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その3

「夏よ!」


ババンッと派手な効果音が聞こえてきそうな様子で社長は言った。

ポーズを決めて背景にスモークとか火薬でドカンと土煙を起こせば、特撮物のヒーローが悪事を働く秘密結社に今からやっつけるので覚悟しろと宣言する姿になれそうだ。


そんな風にまったく関係ないことへと考えを巡らせたのは、俊春がフラグと言ったものが現実になったからだ。ではコレがフラグを回収したという状況なのだろうか。夏彦、帰ったら教えて欲しい。


「こう、夏!っていう企画をよろしく!」


「以上よ!」と次のライブのざっくりした方針を社長から聞き、場所と予算と規模のこれまたざっくりした予定表を渡されて社長室から出て行く。

さて、どうしたものだろうか。夏、夏ねえ……。


「ホント、Noと言わずに何でもこなしちゃうオールマイティーさんよねー。器用貧乏って言葉を思い出しちゃうけど、別に芽が出ないわけじゃないからちょっと意味が違うわね。んふふ、どんな言葉があの子にぴったりなのかちょっと気になるわ。それにしても……次の人気投票用紙、どうしようかしらね」


CDに付属しているアンケート用紙、その中にある人気投票枠を見つめて薄く微笑んでいる社長がいることなど遠ざかるボクが知る由もなく、それを目撃している者もまたなかった。






「「お香?」」


持ち帰った予定表を自宅のコピー機で人数分用意し、テーブルに着いた四人へ配り目を通して貰う。その間にリビングの目立つところへホワイトボードを設置し、夏のライブの企画案を箇条書きしていると、グッズのところで目が留まったのか声が重なっていた。


キュコキュコとペンを走らせながら思い出すのは事務所からの帰り道。

夏らしいものをと言われたボクの脳裏に浮かんだものは、蚊取り線香とブタさん。

夏の野外ライブだから強い日差し対策もだが、地味にイラッとする蚊の対策も必要だよな。そんな考えが浮かばせたのがそれなのだろうが、アイドルのグッズに蚊やりのブタさんと蚊取り線香はないだろうと軌道修正を図る。


線香といえば仏壇のあれだが、最近はインセンスとしてのお香も人気があるようだからそれぞれの好みを反映した香りのお香とかどうだろうか。

メインのグッズがお香なら衣装と演出は和風で、各ブースには販促とサンプルでお香を()いて、と。これなら熱気で汗をかいてもいい香りがするから女の子たちも匂いを気にしなくて済むんじゃないかな。


ライブ会場には熱中症対策でミストシャワー……あ、これにミントの香りを付ければ蚊の対策も出来る。清涼感もあるし風が吹くと涼しくなれる。

そんな感じで発想を飛ばし、混ぜて丸めて形にして一度提案と現在に至る。


「へぇ~、毎度よくもまあこんな面白いものが出て来るよな、橙里は」


ぺらりと渡した予定表を捲り、にやりと笑う俊春。豊かな感情に正直な顔面事情を持つ俊春の笑顔を見る限り、彼はこの提案内容に否やはないようである。

同じく予定表を見て、ホワイトボードを眺めた秋夜もこくりと頷いている。


「発想元が蚊取り線香なのが読めないところですが、面白い案ですね。暑さ対策と虫対策も兼ねているのが流石というか、橙里らしい」


そこで何故微笑ましいと言いたげな顔して笑われるのかがわからないが、一応褒めて貰えているのだろうなと前向きに受け取ろう。

あくまでこれは帰宅までの間でボクが考えた仮の提案なのだから、他の案があればそれを皆で吟味し、討論する予定だ。いい案はどんどんぶち込み採用する方針。


「本当に夏だったな」


美冬、その言葉を口にしてはいけない。春夏秋の三人が揃って顔を顰めたからな。

リビングに集合をかけて予定表を渡し、最初に揃って同じ顔をしたのを忘れてはいないだろう。上がった声は全員同じ「げ」で、紙面に刻まれている季節の一文字を否定してくれとボクに表情で求められても期待に添えないと肯定を返せば、これまた揃って仲良く項垂れただろう。折角できたかさぶたを剥ぐんじゃありません。


「フラグ回収とかしてこなくていいのにさぁ……。俺、死んじゃうー」


強く生きろ夏彦、お前の名前にある季節だろう。基礎体力作りのトレーニングを頑張ろうじゃないか。そしてやはりフラグ回収だったんだな。答えをありがとう。

ぐったりとテーブルに伸びた夏彦を見て美冬が苦笑し、春秋コンビは息を吐く。


「死なねぇように今から血反吐はいとけ。本番のステージでだっせぇ姿さらして有名にはなりたくねぇだろ」


ネット上でも構ってくんを遺憾なく発揮している夏彦だが、表に出していいものと悪いものの基準はしっかりしているらしく、格好悪いことは当然NG項目だ。

テーブルの上で腕を組み、その上に顎を乗せた夏彦が恨めしい顔で俊春を見ていれば、秋夜が溜息まじりにそこへ入る。


「それは現状では悲しいかな全員に言えることです。半年の猶予があることを幸運だと思い、しっかり励みましょう。無様を曝すのは舞台裏だけで結構ですからね」


「ぶー、わぁーかってるってば。一緒にやってくれる仲間がいるなら頑張るよー」


俊春を恨めしい目で見るのはやめたようだが、その返事はやめておいた方が賢明だったと思うぞ夏彦。まだ猶予が半年あるからやさしめな言葉なだけだぞ秋夜は。

やるなら徹底主義、自主トレをしていてボク達よりも体力的に余裕があるはずの秋夜が、舞台裏では無様を曝しても仕方がないって予測を立ててるんだ。

それから察するに、しっかり励んで間に合うのは春秋コンビだけだってこと。


つまり残るボク達三人は、俊春の言った通り血反吐を吐かなきゃならない努力が必須だって言われているんだが、気付いては……いないだろうな。

今の発言を言質に、頑張りが足りない時にはどう足掻いても逃げ場はないのに逃げ出したくなる驚きの言葉責め、なんて事態が待っていないといいのだが。

これも口にするとフラグというものになるのだろうか?試す気はないが。


「ところでさー橙里」


ボクの心配を余所に伸びていたテーブルから身を起こした夏彦が、今度は肘で頬杖を付きながらホワイトボードを指差して聞いてくる。

示しているのは……お香のところかな。あくまでボクの仮提案なので疑問も不満もどんと来い。討論しないことなど論外だ。そう思いながら耳を傾ける。


「なんで俺のお香はその香りなの?」


さて何が出て来ると構えていれば、実に不思議そうに、首を傾げてまで問われた。

それはボクも含めた五人全員にこの香りは如何だろうかとお香の種類を提案している部分だ。


グループ名とそれぞれの名前にある四季をイメージして、と専門の方に完全お任せする方法も提案しているが、個人的には皆の意見と好みを反映させたい。

だってこれを提示しようとしている相手は、ボク達のことを好きだと言ってくれるファンの子たち。ボクなら好きな相手の好きなものを共有できるって嬉しいことだと思うんだけどな。


そう考えてボクが見聞きした中での皆の好きなものを候補に出したんだけど……。

どうしてそんなに不思議そうな顔をされるのかがわからないよ夏彦。

だっていつぞや言ってたじゃないか。


「俺、蜂蜜が好きなの。あれっていろんな花の蜜をミツバチが集めて来るから蜂蜜によって全然匂いが違うんだけど、蓮華の蜂蜜が好きなんだよねー。薔薇みたいな誰もが知ってて目立つ花でも、お花屋に置いてあるような花でもないんだけど、なんか健気で可愛い花でさー」


って、電話で話して常備の蜂蜜が切れそうだから新しいのを送って欲しいって誰かに頼んでただろう。花が咲くのは春なんだけど、時期的に夏とそう離れてないから丁度よさそうかなと思って提案してみたんだが、嫌なら言ってくれていいぞ?

これはボクが勝手に考えてみただけで意見を聞こうとしている仮の案なんだから。


「ううん。俺、これがいい」


不思議な顔から満面の笑顔に変わり、ご機嫌な夏彦の様子に悪いと思いながらも浮かんでしまう……わんこ。いや、別に悪い意味ではない。いい意味だ。

夏彦はふわふわした長い髪の毛を高めの位置で結い上げているから首を横振りすると尻尾みたいにそれが揺れるんだ。機嫌がいいと犬は尻尾を振るから、つい。


こほん。それはともかく好みにあったならそれでよしということで。

残る三人にも如何なものだろうかと意見を問うたが、こちらもよろしい笑顔で賛成意見を頂けましたので、このまま企画会議に一度提出してみると致しますか。






「あら、いいじゃないコレ。また面白いこと考えて来たわね、橙里ちゃんは」


そんな感じで企画はあっさりと通り、調香師の方とそれぞれお香の香りについて細かく話し合ったり、ライブ会場に設ける各人のブースをどうするかの話し合いもそれに伴い進んで行った。予算内ならどんな装いにしても構わないこともあり、個々人の趣味がこれでもかと前面に押し出されている個人ブースはファンに好評だ。


初めて個人ブースを設営した時にネット上で感想を求めたら、回線がパンクした。

契約会社と事務所が種類の違う悲鳴を上げたのが印象的な一件だ。

会場でもアンケート用紙で軽く調査をしたが、冒頭文はほとんど「ああああっ!」などの叫び声から始まり、最後には「ありがとうございます!」とか「おかわりください!」と興奮した文面でお礼の言葉祭りになっていた。ご飯じゃないのにおかわりってなんだろう。情報を飲み込む、という意味なのだろうか?むぅ……。


余程メンバーの情報に飢えていたんだねと用紙チェックをしていたスタッフの誰かが言っていたので、それ以降はちょこちょこ公式サイトでたわいない話を掲載するようにしている。今日の夕飯なんて世にありふれていて面白味に欠ける写真を載せるだけで閲覧数が急上昇するのだから不思議なものである。


夏のライブに合わせて新曲も出るので、今回も人気投票が開催される予定だ。

投票用紙の様式を変更するか、それとも現行のままにするのかちょっと悩んでいると社長が言っていたが、何か現行で問題点でもあるのだろうか。

開票作業は有り難いことに人手を必要とするため、別部署のスタッフの方を借りて忙しいなか手分けしてくれているらしい。なので実状を知らないボク達には問題があるのかどうかすらもよくわからなかったりする。確認した方がいいのかな。


「……でさ、…………流転の四季が……」


個人ブースの話を終えて事務所の廊下をゆっくり歩いていると、開いたドアからボク達のグループ名が聞こえてそちらへと進んで行く。

なんの話だろうかとちょっとした好奇心があったのかもしれない。


「新曲が出るから人気投票今度もやるんでしょ?まだ新人だけどファンが多いから開票作業大変だって先パイが言ってたよー」


ああ、丁度考えていた話なのかと思い、もう少し話を聞けないだろうかと声の聞こえる位置で足を止めた。……盗み聞きだという点については目を瞑って欲しい。

部屋の位置から察するに、どうもボク達とあまり係わりのない部署の方みたいなので、こういう話は貴重な意見だと思う。これは一種の調査だ、調査。なんて自己弁護をしながら聞き耳を立てる。


「そういえばあのグループのリーダー、人気投票いつも二位票しかないんだって」


「えー、何それマジで?」


「らしいよー。逆にすごくない?アイドルの、リーダーなのに、一位票が、一票もないの」


「ちょっ、やだそれウケるー」


「人気ないならなんでアイドルやってんのー?本人知らないの?」


「二位票しかなくても三位だから俺ってば人気あるじゃん!とか思ってんじゃないのー?はっずかしぃー」


自分と大して年齢の変わらないだろう男女の明るく響く笑い声がよく聞こえた。

ボク達の人気投票用紙には第一位と第二位の二名、それぞれ別人の名前を記入するように枠が二つ作られている。一位が三票、二位が一票になっていて、最終的にその票数を計算して順位を決定する。一位票が多ければ当然順位で有利になる。

それと同時に一位票とはその人にとっての一位、一番が誰であるかということも意味している。ボク達五人の中で誰が一番好きかということを。


では、二位票は?その人にとっての二位とは、どんな存在なんだろうか。


「あ、橙里くーん」


名前を呼ばれてハッとなる。振り返ると廊下の奥から見知ったスタッフさんが駆けてくるところだった。パタパタと足音をさせて走って来るけれど、廊下は走るなって何処かの壁に力強い文字で書かれた紙が張り出されていたような……。


「よかった、まだ事務所に居てくれて。はい、これ来月のスケジュール表の写し。詳しい話はたぶん辛島さんからあると思うからひとまず渡すだけ……って、なんか騒がしいね。楽しそうだけどーって、どうしたどうした?」


わざわざボクを捜して走って来てくれたスタッフさんには悪いけれど、この場の会話は彼女にはよろしくないと思う。だって彼女はボク達のグループのスタッフさん。夏のライブが決まったのを「よぉっしゃぁーーーーっ!」って女性らしからぬ勇ましい叫び声を上げてガッツポーズしてくれたいい人だ。名前は花巻(はなまき)さん。


差し出されたスケジュール表を受け取ると、花巻さんの小さな手を取ってくるりと体をその場で半回転させ、ボクへ背を向けた状態にする。その両肩に手を置いて前へ進めと軽く力を込めて押し始めれば、何事かと顔を上向けボクを仰いでくる。

危ないから足元を見て欲しい。そして何も聞かずに前進して欲しい。


「はははっ、二位票しかないけど人気はあるんですぅーとかサイコーにウケる!」


「誰の一位にもなれないのに人気があると思ってるとかむなしぃー」


「それでアイドルでリーダーとか私ならツラくてムリー。澄ましたお顔の下にある神経は図太いんだねとーりくーん」


「あぁ?」


いま、物凄く柄が悪くて女の人とは思えない濁点のついた低い声がボクの前から聞こえた。小動物っぽい可愛らしい見た目なのに中身は残念なくらい雄々しいと言われる彼女の所以はあまり見ない方がいいよと辛島さんが言っていた気がする。


戸惑いながらも押されるがままに前へ進んでくれていた花巻さんの足が止まる。

これ以上力をかけると痛みが発生するだろうからブレーキをかけている足を解放して、ボク越しに声の主らを睨んでいるのだろう険しい視線を前に向けて欲しい。

折角の可愛さが……台無しとまでは言わないけれど損害を受けている。

なのに、高く響く声はこちらの都合をお構いなしにまだ聞こえてくる。


「大体さー、四季なんだろ?春夏秋冬の四人でいいっしょ。なんで五人なわけ?」


「そーだよねー。橙里くんって季節どこにも入ってないもんねー」


「あはは、まさかのグループ内でハブられてんの?しゃちょーさんひでぇー」


けらけらけら。そんな感じで聞こえてくる笑い声は明るいのに、ボクの目の前は果てしなく暗くて途方もなく真っ黒な空気が流れている。錯覚であれ。


「…………橙里くん、この手を放して速やかにその場所を退きなさい」


パキポキと胸の前で鳴らしていらっしゃいます小さなお手々は何なのでしょうか花巻さん。完全に据わっていらっしゃるお目々が教育的指導を通り越した感情を湛えて見えるのはボクの気の所為なのでしょうか花巻さん。


「橙里くん、いい子だから退きましょうね」


年下ではありますが一応成人している男をつかまえていい子はやめて頂けませんか。睨むのをやめてスマイルください。手を鳴らす代わりに繋ぎましょう。速やかにこの場所から離れる為に。

ああ、声に出さなくてもわかるご不満は承知の上です。ありがとうございます。

それでも……行きましょう。ね?お願いですから……。


「…………っく、そんな顔されちゃあファンの一人としてお願いを叶えるしかないじゃないの。狡いわよ橙里くん」


一体自分がどんな顔をしているのだろうかという疑問はさて置き、動いてなるものかと廊下に食らいついていた靴裏を剥がしてくれた花巻さんの手を取って、エスコートするように彼女が走ってきた方向へと歩いて行く。

ちらりと後方を窺い見た花巻さんの目が飢えた肉食獣みたいになっていたのには気が付かなかったふりをしようと思う。可愛い女性にその表現はないと思う。


「どうして止めちゃうのかしらね。橙里くん、やさしすぎるでしょう。ああいう輩には物理的にガツンと言ってあげなきゃダメよ」


それじゃあ花巻さんが傷害罪になりますよ。言葉は何処に行ったんですか。

拳を握って掲げないでください花巻さん、女の子なんですから。

まあまあと宥めすかしているのが余計に彼女の不満を煽っているのか、目に浮かんでいる怒りは収まる気配を見せない。どうしたものかな。


実のところ、ああいうことを言われるのは初めてじゃない。幼い頃から妹の朱里と比べて、同年代の子、クラスの子たちと比べてといろいろ言われてきた。

よく言われたのは「何を考えているのかわからない」だったかな。

朱里は「それはこっちの台詞だ。そっちが何言ってんのかわかんない」って憤慨してくれたけれど、慣れているのであまり気にしないようにしている。


「橙里くん……」


そう言うと、今の花巻さんみたいに悲しい顔して心配されるから、困ってしまう。

恐らく彼らには彼らの言い分があるのだろう。ボクは争い事や喧嘩は好きじゃないから怒ってくれるのは嬉しいのだけど、可能なら忘れて欲しい。無理なら出来るだけ思い出さないでいてくれればいい。だって、いい気分にはなれないでしょう?


「あのね、橙里くん」


「花巻さーん、一番に電話入ってまーす!」


彼女の部署まで送り届けると、丁度電話がかかっていると室内から声がかかった。

何かを言いかけた花巻さんは室内とボクとの間で視線をきょろきょろさせたから、仕事を優先してくださいと室内を指差す。

さっきとは真逆の方向を向いた彼女の眉が困っているけれど、くっと唇を噛んで花巻さんはボクへと背を向ける。


「流転の四季には橙里くんがぜぇーったいに必要なんだからね!」


そして言い逃げするようにして電話を受け取りに走って行く背中を見送り、ボクも踵を返し歩き出す。歩いて来たばかりの道をまた戻り、当初の目的であった階下を目指そうとして同じ場所、正確にはもっと手前で足を止めた。

体力をつける為に最近は階段を使用しているのだけど、今日はエレベーターに乗る。一人しかいない無音の箱の中、耳に、脳裏に蘇るのは……否定と笑い声。


そっか……。ボクは、皆の二番なのか。三位という場所は、誰かの次で与えられたもので、誰かの一番じゃない。誰の一番にもなれないんだ。誰かの、次。


ふいに大声で叫び、全身で二番を悔しがる俊春を思い出し、くつりと自嘲する。

どうして彼がそんなに怒って、悔しがるのかがようやく、ほんの少しかもしれないけれどわかった気がする。


誰かの次(にばんめ)は、悲しいんだね。

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