてくる。

 どうやら昭君は電話の相手を盛大に動揺させているらしい。

 だけど相手の動揺なんてなんのその、全く気にした素振りも見せず、淡々と昭君は自分のペースで話を続ける。

「原因はともかくとして、困ってるんだよね。明日は予約していたゲームの発売日だし」

「弟君の、困ってるのレベルがおかしい件」

「ちょ、大物すぎるだろ」

「痴情云々に関しては当人達で決着を着けてほしいんだけど、ひとまず僕ら遭難中だからこっちの始末をつけてほしいんだよね。早急に。……そう、そうそう。如何すれば良いかって? 康則の同僚の事でしょ。自分で何とか……まあ、今回の件については手っ取り早い解決法があるけど。取敢えずは君の直属の上司に報告すれば? ……そう、その子。学ランで短パンで、仮面の。多分、それで解決するからさ」

 まだ、電話の向こうでは少年の喚き声が聞こえていたのだが。

 言いたいことだけを言うと満足したのか、昭君は一方的に電話を切った。

 しかも電源から落としている。

 充電する手段がない現状、節約する必要はあるだろうが……この状況で地球に唯一繋がる電話を電源から落とす。その勇気にバスケ部員達は慄いていた。

 なんとなく、電話を貸してくれとは言い辛い雰囲気だ。

「取敢えず手は打ったから、気長に待っていればその内迎えが来るんじゃないかな」

「いや、あの、弟君? 迎えって……」

「何が来るんだよ。なあ、いったい何が来るんだよ。怖ぇよ」

「多分だけど、宇宙船が一隻?」

「っなあ! 和、お前の弟どうなってんの!? この状況で腹が据わってるのも怖いけど、伝手と交友関係が謎過ぎて超怖いんだけどっ」

「あはははは? 昭君、お兄ちゃんもちょっと気になるかな……」

「あの、お兄ちゃん……さっきの電話の相手って、もしかして」

悪の組織(ダークダイヤ)四天王(かんぶ)やってる知り合い」

「なんでそんな人の電話番号知ってるの、おにぃちゃーんっ!?」

「マジでお前の弟どうなってんだよ、和ぃぃぃいいいいいいいっ!!」




   ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・




「で、電話切られた……」

 一方的な昭君の電話に、康則は……否、【紅蓮の闇貴神】はがっくりと肩を落とす。

 これからバイトという時に、とんだ爆弾を投下されたものだ。

 というか電話の向こうに複数人の声が聞こえた気がしたんだが、まさか今の電話人前でやってたのか?

 ……康則の正体を口にしないという誓約はどうなったんだ。

 気になることは多々あれど、今は他に気にするべきことがあるのも確かだ。

 康則はさっさと四天王としての服に着替えると、学校のロッカーから悪の組織【ダークダイヤ】の拠点へとワープした。

 そこには今日も仕事仲間である他の四天王と……直属の上司【プリンス】がいる筈である。

 悪の組織【ダークダイヤ】アジア支部の責任者である、【プリンス】。

 直接アジア支部の四天王を従える絶対君主であり……噂では見たことも無い総帥の息子だと囁かれている。

 のっぺりとした仮面で素顔を隠す、謎めいた少年。

 見た目は小学生くらいなのだが、外見で侮ることは許されない。

 このバイトの面接で初めて知り合った相手ではあるが、大人顔負けの智謀知略と、謎のパワー……そして誰をも圧倒する得体の知れないカリスマの持ち主であることを康則は重々承知している。

 逆らおうなどと、到底思えない相手だ。

 彼の率いるアジア支部には、【プリンス】に心酔する者も多い。

 それは四天王にも言えることで、特に紅一点である悪堕ち魔法少女【エメラルド☆キッス】は前から並々ならぬ崇拝を見せていた。

 今回、その【エメラルド☆キッス】が。

 同級生の妹(小学生)に何故か嫉妬して、どこかの星に放り出したとか何とか。

 しかも十名を超える巻き添えを出して。

 流石に放置はできない問題で、康則は頭が痛い。

 早速、【プリンス】に謁見の至急申請をして話を聞いてもらうことにしたが。

「……【エメラルド☆キッス】が、そんな暴挙を?」

 案の定、【プリンス】は報告を聞いて不機嫌になった。

 仮面越しでもわかる。彼は今、配下である四天王の暴走に強い頭痛を感じている。

 きっと顔も引き攣っている筈だ。

 短い付き合いだが、康則にはその確信があった。

「はい、巻き添えに遭った本人からの情報で」

「待って。なんで巻き添えに遭った一般市民から連絡が来るの? 別の星に飛ばされたんだよね?」

「いや、あいつ、なんていうか……常識が一部通じないっていうか」

「常識が通じない相手を本当に一般市民と呼んで良いのかな……そもそも、何故、君に通報するのかな? まさか正体を知られては……いない、よねえ? 正体を知られたら、相手には死ぬか組織に入るかだって知っているよね?」

「いや、本当に常識が一部通じない相手なんで……俺も、その、なんで俺に電話してきたのかは、よく………………わかりません!」

「何者なのかな、そのひと……? そんな言い分で、僕が追及の手を緩めると?」

「いや、本当に常識が一部通じないんですよ。俺の同級生で、三倉 昭っていうんですけど」

「……みくら、あきら?」

 康則が昭君の情報(なまえ)を売った瞬間。

 何故か、【プリンス】が動きをフリーズさせた。

 油の切れたブリキの人形並みにぎこちない動きで、ぎぎぎぎぎと視線を左右させる。

 そして再び康則に視線を向けると、どことなく虚ろな声で問い返してきた。

「三倉昭って、その、料理上手でゲームが好きな?」

「え、ご存じなんすか。【プリンス】?」

「……三倉昭の、妹が遭難した? 別の星に?」

「昭の自己申告じゃ、そうっすね」

「妹の名前は、三倉……あかる? あかるちゃん?」

「ああ、そう言ってましたよ」

 こっくりと頷いて、康則が肯定した瞬間。

 【プリンス】は再びフリーズし、たっぷりと十秒は静止していた。

 その間に、恐らくは脳内で忙しなく情報を整理していたのだろう。

 やがて十秒が過ぎる頃、性急に慌てて動き出す。


「誰か、【エメラルド☆キッス】を呼べぇぇぇええええええええええっ!!」


 あんなに声を荒げて慌てる【プリンス】を、初めて見た。

 康則は後にそう証言した。




   ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・




 草木も眠る、丑三つ時。

 別の星で丑三つ時も何もないだろうが、それでも深夜はやはり草木も深く寝静まるらしい。

 昼間の混沌に、考えることに疲れた男子バスケ部員達もまた、深く深く眠っていた。

 小学生の明ちゃんはとっくの昔に眠りについて、和さんの膝枕ですやすやだ。

 彼らが世露に濡れて風邪を引かぬよう、和さんは小規模な結界を張り、内部の温度を細かく調整して彼らの眠りを見守っていた。

「昭くんも眠って良いんだよ?」

 生まれ変わったとはいえ、前世は旅慣れたダークエルフ。

 人の手の入らぬ森の中という環境も良い方に作用して、和さんは密かに絶好調だ。

 不寝番という発想もなく深く寝入ってしまった部員達を横目に、和さんは寝ずの番をしている。

 焚火の炎が、小さく跳ねた。

「――いいよ、多分そろそろ迎えが来るから」

「えっ?」

 和さんが首を傾げて、怪訝な顔をする。

 細かく説明する気のなさそうな昭君に、困ったような様子で。


 しかし約十分後。


 ごうぅん、ごうぅん、ごうぅん……と。

 大きく唸るような音を響かせて、闇色の空から眩い光で覆われた円盤が接近してくるに従って。

 和さんは、強張った笑顔で実弟の肩を掴んだ。

「ほら、迎えが来た」

「大物すぎるよ、昭くん……! 地球に帰ったら、ちゃんと説明してもらうからね」

「気が向いたらね。僕が説明するまでもないと思うんだけど」

「はい?」

 空から高速で接近してくる、謎の円盤。

 それは誰がどう見ても……きっとUFOと回答する、誰かの乗り物だった。

 星空を切り裂いて降下してくる巨大な円盤。

 夜なのでよく見えないが、物々しさは戦艦に通じる雰囲気がある。

 やがて上空10m程の距離にまで近づくと、宇宙船の底から光の梯子が伸びてきた。

 小柄な影が、光に沿って地上へと降りて来る。


 息せき切って、慌てた様子で。

 謎の巨大円盤から出てきた何者かは叫んだ。


「明ちゃんは無事ですか……っ!」


 黒いマントに白い学ランを纏った、小学生くらいの少年。

 その動揺も顕わな声を、和さんはよく知っていた。

 何年も前から、よく聞いている声だったからだ。

「え? 羽恒(はつね)くん……?」

 和さんの怪訝な声も聞こえていない様子で、少年はパタパタと駆けて来る。

 いつもは落ち着いた顔ばかりなのに、今は見慣れた顔に焦りを浮かべて。

 そうしてすやすやと眠る明ちゃんの側近くまで来て、初めてほっとした様子を見せた。

 地面に膝をついて、安堵の息を吐いている。

「良かった、怪我は無さそうですね」

「うん、僕がついていて妹に怪我をさせるつもりはないよ。それよりも君、隣の水島さん家の羽恒くんだよね……?」

「ハッ……和おにいさん、昭おにいさん…………」

「こんばんは。早かったね、羽恒」

「こ、こんばんは……?」

「いや、昭くん!? なに平然と挨拶してるのかな!?」

「兄さん、僕言わなかったっけ」

「な、なにを……?」

「ご近所に入り婿した宇宙人がいるよって」

「まさかのお隣さん家!? 水島さん家の星冴(せいご)さんって宇宙人なの!?」

「なんでそのことを知っているんですか、昭おにいさん! 母さんだって知らないのに!」

「えっ 桂里奈さん知らないの!? なのになんで昭くんは知ってるの!」

「深く気にすると禿げるよ、兄さん」

「そしていきなりの暴言! 禿げないよ! 僕の毛根まだ元気いっぱいだよ!」

「今回の遭難は羽恒の部下の管理がなってないせいだよね。君の失態だし、この責任は持ってもらえるよね?」

「一体何をどこまで知っているっていうんですか、昭おにいさん……!」

「取敢えず羽恒、コンセント貸して」

 そう言って、動揺するお隣さん家の小学生に。

 昭君は手に持っていた携帯ゲーム機を掲げて見せる。

 その充電は、既に30%を下回っていた。


 お隣の家に住む男の子を戦慄させながらも、上手いこと丸め込み。

 三倉さん家のご兄弟とバスケ部員は無事に地球への生還を果たした。

 深く寝入っていたバスケ部員達と明ちゃんの知らない間に、宇宙船は地球へと帰路を取る。

 謎の宇宙的超技術によって、昭君達が放り出された星と地球とを往復するのに長い時間はかからなかった。




   ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・




 晴れ晴れとした土曜日の朝、白水君は使い慣れた布団の上で目を覚ました。

 ぼんやりと靄がかったような寝起きの頭で、周囲を見て何故か深く安心する。

 そこは見慣れた自分の部屋だった。


 ――良かった、あれは夢か。

 そっか、そうだよな。夢だよな……?


 そう思いながらも、何故か釈然としない思いが胸に宿る。

 首をひねりながら、朝食を食べる為に食卓へと向かう。

 とんとんとんと階段を下りれば、そこにはやはり見慣れた姉の姿。

「姉ちゃん、おはよ……」

「あら、円。今日は早いのね。いつもだったら部活の無い日は昼近くまで寝てるのに」

「うーん……なんか目が覚めた」

 ぼんやりとしながらも、やっぱり姉の態度がいつもと変わらないことに安堵する自分がいる。

 どうしてこんなにも、普段との違いを探してしまうのか。

 それはやっぱり、昨夜のあのへんな夢のせいだよな……そこまで思って、ふと疑問が湧いた。

 

 あれ? 俺、昨日いつ帰ってきたんだっけ。


「姉ちゃん……俺、昨日いつ帰ったんだっけ」

 弟の問いかけに、一瞬。

 僅かな間を置いて、姉の表情が何故かのっぺりと変わった。

 いつもとどこにも違いの無い笑顔なのに。

 何故かその顔が、一瞬、能面の様にぎこちなく見えた。

「円っタラ、何ヲ言ッテいルのカシら……夜ノⅧ時頃二帰っテキタわヨ」

「姉ちゃん……?」

 釈然としない思いが、何故か膨らむ。

 よくわからない不安を抱えて、白水君はその日、なんとなくテスト勉強に没頭した。

 なんだかいつもより物凄くはかどった。

 人はそれを、現実逃避と呼ぶ。


 

 テスト期間に入り、人のいない筈の部室内。

 あの日、金曜日の話し合いに参加していたバスケ部員達は自然とそこに集まっていた。

 副部長の、和さん以外。

「俺、なんだかあの日、変な夢を見てさ……それがさ、なんだか物凄く、現実感のある夢で」

「奇遇だな……俺も変な夢を見たんだよ」

「現実ではありえないんだけどさ……和の弟妹がぶっ飛んでて、和の掌から火の玉が発射されて、そんで場所が地球じゃないんだ」

「やめろ、言うな……! 思い出させるな!」

「翌日の朝さ、家族の様子が変でさ……いくら聞いても、俺は夜八時に帰ってきたって言うんだよ。けどそれを言う時、なんでか一瞬動きが止まるんだ」


「……みんな寝てたから知らないだろうけど、俺、見たんだ」


「「「え?」」」

「あの夜、あの夜……っ三倉の弟が、携帯一本でUFO呼び出す決定的瞬間を!」

「「「「「………………」」」」」


 どこからどこまで本当で、どこからどこまで夢だったのか。

 そして三倉 和とその弟は一体何者なのか。

 深く考えすぎるのは精神衛生上たいへんよろしくない気がして、バスケ部員達は自然と口を噤んだ。誰に約束するでもなく、あの夜の事を黙して語ることはなかった。


 だけど何故か、三倉和には電話一本でUFOを呼び出す弟がいるという噂だけは、いつの間にかバスケ部内で流れるようになっていた。 

 

 



三倉 明

 ご町内の平和を守る魔法少女☆


亜由美ちゃん

 明ちゃんの親友で、ツインテールの女の子。

 普段は明るくも控えめな様子だが、心の中には様々な鬱憤をため込んでいる。

 悪堕ち魔法少女として悪の組織に与し、【プリンス】と呼ばれる上司に心酔している。

 心酔し過ぎて色々拗らせており、日に日に歪みが大きくなってきて部下たちは戦々恐々としている。

 【プリンス】=水島 羽恒という事実に気付いてはいないが、【プリンス】が何故か度々明ちゃんに関心を持っている素振りを見せるので気が気ではない。


康則

 昭君のクラスメイトにして悪の組織【ダークダイヤ】幹部の一人(バイト)。

 以前うっかり昭くんに正体を知られ、正体を口外しないことを誓約書で誓ってもらう。

昭君「え? 誓約書はどうしたんだって? 誰も『康則が悪の四天王だ』なんて明言していないよね。人の会話に聞き耳立ててた人の責任までは取らないよ」

 

水島 羽恒(はつね)

 三倉家の隣に住む男の子。

 母方の祖父母と両親、妹と暮らしている。

 だがその正体は世界の征服を狙う悪の組織【ダークダイヤ】アジア支部の司令官である。

 真っ白な仮面と黒いマント、白い学ランに短パン、ハイソックスという姿で夜の街を駆け回り、魔法少女な明ちゃんと何度も対立している。

 プライベートではただの小学生として振る舞い、両親思いの優しいお兄ちゃんで通っている。

 幼馴染である明ちゃんとも良好な関係を築いており、学校にも一緒に登校している。

 

水島 星冴(せいご)

 水島家の入り婿にして、羽恒くんのお父さん。

 しかしてその実態は地球を征服する為に宇宙からやって来た大銀河帝国の第一皇子であり、悪の組織【ダークダイヤ】の総帥である。

 だが真面目に地球を征服する気があったのも十五年以上前のこと。

 地球に潜伏する為に入学した大学で後の妻となる水島 桂里奈と出会い、一目惚れ。

 初恋に夢中になり、すっかり大銀河帝国に帰る気を失くしてしまった。

 今では地球に留まる口実として体面上悪の組織をゆるーく運営しているだけで、本気で地球を征服する気はない。だって支配が完了したら次の星を侵略しに行かなきゃいけないんだもの。

 まだ妻に己の正体を明かせずにいるが、いつか理解を得られたらと思っている。

 家族を余裕で養えるだけの資産があるが、嫁に不信感を持たれたら軽く死ねるので一応働いている。

 深すぎる世界観とリアルすぎる描写で最近評判の、新進気鋭のSF作家として。


大銀河帝国

 宇宙に君臨する大帝国。偉大な皇帝が絶対的な力で支配している。

 皇子・皇女が何人もおり、跡目争いが絶えない。

 皇帝が100年の間にそれぞれが単独で征服した星の数で跡継ぎを決めると宣言したことで、皇帝の座を狙う皇子・皇女たちは互いに競い合って惑星の侵略に乗り出した。

 だけど最近、最も期待を寄せていた第一皇子が全く帰ってこないので皇帝はやきもきしている。

 それどころか第一皇子に遠征先で子供が出来たらしいと報告を聞いているのに、ちっとも会わせにこないので更にやきもきしている。

 



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