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絶体絶命悪役令嬢  作者: 8D
絶体絶命悪役令嬢2
53/74

序章 新たなる幕開け

 これは第二部一章になります。


 ついに、始めてしまいましたね……。

 この二部もまた、恐らく長い時間をかけて連載されていく事になるでしょう。

 気長にお待ちください。

 私の名前はアリシャ・プローヴァ。

 元悪役令嬢である。


 何故、「元」であるかといえば、もう悪役令嬢とは呼べないだろうからだ。


 前世の世界でプレイした乙女ゲーム。

 それに酷似した異世界へ転生した私には、ゲームの悪役令嬢「アリシャ・プローヴァ」と同じ破滅の運命が待ち受けていた。

 その破滅ぎりぎりの所で前世の記憶を思い出した私は、どうにか自身にかけられた嫌疑を晴らすために立ち向かい、自身の無実を証明して運命を変えた。


 ふぅ、やれやれだわ。


 しかしながらそこから私の運命は思わぬ方向へ転がり始める。

 どういうわけかいくつかの事件に関わり、それらを解決する運びとなったのだ。

 友人のため自分にできる事を必死に頑張っていたら、自然とそうなっていたのである。


 そしてヒロインと攻略対象を巡って争う事もなく、思わぬ方向へ紡がれていく人生はもはや私の知る乙女ゲームの世界とは呼べないものであった。


 だから私の人生は、ゲームにおける悪役令嬢という立場から脱したと見ていいだろう。


 しかしながら、悪役令嬢という破滅の運命から外れた私の人生もまた、平穏と呼べるものではないようだった。

 現にまた、新たな事件が始まろうとしていた。


 さながら、悪役令嬢という運命のレールを外れた私に、新たな運命のレールが敷かれたように……。

 そのレールを進み続けている事に、私はまだ気付かなかった。




 レセーシュ王子に呼ばれた私は、一緒にいた面々と共に講堂へと向かった。


「何があったんだろうな」


 講堂へ向かう途中、アスティが呟く。


 アスティ・N・トレランシア。

 彼は乙女ゲームにおける攻略対象の一人であり、私の婚約者でもある。

 私が前世の記憶を取り戻した時には彼から嫌疑をかけられ、互いに議論を交わした相手だ。

 王子とは思えないムキムキマッチョな肉体が特徴的である。


 その隣を歩くのはレニス・トレーネ。

 私の数少ない友人の一人である。

 口数が少なく、前髪で目を隠した小柄な少女だ。

 一応、彼女も悪役令嬢という立場にある。


 彼女はアスティに同意して頷いた。


「さぁ、聞いてみない事には……。葵くんは何か聞いていないの?」

「僕はレセーシュ殿下から、事件が起こったのでアリシャさんを呼んでくるようにと言われただけですから……」


 ヒノモト語……日本語で話しかけると葵くんは同じ言葉で申し訳なさそうに答えた。


 彼は上乃院うえのいん あおい

 日本風の国、ヒノモトから留学してきた男子生徒で、ショタ属性の忍者である。


「ただ、何やらジェイルさんが大変な事になったとか……」


 ジェイル・イーニャ。

 彼女は私が知る限り、この世界の元となった乙女ゲームの主人公である。

 栗色の髪をした、とにかく頑丈な少女だ。

 いくつかの事件で被害者となり、洒落にならない目に合っているが不思議と生還する不死身の女である。


「彼女は多分……。大丈夫だと思うけど……」


 彼女は頑丈であるが、ダメージの蓄積というものもある。

 いつも頭を殴られるので、私は少し心配していた。

 昨日もそれに関してちょっとしたごたごたがあったばかりだ。


「もしかして、昨日の事が関係しているんでしょうか?」


 アスティに向いて不安を吐露すると、彼は苦い顔をした。


 あれは、レニスが屋上で育てている花を植木鉢ごと地上へと運んでいる時の事だ。

 何故、屋上から下ろしていったのかといえば、危険だからである。


 花を育てるための植木鉢が屋上にあると、それらが落下した時に危ないので地上へ運ぶよう生徒会から通達があったのだ。

 この植木鉢の中には金属製の物もある。

 これが落ちて人にでも当たれば、無事では済まないだろう。


 ある事件を通してその危険性を認知した生徒会は、屋上で花を育てる事を禁止にしたのだ。

 そして数日前に正式な決定が下され、管理していたレニスに撤去するよう通達があった。

 屋上の植木鉢は、中庭にある指定された一角に置かれる事となった。


 私は友人としてその手伝いを申し出たのだが……。

 残念ながら、私はあまりにも非力な少女である。

 なので、アスティにも手伝ってもらって放課後に植木鉢を少しずつ下ろしていっていた。


 あれは私が一つ、アスティは二つの植木鉢を持って階段を下りていた時だ。

 何も植えられていない、金属製の植木鉢だ。

 植木鉢はそれが最後で、レニスは屋上の鍵を職員室へ返しに行っていた。


 アスティが階段から足を踏み外したのはそんな時である。

 そして運悪く、その下にジェイルが歩いていた。

 ジェイルはバランスを崩したアスティと接触。


 さらに運悪く、お互いに頭部をぶつけ合う形になった。


 結果、アスティだけ脳震盪を起こして医務室へ運ばれ……。

 ジェイルはほぼ無傷であった。


 ケロリとしていた。


「……関係ないと思うぞ」


 アスティは答える。


 まぁ、実は私もそう思っていた。


 しかし、ジェイルがまた事件に巻き込まれたとすれば、昨日だろう。

 事件があった時は、いつも翌日それについての発表が講堂で行われる。

 そこで異議を唱えると議論に発展する事があり……。


 本来稀なケースではあるが、去年はその異議が唱えられる事例が何度かあった。


「「あ、アリシャ・プローヴァ様ですね?」」


 講堂へ着くと、そこで呼び止められる。

 呼び止めたのは、二人の守衛である。


 よく見ると、二人とも同じ顔だった。


「そうですけど……?」


 答えると、二人は揃って敬礼する。


「えーと、前にもお会いしましたっけ?」


 初対面のはずだが、謎の既視感がある。


「それは弟達です」「それは兄達です」


 二人揃って別の事を言うので、ちょっと聞き取りにくかった。


「僕はオーベン」「僕はウンテン」

「彼らの兄です」「彼らの弟です」


 またまた、同時に別の事を言うのでよく聞き取れなかった。


「そういえば四つ子だったな」

「「はい」」


 アスティが言うと、二人の衛兵は同時に頷いた。

 どうやら、彼はこの守衛達の事を知っているらしい。


 しかし四つ子かぁ……。

 これと同じ顔の人間があと二人いるという事か。


「城の衛兵であるお前達が、何故ここにいる?」

「「僕達兄弟は、元々この学園で衛兵をしているんです。あの日は、人員が足りないからって城の警備に駆り出されたんです」」

「そうだったのか。四人ともそうなのか?」

「「はい。アスティ様」」


 そうなんだ。


 ……そういえば、生前の乙女ゲームで何度か衛兵が出てくるイベント等があったけど、みんな同じ顔をしていた。

 あれはモブだから同じなのだと思っていたが、実はこの兄弟だったのではないだろうか……。


 まぁ、別にどうでもいいんだけど。


「「では、失礼ながら――」」


 そう言って、警備の兄弟が私を挟む形で両手を掴んだ。


「え?」

「「アリシャ・プローヴァ様。ジェイル・イーニャ殺害未遂の容疑で連行します」」

「えぇっ!」


 ジェイルの危機と思いきや、実は私の危機であったらしい。


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