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絶体絶命悪役令嬢  作者: 8D
絶体絶命悪役令嬢2
63/74

終章 最上の結果

 ちょっと悪あがきしてみました。


 誤字報告ありがとうございました。

 修正致しました。

 今回の事件。

 私は何もできなかったが、アスティのおかげでどうにか自分の無実を証明する事ができた。


 議論が終わり、人のいなくなった講堂。


「事件が解決してよかった」


 そう喜びの声を上げたのは、葵くんだった。

 レニスも言葉はなかったが、私の体に抱きついてくる。


 言葉はないが、とても喜んでいる事はわかる。


 講堂に残っているのは私とアスティ。

 葵くんとレニス。

 レセーシュ王子、マルテュス、そしてルイジちゃんの七人だ。


「このたびの事は、私のせいでとんだご迷惑をおかけしました。すみません」


 ルイジちゃんは私に向けて深く頭を下げた。

 その声色からは申し訳なさが伝わってくる。


「正直、これを「構わない」の一言で済ませられるほど、私の懐は深くないですね」


 言うと、ルイジちゃんは泣きそうな顔で改めて「すみません!」と頭を下げた。


「でも、今回は私も加害者ですからね。謝られる必要は無いですよ。でも、一度謝られてしまったからこちらもそうするべきでしょうかね」


 私はルイジちゃんに向き直り、「ごめんなさい」と頭を下げた。


 どういうわけか、ルイジちゃんは泣きそうな顔になった。

 何で?


「……あなたに、そう言っていただけると、恐縮です……うう……」


 既に目が潤んだ状態でルイジちゃんは返した。


「でも、ジェイルさんにはしっかりと謝る事」

「はい……はい……! それは勿論、しっかりと謝罪させていただきます」

「そうするがいい」


 レセーシュ王子は厳しい表情のまま、恐縮するルイジちゃんにそう言った。


 私も後で謝りに行こう。


 しかし、ルイジちゃん……。

 覚えがないはずだ。


 カツラをつけている時とは、明らかに別人なのだから。

 化粧を落とした彼女は、派手さのない素朴な少女だった。


 この姿ならば、私も見覚えがある……。

 ……あったかなぁ?

 あった気がする。


 と、彼女との思い出を求めて記憶の中を探っていると、レセーシュ王子がこちらを向いた。


「いくら罪を三分し、軽減したとはいえ停学処分は覚悟しておけ」

「執行猶予とかつきませんか?」

「何だそれは? どうであれ、お前が罪を負ったのはこれで二回目だ。さすがに今回は大人しく従ってもらうぞ」


 なんと、私は今まさに執行猶予中だったようだ。


 そういえば前のマルテュスの事件。

 あれ、私がやった事になっているんだった。

 前回は何とか罰は受けずに済んだが、今回はそうもいかないか。


 と思いながら、私はマルテュスを見た。


「何でしょうか?」


 冷ややかな視線を向けながら、マルテュスは問う。


「いや、あなたはずっと本当の証言を述べ続けてくれていたのだな、と思って」


 今回の議論。

 彼女は一切嘘のない証言を延べ続けていた。


 自分の見た事をそのまま伝えていただけだった。


 彼女は私を恨んでいる。

 だから、それは意外な事だ。


「私は、あなたが嫌いです。アリシャ様」

「知っています」

「いいえ、恨んでいると言った方が正しいですね」

「……そうですね」


 マルテュスは背を向け、出口の方を向いた。


「でも、あなたには恩がある。その恩がある限り、恨むに恨めないじゃないですか。だから、その恩を返したかった」

「そう……なんだ」


 マルテュスは意地の悪そうな笑みを向ける。


「私はあなたを純粋に、恨んでいたいんです」


 そう言い残すと、マルテュスは講堂から去っていった。


「待って、マルテュスさん」


 その後をルイジちゃんが追いかけていく。


「レセーシュ王子」

「何だ?」


 呼ぶと、レセーシュ王子は気難しい顔で私に向く。


「いろいろと配慮なさってくれたようですね。素直にお礼は言いたくありませんが」

「私は私なりの公平さを示しただけだ」

「本当に?」

「そのドリルでつつかれるのは思いのほか痛いからな。多少は私怨が入っていたかもしれないな」


 はて、物理的につついた憶えはないのだけれど……?


「さて、私もジェイルの様子を見に行くとしよう」


 私の問いを無視して、レセーシュ王子も出て行く。


「しかし、停学処分ですか。しばらく、退屈ですね」


 決して授業が好きというわけではないが。

 友人と会えなくなるのは寂しい。


 そう思いながら、周囲の友人達を見回す。


「アソビにイキマス」


 と葵くんが申し出てくれた。

 レニスもうんうんと強く頷いてくれる。


「ありがとう」


 私は二人にお礼を言った。


「何、そう退屈でもないさ。多分、俺も停学だ」

「同じ罰ですからね」

「だからお前が良ければ、毎日でも遊びに行くさ」

「停学処分で遊び惚けるなんて、不真面目な事ですね」

「謹慎となればそうもできんだろうが」


 まぁ、そうなる可能性もあるか。


「そういえば、兄貴に何か囁かれていただろう? 何を言われたんだ?」

「囁かれていた?」


 アスティの問いに首を傾げる。


 ああ、そういえば目隠しされた時に耳元で囁かれたか。


「さっきの事で大体の状況は把握できた。弟が仕損じても、司法局に委ねる。そうなれば、私の無実が証明される可能性は高い、と」

「はぁ?」


 私がルイジの眉の色に気付いたように、レセーシュ王子もそれに気付いていた。

 そして、アスティのそれまでの反証と合わせて、ルイジ嬢の犯行を確信したのだろう。


「何だ、それは」

「本当ですよ」


 私は苦笑しながら同意する。


「私もレセーシュ王子が何を考えていたのか、完全にはわかりませんが。議論をする事が目的だったように思えるんですよ」

「議論を?」

「私が自己弁護できない事を知っていながら、議論の場が用意されていた。これは、私以外の誰かが議論を行う事を前提にしていたという証拠です」

「誰が?」


 私はアスティを指した。


「最有力は王子。でなければ、レニスか葵くん辺りが名乗り出る。と思ったのでしょう」

「それはわかったが、議論した理由は?」

「証人を含めた議論なら、思いがけない事実が浮かび上がる事もある、から?」

「訊かれても困る」


 私にもよくわからない。

 ただ、レセーシュ王子にとっては利点を見いだせる何かがあったのだと思う。


「ただ、結果から考えると……事件の早期解決、とか?」

「早期解決?」

「少なくともレセーシュ王子にとっては、議論を重ねた上で最終的には司法へ委ねる事。それが最上の手だったはずです。それが一番早く事件が解決する、と思えたのがその方法だった……」


 そして、その思惑通り、いや、思惑以上の結果に事は進んだ。


「早期解決を望んでいたなら、何故お前の自己弁護を封じた? 目的を果たすなら、それが一番の方法だろう」

「私への評価は過大だと思いますが。申し入れがあった事と、それ以上に私が信じられなかったからじゃないですかね?」

「信じられなかった?」

「私には動機がありましたから」


 それ自体は勘違いの過ぎるものであるが、少なくとも私を信じ切れない要因をレセーシュ王子は抱えていたのだ。


「実際に語っていた通り、私が口八丁で事件を自分の都合のいい方向に持って行くんじゃないか、という危惧もあったのでしょう。あとは、マルテュスが事件に関わっていた事もあるのでしょうか……」

「フェアラート嬢が?」

「多分、私とマルテュスの関係もレセーシュ王子は知っていたでしょうから。彼女が私をはめようとしているのではないか。という考えにも、至ったのだと思います。まぁつまり「どっちかが犯人だろうけどどっちが犯人かわからない」と考えていたんじゃないかと」


 議論は、どちらが犯人かを見極めるという目的があったのかもしれないな。

 どちらかに的を絞れれば、司法に委ねた後もスムーズに事は運ぶだろう。


「で、結局、ルイジちゃんが犯人だという事に気付いた。この時点でもう、王子としては議論を終えてもよかったのだと思います。が……」

「俺が解決してしまったわけだ」

「予想以上の早期解決となったわけなんですが……。早期解決が目的だったとしても、何故それを図ったのかはよくわからないんですよね。ジェイル関係の事件だから早く解決したかったからか、もしくは……生徒会長としての判断能力を疑われると王位継承に響く、とか」


 そこの所はどうなの? と視線でアスティに問いかける。


「父上がどういう基準で後継者を決めるつもりなのかよく知らんよ」

「そうですか」


 まぁ、レセーシュ王子が感情的な人間であろうが、打算的な人間であろうが私にはどうでもいい事か。


 ふと、アスティが不機嫌そうに顔を顰めている事に気付いた。


「どうしました?」

「……兄貴は、最初から司法局の介入を視野に入れていたのだろう?」

「それはそうだと思いますけど」

「なら、俺の頑張りは無駄だったのか?」

「いえ? 無駄じゃないですよ」


 私はきっぱりと否定する。


「何故、そう言い切れる?」

「だって、あそこで王子がルイジちゃんを自白させられなかったら、事件は司法の手に委ねられる事になったでしょう?」

「そうだろうな」


 大勢の生徒達に見られる中、罪を暴かれた以上醜聞は免れないかもしれない。

 が、公式な経歴に大きな傷が残る事はないだろう。


 私もまたその醜聞の内側にいるわけだが、我が家はアスティとの婚約状態さえ維持できればどうでも良いと思っているだろう。


「事件が司法局の預かりとなれば、公的に記録の残る事件です。ルイジちゃんは間違いなく家名に傷をつける事になってました」


 それは、彼女がもっとも忌避していた事だ。

 今のように、学園内での罰則に留まらなかったはずだ。


「だから、無駄じゃなかったんです。一人の女の子の人生を守った事には違いありません。誇らしい事ですよ。これは最上の結果だと思います」


 そう、笑顔で答えた。

 すると、アスティはじっと私の顔を見詰める。


「どうしました?」

「いや……。なら、頑張ってよかった。そう、改めて思っただけだ」


 妙に嬉しそうな表情で笑い、アスティは答えた。


「……俺達もそろそろ行こうか」

「そうですね」


 そうして私達もまた、講堂を後にする。


 誰もいなくなって寂しくなった講堂。

 停学中の日々に、ここのような寂しさはなさそうだった。




 その日の放課後。

 私達はジェイルのお見舞いに行った。


 ジェイルは意識を取り戻しており、私とアスティは揃って今回の事を謝った。

 すると彼女は快く許してくれた。


 その後、正式に私とアスティは半年間の停学処分となった。

 何でも許してくれるジェイルちゃん。


 このシリーズ。

 完結したので放置しようかな、とも思ったのですが。


 私自身、まだ書きたい事があったので、再開させる事にしました。

 もう少し、話を練ってから書き始めた方が良かったかもしれませんが。


 完成までにはまた長い時間をかける事になるでしょう。

 待っていてくださいとは言えません。

 ただ新しい話を見かけた時に、興味があれば読んでくださるとうれしいです。

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