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第1話「冒険の始まり」

 男達は、狭い小屋の中にいた。

 窓一つない、薄暗く窮屈な空間。ここには木造の壁と床があるだけで、物が何一つなかった。

 セイコーとオオヤマは、そんな謎の場所で一人の青年の前に立っていた。

 台の上に立って二人より目線を高くし、自身を目立たせているその青年は、カンバだ。


「おい、どこだよここは?」


 セイコーが叫ぶ。

 その言葉に反応したカンバは、不遜な表情で口を開く。


「えー知っての通り。僕達はこれから我が会社で開発されたVRゲームのテストプレイを実行する。ここはそんな冒険者達が最初に来る小屋だね」

「いや、意味わかんねーんだけど? え、なに、またお前オレらをゲームに巻き込んだの!?」


 今度はオオヤマが叫んだ。

 カンバは、とある大手ゲーム会社の御曹司。その会社は昨今、VR技術に力を入れており、様々なVRを使った名作ゲームを売り出している。

 そのため、そんなカンバと知り合いであるセイコーとオオヤマは、カンバの会社が制作した新作ゲームを半ば強制的にやらされているのである。


「そういう訳だから、三人でゲームやるよー! このワールドでは、『グラウンドツリー』っていう街に行って依頼を受けていくっていう内容だから。基本的な操作は後々教えていくよ」

「ズルズルと話が進んでいく……。またこいつのお遊びに付き合わされるのかよ」

「俺、ギャラ貰ったらサッサと帰るからな」

「それじゃあ、グラウンドツリーの世界にレッツラゴー!!」


 カンバが高らかに叫び、小屋の扉を開けた。

 小屋の外は、大きな噴水と様々なお店が開かれている活気ある街が広がっていた。その街並みは美しく、多くの住民が闊歩して賑わっていた。

 そんな綺麗な光景を前にし、セイコーとオオヤマは歓心した声を上げる。


「へぇー、スゲー綺麗なところじゃんこの街」

「まるで本物の世界みたいだ。科学の力ってスゲーなあ」


 すると、三人の前に鎧を着た衛兵らしき人物が駆け寄ってきた。


「おや? 貴方達旅人さんかね? ようこそ、ここは大地と巨大樹の街グラウンドツリー。ここへは何をしに来たんですか? 仕事を探しているのだったら街の中央にあるギルドへ。公爵へ用があるのでしたら、街の奥にある城へと訪ねに行くと良い」

「一人でよく喋るなあコイツ」


 衛兵は三人にそう言うと、せかせかとその場を離れていった。如何にもゲームNPCらしい行動だ。

 衛兵が離れていくと、その後の説明はカンバが続ける。


「このゲームは、メインクエストとサブクエストを受けて、最終的にメインクエストのラスボスを倒すのがクリア条件だね。メインクエストは基本的に難しいから、まずはサブクエストを受けるのが無難だ」

「へー。とりあえずオレらはこれから何をするの?」

「このゲームではレベルという概念がない。代わりにアイテムが重要になってくるんだ。だからクエストを受ける前の準備、先に買い物して装備を整えよう」

「りょーかい。……あれ? セイコーの奴どこへ行った?」


 オオヤマは、いつの間にか居なくなったセイコーをキョロキョロと探した。


「って、お前何してるんだよ!?」

「あ? 見てわかんねーのかよ」

「NPCの財布を強奪しようとしてるようにしか見えねーな!」


 オオヤマは、噴水から少し離れた場所で休憩していた若者のポケットに手を突っ込んでいたセイコーを発見した。


「お前、知ってるだろう!? 俺がバンディットプレイしかしないって事を!! ゲームだからこそ出来るスリル! 快感! それを得るために俺はゲームをするんだああああ!!」


 周りの視線があろうと気にせず金を奪おうとするセイコー。若者は自分の財布を盗られまいと懸命に争っていた。


「あ、やべ! 衛兵が集まって来たぞ!」

「なに!?」


 見ると、そこには数人ばかりで衛兵が駆け寄って来て、たちまち強奪をしていたセイコーを捕らえた。


「うわっ! 離せクソ野郎共!! 何をしやがるんだあ!!」

「いいから来い!! この犯罪者め!!」

「チックショー!!助けてくれええええええええ!!」


 セイコーは大声でそう叫びながら衛兵に連れられて行った。

 オオヤマとカンバは、開始五分で離脱していく仲間を呆気にとられた様子で眺めていた。


「……まあ、起きちまったことはしょうがないか。彼奴のことは放っておいて装備を揃えに行こうか」

「え!? 彼奴、どうなっちゃうの!?」

「大丈夫大丈夫。きっと、そのうち脱出できるようにはなるからさあ」

「はあ」


 オオヤマは首をひねるが、このゲームのシステムをまるで知らない状況ではどちらにせよどうしようもない。カンバが放っておくというのなら、オオヤマも何も取れる手段はない。

 という訳でセイコーを失った二人は、街の装備屋へ向かうのだった。

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