第11話「砂漠」
オオヤマが、謎のアジトと呼ばれる場所に向かっている。
その一方で、第三のメインクエストを達成したセイコーとファントムが街へと戻ってきていた。
二人は、死んだオオヤマを探してみるが、街のどこにも見当たらないので、不思議に思う。
「彼奴……どこに行ったんだ? まさか一人でクエストを受けたというわけではないだろうし」
「心配だね……。他に心当たりはないかな?」
「全然思いつかないな。この世界に来たばかりで、行きつけの店とか、知り合いとかも居ないし。まあ、クエストを受けていくという面では、彼奴は居ても居なくても良いようなもんだから、特に困らねーけどさ」
セイコーはそう言って、手に入れた所持金でアイテムを買いに向かった。
ファントムは、オオヤマのことが気になるようで、オオヤマを見かけた人が居ないかと、噴水の前にいる人達に尋ねた。
すると、一人の男が、老人と一緒にいるオオヤマらしき人物を見たという情報が手に入った。
二人は、街を離れ、砂漠地帯のある場所に向かっていったらしい。
ファントムはその情報と、オオヤマと一緒に居たという老人の外見を聞いて、急いでセイコーの元へ向かった。
「セイコー! オオヤマを見たという人の情報が手に入ったよ。砂漠地帯に向かっていったそうだ!」
「何だってそんな場所に……」
「わからないけど、老人と一緒にその場所へと向かったらしいよ。その老人っていうのが、もしかしたら私の知っている人物なのかもしれないんだ。……オオヤマは『レジェンダリー』に勧誘されたのかもしれない」
「何だ、そのレジェンダリーっていうのは?」
「少し前まで、この付近で悪さをしていた組織の名前さ。金を手に入れるためならどんなことも平気でするって話。盗人である私はもちろん、街中でも広く知れ渡るくらいおっかない組織だったんだけど一年前に組織のリーダーが捕まって壊滅したんだ」
しかし、そのリーダーをオオヤマが解放してしまったのではないかという話を聞いて、セイコーは額に手を当てた。
「もし、レジェンダリーのリーダーが独房から脱出していて、また組織が復活したとなれば、多くの人がまた彼らを恐れることになるだろうね」
「だけど、それは俺達には関係のないことだ」
「そうだけど……セイコーは心配じゃないの?」
「まあ彼奴ならきっと大丈夫だろう。俺は彼奴を信じている。例え相手が凶悪な犯罪者集団だろうとも、オオヤマっていう男はそんなにヤワじゃないんだ」
普通なら、仲間が危険な場所に向かったとなれば多少なりとも動揺するものだろう。しかしセイコーには、それらしい慌てぶりが少し感じられなかった。
ファントムは、セイコーがそう言い切ってしまうのには何か理由があるのかもしれないと思い、それ以上の言及を留めた。信頼を寄せているもの同士が、一緒に居た時間の少ない自分より的を得た判断が出来るのならその方が良い。
「では、私達はこれからどうしようか?」
「もちろん、メインクエストを進めるさ。どんどんクリアしまくって、早く元の世界に帰りたいからな」
セイコーの決断に迷いはない。
ファントムは、少し後ろ髪が引かれながらも、セイコーの判断に従うことにした。
「次のメインクエストは……砂漠に潜むワームの討伐か」
「砂漠……この辺りで砂漠といえば、オオヤマが向かっていった場所と同じだろうね」
「何だよ、結局オオヤマのところに行くのかよ。……まあ、別に関係無いか」
セイコーは、メインクエストを受けた。
装備を整え、砂漠へと向かう。第三のメインクエストをクリアしたことでお金も増えてより良い装備が手に入っていた。これなら、二人でもメインクエストをクリアし続けられるだろうと、セイコーは思っていた。
そんな訳で、セイコーとファントムは、ワームを倒しに砂漠へと辿り着いた。
砂漠は、見渡す限り砂の溜まり場。それ以外の物体は見当たらず、ある意味幻想的な世界が広がっていた。
「この先を進んでいけば、ワームと出会えるのか?」
とは言ったものの、そもそも砂漠には道らしきものがない。下手にルートをずれてしまえば、あっという間に迷ってしまうだろうと予想できる。
「何か良い方法は……。そう言えばファントム、お前空が飛べるようになったんだったな」
「あ、うん。新しい魔法を習得したんだ。MPを消費している間は自由に空を飛ぶことができる。最も、あまり長く飛ぶことはできないけどね」
「それで飛んで、ワームが居そうな場所を探してきてくれないか?」
「了解」
ファントムは魔法を唱え、真上へと飛翔した。
そして、砂漠が見渡せるくらい高くまで飛んだファントムは、あるものを発見した。
「あっ、オオヤマだ!」
「なにっ!?」
ファントムが指差した先には、真っ平らな砂の上で老人と共にいるオオヤマの姿があった。