序章
待っていてくださった方、お待たせしました。
トレランシア王城。
二階、貴賓室。
意匠を凝らされた質の良い調度品。
最低限ながら、見る物の目を楽しませる豪華なインテリア。
部屋の奥にはベランダへ通じる出入り口があり、夜風に揺れる白いカーテンは滑らかに波打っている。
ここは王家が最大限に客を持て成す事を目的とした最高の客室である。
たとえ貴族階級の者であっても……いや、常日頃から豪奢な生活に慣れた貴族階級だからこそ居心地の良さを感じこそすれ、不満を抱く余地のない行き届いた部屋である。
しかし快適さを綿密に計算されたその空間は、ある異物によって台無しとなっていた。
部屋の中央。
緑色の絨毯が敷かれた床の上に、一人の男性が倒れていた。
仰向けに倒れた男性。
その右手には、一丁の拳銃。
表情は驚愕に固まっている。
もはや、その表情が変わる事など永遠にないだろう。
その男性は、すでに事切れていたのだから……。
男性の胸には一本の剣が突き刺さり、切り裂かれた傷を基点にシャツの布地を血の赤が染めていた。
そんな男性を目前にして、さらに一人の男性が呆然と佇んでいる。
私からはその背中が見え、その先に男性の死体が見えた。
状況から見て、その佇む男性が床で絶命した男性を殺したようにしか見えない。
そんなまさか……。
彼が殺したというの?
「王子!」
私は、彼を呼ぶ。
彼は、この国の第二王子。
アスティ・N・トレランシアだった。
びっくりするぐらい関係ない話なんですが……。
某アニメのビルフラン様。
乙女ゲーの俺様系攻略対象みたいですよね(説明不足)。




