冒険の勇者 前編 ミナル森『発生迷宮』
ミナル森『発生迷宮』は、迷宮と呼ぶよりもっと相応しい呼び名がある、とリーナは思う。
(ダンジョン、だよねどう見ても……)
まだ地上に露出していた洞窟のような入口から『発生迷宮』に入って数分だが、そう感じざるを得なかった。
五メートルはある広い幅を持つ通路、迷路と言うよりもっと曲線的に侵入者を惑わす道、無数に分岐する岐路、視界に害が無い程度に辺りを照らす苔。どうみてもダンジョンだが、やはり遭遇するまものは全て大きさが逆転していた。
「蠱毒の原理で強化する為、最初に大量に配置した後は放置していたのか。確かにT種がC種に進化する為にはデザインされた魔力使用法にある程度習熟し、そこから別の魔力使用法を自ら編み出す必要がある。親から生まれた第二世代は親から学んで行くだろうが、親である第一世代は自ら生み出す必要がある。そのために蠱毒を使って進化を促した訳か。」
シスが呟く。
「こどく?」
前衛のサリアの疑問に中衛のシスが周囲を警戒しながら答える。アチェリーの探査魔法は先天的なもので強力だが、それが通用しない魔物の存在が無いとも言い切れないので警戒していても損はない。
「ああ、蠱毒だ。昔、毒のある虫を複数壷の中に入れ、互いに殺し合わせて最後に残った虫を一番強い毒を持つとして利用した。ミナル森も同じだ。強い魔物を作るために外界から断絶された島である『壷』に、『虫』である魔物を入れて強化を目指したということだ。……来たぞ。」
「ゴブリン、五体、前からだよーー!」
シスとアチェリーの同時に告げる警告に、神経を集中させる一行。
数秒後、3メートルを越える体躯を持つゴブリンが現れる。
ゴブリンは、元より群れる性質を持つ。シスとリーナが出会った時ほどゴブリンが群れるのは、実は異常事態であったが、それでも一桁程度には群れる。
それは、一体一体が大きくなり、強くなっても変わっていないようで、一体なら倒せる程度の個体でも、総体でみれば『関の守護者』にも匹敵するかもしれない。そもそもボスでもなんでもないただの魔物に星術的手法で対抗策を考えるなんてことが異常なのだ。
だが、五体程度なら。
ザッッ!!
と音を立てて勢い良く走り、ワン、リーナ、サリア、シスが一気にゴブリンに肉薄する。
「『武器庫』」
「『分解』」
二人が呟き、
「はぁぁぁぁああああっ!」
「せぇぇぇえええええっ」」
二人は叫ぶ。
剣が空中を走る銀閃が幾筋もきらめき、ゴブリンにダメージを与えて行く。
そこへ。
「……『実体破壊』……発射」
「サンダーボルト、行け!」
二条の攻撃が後衛の二人の方へ行きかけていた残り一体のゴブリンに突き刺さり、絶命する。
それと同時に、四人はゴブリンの討伐を終えた。
「やっぱり一体の個体値は、サリアでも倒せるレベルだな。一斉にかかって来ない限り遅れを取ることはまず無いだろう。そもそもあのレベルの量が襲ってくること自体がおかしいんだが。」
ゴブリンと遭遇して数分、シスが呟いた。
「そうね、一対多にならない限り確実に倒せると思う。でも本当、何で森の中ではあんなに出たんだろう?」
リーナがそれに答える。
森の中では、アチェリーの探査魔法によると一回の戦闘で70を超える魔物が一度に襲ってきた。それが少なくとも5回以上は繰り返されていた。
しかし『発生迷宮』では、一度に出現する魔物の数は多くとも6、7体程度、二桁には届かない。
そのため、『発生迷宮』の攻略は順調に進んでいると思われたのだが。
三時間後。
一行は未だ『発生迷宮』で彷徨っていた。
「広すぎるだろう……」
「ほんとよね……」
「おかしくない……?」
「広いな」
「キールー、広いよここーー」
「ひ、広すぎ……」
「……シス、疲れた……」
今までに倒した魔物の数は数え切れないほど。それでも魔物の遭遇割合はむしろ増えろばかりだ。
「つまりは氷山の一角だった訳だ。」
ようやく、シスは気づいた。
「地上であれだけの魔物が出現したが、常時はどうやって生き低るのか不思議だったが、こういうことか。ミナル森はあの量の魔物を養いきるだけの場所はない。明らかに上限を遥かに突破している。その差をミナル森の何倍もの敷地を持つこの『発生迷宮』で補って大量繁殖していた訳だ。地上の400体以上の魔物は『発生迷宮』からミナル森の土地へ進出生きているものだけだ、『発生迷宮』にはそれとは比べものにならないほどの量で魔物がいる訳か。」
「400が比べものにならない!?」
「……倒せるの……?」
リーナとビトレイの言葉にシスは。
「やるしかない。……ワン」
「ん?」
「手伝ってもらうぞ。」
ワンとともに構想を練って行く。
読んでいただいてありがとうございます!
最近時間がとれず、不定期になっています。頑張りますが、不定期でしたらすみません。
次回も頑張って更新するのでよろしくお願いします!




