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苦闘の勇者

 ミナル森東側からルートに戻ってきた一行は子鬼戦王ウォーロードオブゴブリンを倒して先に中心へ進んで行く。

 そこで。

 そこで、一行は『逆転の森』の本当の意味を知る。

 オークよりも大きい3メートルに届く体躯を持つ群れたゴブリンと、ゴブリンより小さい膝下サイズの規律持った半牛人(ミノタウロス)によって。

 魔物における食物連鎖、または生態ピラミッド最下位に居るが故に大量にいるゴブリンと、上位個体によって統制されている複数軍隊の脅威が、凶悪な脅威となって一行に襲い掛かる。




 「アチェリーっ!」

 「『尖形熱電離気体投射砲ポインテッドプラズマカノン』っ」

 「『開放(バースト)』」

 「ファイヤーボールっ!」

 「クリスタルっ」

 「キールーー」

 「スイッチオン」

 「ギャギャッギャギャギャ」

 「ガアアアアアッ」

 怒号が響く。

 星術銃は巨大なゴブリンを一度に五体以上射抜き、エネルギーの奔流は極小のミノタウロスを吹き飛ばす。

 水晶(クリスタル)の一撃は敵を倒せないまでも足を遅らせ、ナタージャの魔法が敵集団の中で爆発し一気に屠り、すべてを無にかえす攻撃が敵をえぐる。

 だが終わらない。

 だが止まらない。

 全てC種、運が悪ければE種の郡体相手には先手で倒すしか無い。それ以外では量で轢き潰される。

 でかいのに大量にいるゴブリン。

 強いのに小さく当てにくいミノタウロス。

 まともに戦えば確実に押される戦いしか出来ない相手が大量にいる。

 悪夢としか言いようが無かった。



 「っ!」

 リーナとワンの壁を抜けて、ミノタウロスの集団、三体が後衛になだれ込もうとする。

 (チッ、まずいな……)

 シスは考えた。

 ミノタウロスを倒さなければならないが、それにかかりきりになれば前衛への負担が増加し、戦線が崩壊する可能性が増える。三体を一撃の元に葬る事が出来ればば良いが、

 「武器庫(アーセナル)

 空間断層で二本の荷電粒子砲を防ぎながら思う。

 (向こう(ミノタウロス)がそうはさせてくれないだろうな)

 つまりは、たった一手で三体のみならず全ての敵をほぼ全滅させる必要がある。

 だが、ここは森だ。大規模過ぎる威力を用いた孅滅では木々に威力を喰われてしまう。

 故に、この場合はピンポイントの狙撃の方が威力が通りやすく、適していると言えるのだ。

 「……シスっ、『実体破壊(ブレイクブリンガー)』!」

 シスの危機だと思ったのか、アチェリーの放った魔法銃が侵入してきた極小のミノタウロスの一体を倒す。

 「よし、武器庫(アーセナル)

 考えがまとまったシスはカリバーンを振ってミノタウロスの隙を作ってそれを取り出す。

 それは、銃口が5センチ程もある巨大な拳銃。リボルバー式のセミオートマチックの拳銃で、最初に撃鉄を起こせば装弾数七発を引き金を引くだけで発射出来る。

 迷いなく引き金を引いた。




 ドドドドドドドンッッッ!!!




 と、腹に響く轟音が炸裂した。

 ベアリングのような、真球の弾が2体のミノタウロスを蹂躙する。

 地面に着弾、そして。



 全く速度を損なわず(・・・・・・・・・)跳弾する。



 七発の弾は地に、木に、ゴブリンの剣に跳弾し、次々に敵を屠っていく。

 「完全弾性衝突。衝突前と衝突後の速度の比が1である衝突だ。この状態では衝突しても速度は全く失われずに跳ね続ける。そのためには変形のためにエネルギーは使われないため、硬度が必要になる。それを受け止める強度をもたない物体は貫かれる訳だ。」

 「だから球なのね、全方位からの衝撃に強いから。……でもシス、衝突時に速度が変わらなくても、物体を貫通するときには速度は落ちると思うのだけど。さらに、いくら硬くても絶対に変形しないなんてことはないんじゃ……」

 シスの言葉に、それは言い過ぎではないかと真球の弾に敵がやられて行くのを見たリーナが言う。

 「まあ、速度についてはその通りだ。永遠に飛びつづける訳ではないが、こいつらを倒すのには十分過ぎる。そして、後者は問題無い。あの弾はマルテンサイト含有率が高い合金だ。逆変態温度が外温より低く作ってあるから変形したとしても超弾性ですぐに真球へと戻る。」

 「……どういうこと?」

 後半部分が全く分からなかったリーナがもう一度シスに訊くと、シスはニヤリと笑って答えた。

 「つまり、形状記憶合金って訳だ。戻る条件を室温以下に抑えた、な。」

 数が少なくなった魔物達を一掃するのに、あまり時間はかからなかった。



 「それよりシス、あれはどういうことなの?」

 魔物を孅滅し終え、一息ついたところでサリアがシスに訊いた。

 「あれって?」

 ナタージャが横からサリアに確認すると、

 「ゴブリンが大きくなったりミノタウロスが小さくなってたって事よ。どう考えてもおかしいでしょう?」

 その言葉にシスはワンと意見を交わそうとするが、

 「島の法則、か? ワン、どう思う?」

 「……ああ、なるほど。ん、すまん、俺は分からんな」

 あえなく挫折する。

 そして自ら判断し、言った。

 「島嶼化、だろうな。島嶼化とは、島にいる動植物が小さい物は大きく、大きい物は小さくなる現象だ。ここは北は火山、南は山脈、東西は未開拓領域という名の崖で外界と閉ざされている。島とは本来海に浮かぶ陸という意味ではない。断絶された空間という意味だ。そういう意味ではここは島嶼化を起こし得る環境を備えているのかもしれないな。」

 シスの言葉に一行は、納得したように頷いた。


読んでいただいてありがとうございます!

ブックマーク・評価がまた増えていました!非常に励みになります。

次回も頑張って更新するのでよろしくお願いします!

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