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絶体絶命悪役令嬢  作者: 8D
絶体絶命悪役友情
13/74

九話 ボッチからの卒業

 絶体絶命悪役友情編は、この話で終わりです。

 議論の後。

 講堂。


 他の生徒達がそれぞれの教室に戻ろうと、講堂を出て行っていた。

 そんな中、私は一人佇んでいた。


 よかった。

 なんとか、彼女の無実を証明する事ができた。


 でも、彼女には嫌われたかもしれない。


 何せ、私が真実を暴いた事でテネルが犯罪者となってしまったのだから。

 それに、大好きな兄が自分を犯人に仕立て上げようとしていた事も知ってしまった。


 犯人扱いされた事もあって、彼女はこの事件の始まりからずっと辛い思いをしてきたのだ。

 きっと、今回の事件で彼女は深く傷ついただろう。


「あ、あ……」


 声が聞こえた。

 振り返る。

 すると、そこにはレニスがいた。


 彼女は何か言おうとして、口を噤む。


「レニス。ごめんなさい」


 私は彼女に謝った。


「恨んでくれても構いません。でも私は、こんな結末であってでもあなたを助けたかったんです」


 レニスは首を左右に振る。


「わかってる」


 一言告げると、少し俯く。


「……悲しい。けど、少し嬉しかった……。助けてくれたの、アリシャ様、だけ……」


 レニスはそれから何か言おうとして、また言葉を詰まらせた。

 それでも、なんとか言葉を搾り出す。


「あ、ありがとう……」


 お礼を言われるとは思わなかった。

 だから、嬉しい。


「多分、テネルさんは捕まらずに済むと思います。あとはジェイル次第だけれど、ジェイルが許してくれるなら学園も停学処分で済むと思う。また、一緒にいられるよ」


 私が言うと、レニスは俯いた。


「一緒に、いない方がいいかも……」


 ん?


「私……お兄ちゃん頼ってばっかり……」


 そういえば、テネルもそんな事を言っていたな。


「だから、言いたい事言えなかった……。だから、お兄ちゃん、こんな事になっちゃった……」

「それは違うと思います」


 実行に移したのはテネルだ。

 それに、踏みとどまる機会はあったはずだ。


 ゲームでも、この事件が起こらない事はある。

 あれは、踏みとどまったという事だ。

 でも今回は、踏みとどまる事ができなかった。

 それだけの事だ。


 けれど、レニスは首を左右に振る。


「自立……しなきゃ駄目だと思う。強く、ならなきゃ……」


 彼女なりに、今回の事で思う所があったのかもしれないな。


「お兄ちゃんから……離れるようにする……。一人でも……大丈夫になる……。一人に……」

「それも違うと思います」


 レニスは不思議そうな顔をする。

 私はそんな彼女に続けた。


「自立する事は孤独になる事ではありません。外との繋がりを新しく作る事も、自立の一つだと思います」


 一度、言葉を切る。

 次の言葉を心の中で準備した。


 改まって、こういう事を言うのは緊張するなぁ……。

 口を開く。


「だからレニスさん。あなたさえよければ、私と友達になりませんか?」


 私は手を差し出した。

 レニスはどんな反応を返すだろうか?

 そう思って見ていると、彼女は俯いた。


 あら、これは断られる流れ?


 彼女は小刻みに震える。

 すすり泣くような声が聞こえて来た。


 どうしたのよ?


 私はレニスのそばにより、彼女の前髪を上げた。

 彼女の素顔が見える。

 テネルと似て、幼い印象の可愛らしい顔だ。

 やっぱり彼女は泣いていて、顔が少し赤くなっている。


 レニスの目は綺麗な深緑だった。

 その色が、涙に滲んで揺れていた。


「なりたい……」


 彼女は答える。


「私……友達になりたい」

「うん。じゃあ、そうなろう」


 彼女は頷いた。




 彼女と共に、私は講堂を出た。

 すると、先に講堂から出ていたアスティが待っていた。


「アリシャ」


 声をかけられ、レニスがすっと私の後ろに隠れた。


 やっぱり怖がられているじゃないですか、王子。


「アスティ。先ほどはどうも」

「それは構わん」


 会話が途切れる。


「……今度こそ信じ抜きたい、でしたか。あれは、どういう意味なんです?」

「それは……」


 アスティは口ごもった。

 少し思案した様子の後、意を決するように答える。


「……俺はお前の婚約者になった時、お前という人間をどんな事があっても信じようと思った。添い遂げる相手なのだから、それが夫となる者の務めだと。けれど、その決心を貫き通す事ができなかったんだ。お前と違ってな」

「私と違って?」

「お前は、彼女の無実を最後まで信じ抜いたじゃないか。噂を信じず、実際の人柄に触れ、自分を貫いた」


 私はただ、レニスの噂の真実を知っていただけに過ぎない。

 だから、信じられたという部分もある。


「だから、俺もそうなりたいと思った。……アリシャ」

「はい?」


 アスティが私に居直り、正面からまっすぐに視線をくれる。


「俺は、もうお前を疑わない。今度こそ、何があってもお前を信じ抜く。そんな人間に、俺はなりたい」


 正面から改めて言われると、少し照れるな。

 私は視線を外して答える。


「それはどうなんでしょうね。私、結構嘘吐きですよ」

「だが、今のお前は人をあざむき傷付けるための嘘は言わないだろう。俺が信じるのはお前の言葉じゃない。お前という人間を信じるんだ」

「そうですか」


 本当に照れるな。

 イケメンにこんな事を言われると。




 その日の内に、ジェイルは意識を取り戻した。

 私とアスティがお見舞いに行った時にはすっかり風邪も治り、ケロリとした様子だった。

 文化祭にも参加するという。


 彼女も災難な事だ。

 二回も事件の被害者になるなんて。


 でも、ジェイルがこんな目に遭うイベントはゲームにおいて二つだけ。

 その二つの事件も越えた。

 今後はもう、事件にも巻き込まれないはず。


 ……だった。


 だから、彼女がまさかあんな事件に巻き込まれるなんて。

 その時の私には、予想もつかなかった。

 気になる終わり方をしていますが、トリックはこれから考えます。

 申し訳ありませんが、次は数か月後かもしれません。

 興味のある方は、気長にお待ちください。

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