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攻略の勇者 後編 ミナル森『関の守護者』

 考えてみればビトレイの『1990式熱電離気体尖形射撃砲ポインテッドプラズマカノン』を大剣で防いだ事もおかしかった。3億度に達するプラズマに、一秒ですら耐えられる物質があるはずが無い。

 あれは大剣の位置を基準にして負の引力(重力)である斥力を働かせてプラズマ流を分断していたのだ。

 ということを悪魔が重力を操ることに気付いてから数秒で理解したシスだが、時既に遅かった。

 懐に飛び込まれることを嫌った悪魔が一歩大きく後退し、その拳を最速で振るう。

 空洞現象――は起きない。シスが何らかの手段を用いて空洞現象を無効化していることを理解し、直接殴る方向に変更したのだろう。

 高速で迫る拳。加速される思考。

 そしてシスは呟いた。



 「『滅魔帝(インノケンティウス)』」



 魔力がシスの周りで渦巻いた。

 二日連続の『滅魔帝(インノケンティウス)』は大量の疲労と深刻な魔力枯渇を齎すだろう。昨日魔力回復薬で魔力を回復したとはいえ、完全ではない。足りない分の魔力を補う為吸い取られる体力に現れる脱力感。それらを全て振り切って、シスは真上に飛び上がる。

 (爆発系は押さえ込まれる。ならば純粋物理系統の攻撃しかないな。)

 「『武器庫(アーセナル)』、ガーネット、ラピスラズリ」

 出現させたのはガーネットで“生成”出来る限界量の巨岩。

 100メートル上空に出現した巨岩は、自身にかかる重力加速度を“増幅”されて、一瞬で凄まじい速度に加速され、あたかも隕石が落下したかのように悪魔へ突き刺さる。

 だがこのままでは『1990式熱電離気体尖形射撃砲ポインテッドプラズマカノン』の時と同じく、迎撃されて悪魔にまでダメージは届かないだろう。

 だが。

 隕石が悪魔に衝突する直前。

 「全員、対衝撃態勢!!」

 シスが叫び、反射的に全員が何らかの手段を使った瞬間。




 隕石が崩壊した(・・・・)




 ッッッッッッッッッッッッ!!!!




 音無き音が炸裂した。




 空気が絶叫し、地面が慟哭し、天空が発狂し、次元が歎願した。

 半径5キロメートルの円上の木が全て外へ倒れた。

 地面から生えていた背の高い雑草さえも、二度と元のように立てないようなレベルまで完全に折られた。

 崩壊した隕石から凄まじい威力の衝撃波が放たれたのだと、誰が気付けただろうか。

 ただの衝撃波で、たかが衝撃波で、これほどまでの破壊が起きるなど、誰が信じられる?

 何も対策をしなければ、この場にいた全員が運の介在する余地無く確実に死んでいたほどの威力。

 速度に耐えきれなかった隕石が地上数十メートルで崩壊しただけでこのような状態を作り出したのだ。

 シスは身を隠していた空間の狭間から姿を表す。

 隕石の真下にいた悪魔は、隕石から放射状に放たれた衝撃波から逃げることができたはずがない。

 だが。

 「ボアアアァッ!!」

 悪魔は、まだ生きていた。

 いや、その表現は正しくない。



 ダメージなど負った様子も無くそこに佇んでいた。



 その叫びは断末魔などではく、単なる怒りの咆哮なのだ。

 100メートルは離れている直径50センチの木を折るほどの衝撃を浴びて、悪魔は未だ戦闘を継続出来る。

 それは既に悪夢だった。

 「勝てる、の……?」

 ナタージャが呟いた。

 今の攻撃は、ナタージャが持つ最大の威力を持つ攻撃魔法と同等の威力を持っている、とナタージャは感じていた。

 いや、影響を及ぼした範囲を考えればそれ以上かもしれない。

 しかし、ナタージャのような絶望に囚われたのは小数だった。いや、ナタージャだけだった。

 リーナとビトレイ、サリアはシスを信頼していたし、アチェリーはワンを信じていた。

 これが最後の攻撃である訳が無いと。

 各々の手段で衝撃波を無効化したり減衰させたりした少女達が、想う少年に向けて、確かな気持ちと共に告げる。

 「「「シス……」」」

 「キール……」

 それが聞こえたのか、ペリドットの魔封宝石(ジュエル)を使い悪魔から距離を取ったシスは、最後の仕上げ(・・・・・・)とばかりに声を掛ける。

 「ワンっ!」

 離脱したシスを追うように、一歩を踏み出した悪魔の背後に、ワンがいつの間にか現れ。

 「『浸透衝撃(オズモウスインパクト)』」

 掌打を、叩き込む。

 たったそれだけで。



 悪魔が、ドォォオン! と音を立てて倒れた。



 「んな…………!?」

 ナタージャが信じられないと言わんばかりに驚いた。

 あそこまで強大で倒せない強さを誇ると思っていた悪魔があっさり倒された事に認識がついて行かなくなった。

 悪魔が倒れたのを見てシスは安堵の息を吐いて、説明した。

 「衝撃は体内にも影響する。喰らった直後は無傷に見えても、内部を振動させている。悪魔は直撃したときの物理的な衝撃は耐えたが、副次的な体内振動まではどんなに硬かろうが防ぐことは出来ない。そこに駄目押しでワンの浸透率を高めた『|浸透衝撃≪オズモウスインパクト≫』で内蔵を狂わせ、生体バランスを崩して倒したのさ。」

 最後の障害を崩した一行は、魔王を討伐すべく力の回復を謀る。











 「ミナル森、突破されました。回収準備願います。」

 「やっと来たねェ。実験終了の時間だァ。」

 誰かが、呟く。

読んでいただいてありがとうございます!

いつの間にかPVは7000を超え、ブクマ、評価全て上がっていました! ありがとうございます!

さて、いよいよ最終局面に入ります。と言ってもあと一、二話準備話を入れたら対魔王戦に突入したいと思います。

今話のラスト通り、未だラザベイ・ラボトリ-がどうなるかも分かりません。しかし、今頭の中にある内容ではどんでん返しがまだあるはずなので、皆さん今後もよろしくお願いします。

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