第7話「ネクロマンサー」
「……はっ!」
オオヤマは目を覚ました。
ここは、この世界で幾度となく訪れた街の噴水前だった。
オオヤマが周りを見渡すと、セイコーとファントムがオオヤマの方を振り向く。
「あ、起きたみたいね」
「そんじゃあ、サッサと次のクエストを受けるぞ」
セイコーがオオヤマの腕を引っ張って、ギルドへと向かう。
オオヤマは、何が起きているのかわからない様子で、引っ張られるままにギルドに辿り着いた。
「……次のメインクエストは?」
セイコーが言う。
オオヤマは、第一メインクエストが貼られていた看板を覗き込むと、そこに新しい張り紙が張り出されていた。おそらく、これが第二のメインクエストだろう。
内容を読む。
第二のメインクエストは、夜の森に現れるゾンビの討伐。そして、そのゾンビの生みの親であるネクロマンサーの討伐。
ゾンビは、一体一体は弱いが、数が多く集まると厄介な敵らしい。囲まれないように離れて攻撃するようにと、注意書きがされていた。
「……しかし、少し早急過ぎじゃあないか? サブクエストは受けないのか?」
「そんなもの、お前が眠っている間に二つほどクリアしたよ」
「俺どんだけ寝てたんだよ!? ……いや、それともセイコーのゲームスキルが高いだけなのか?」
「まあクリアして手に入れた報酬とかで、装備も充実してきたし、俺も所持金を使い果たしてお前みたいに魔法を買った。身体強化の魔法だ。こいつを使えば、近接戦闘で優位に戦うことが出来る」
セイコーは笑顔を浮かべる。
「まあ、本当はファントムみたいにかっこいい魔法が欲しかったんだけど非売品みたいなんだよな。代わりに手動で起爆する爆弾を買った」
「はぁ……。俺がいない間に、スゲーこのゲームを楽しんでいたのな。俺は捕まったり死んだり雷で痺れたりで、全然ゲームを楽しめないんだけど」
とはいえ、文句は言っても状況は改善されない。
オオヤマは、服をパンパンと叩いて、気をしゃんとする。
「んじゃあ、メインクエストを受けるか?」
「行こう」
そうしてオオヤマ、セイコー、ファントムはゾンビが現れる森へと向かった。
森の中へ入ると、早速ゾンビ共の唸り声が聞こえてきた。次々と髪がボサボサで肌の荒れた怪物が次々と襲い掛かってくる。
「ブラスト!」
先手はファントムの爆発魔法。
強烈な爆風が、ゾンビを一網打尽にする。
……しかし、ゾンビの数は予想以上に多かった。多少数を減らしても、すぐにそれ以上の数のゾンビが、三人がいる場所まで集まってくる。これではキリがない。
「おいオオヤマ! お前の魔法剣でこのゾンビをまとめて倒せないか!?」
「や、やってみよう!」
オオヤマは、剣を抜いた。
魔法にMPを与え、強力な奥義を発動する。
たちまち、魔法の剣から雷が放電された。百匹近くはいたゾンビは、その攻撃を受けて黒焦げになり、倒れた。
「おお、やるじゃん!」
「これは使えるな。……だけど、今の攻撃でMPが無くなったみたいだ」
「安心しろ。ボスは俺らが片付けてやるよ」
そうして森の中を進んでいくと、禍々しい雰囲気を纏った石造りの建物があった。
「こんちゃーす!」
セイコー無遠慮に扉を蹴飛ばして中へ入る。
するとそこには、とんがり帽子をかぶった老婆がなにかの実験をしているようだった。
「……お前達、私の研究の邪魔をしようってのかい!? 忌々しい奴らめ!! 全員殺して、私の研究の実験材料にしてやるよ!!」
そう言うと、その老婆は呪文を唱え出した。幾何学模様の陣が浮かび上がり、そこから何体ものゾンビが出現した。
おそらくこの老婆がメインクエストボス、ネクロマンサーなのだろう。
「気功術!」
セイコーがそう唱えると、たちまち彼の体が光り出した。
何事かと驚くオオヤマをよそに、セイコーは出現したゾンビを練習用の丸太のように簡単に斬り伏せてしまう。先程までの動きとは、明らかにパワーも俊敏性も上がっていた。
身体強化。
セイコーが購入したという魔法の効果だと、オオヤマは直感した。
オオヤマが何をするまでもなく、あっという間にゾンビは全て倒された。ネクロマンサーは簡単にやられた下っ端を見て歯ぎしりをしている。
「ちっ! 役に立たないゾンビだ!!」
「もう降参しろ婆さん。今なら、斬り捨てた後に金目のもの奪ってやるくらいで許してやる」
「ほざくな青二才!! 私にはまだ切り札があるんだよぉ!!」
ネクロマンサーは、首に掛けていたネックレスを掴んだ。
その瞬間、ネックレスに付いていた黒い宝石が怪しく光り輝く。幾何学模様の陣が浮かび、そこから先程とは比べ物にならない巨大な怪物が這い出てきた。
「さあ来るんだよ私の最高傑作!! ドラゴン・ゾンビよ!!」
身の危険を感じたオオヤマ達三人は、その建物から外へ出る。
三人が振り返ると、石造りの建物が崩壊し、中から全長10メートルはある怪物『ドラゴン・ゾンビ』が姿を現していた。