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発見の勇者

 一行は断崖を降りて行った。

 鯰の時にも使ったビトレイの足場生成と足場移動による浮遊術式によってゆっくりと下がって行く下を見ると、100メートルはありそうだ。




 「わあーー、高ぁーーーーーい!」

 「はしゃぎすぎて落ちるなよ?」

 「凄い高い……。こんな所から落ちれば命はないわね。」

 アチェリーが壮観な風景に騒ぐ中、サリアの呟きにナタージャが不思議そうに言う。

 「でもこれだけの高さがあれば、落ちるまで時間があるはずよね? 物理衝撃を逸らす魔法を使えば落下ダメージは減らせたと思うのだけど……」

 「……ちがう」

 「そんな事無いぞ。」

 同時にナタージャに言ったシスとビトレイは顔を見合わせると、ビトレイが説明を始めた。

 「……この場合……時間=√2×√100×√9.8で求められる……。結果は約2√5……五秒にも満たないから……」

 その言葉にリーナも驚いたように声を上げる。

 「えっ、この高さを落ちるのに五秒かからないの……!?」

 「そうだ。だから為す術もなく落下死したのだろうな。……わざわざそういう風に調整して確実に殺すトラップを作っている。豚鬼戦王ウォーロードオブオークが死んだあと数時間環境を書き換える魔法が残っていたことを考えると、この先に魔王が見てほしくない物があることは間違いないだろう。」

 シスの言葉に緊張が高まる中、ビトレイは呟いた。

 「……、着地まであと十秒……」




 底は、身長の数倍はある巨岩が幾つも連なる岩石地帯だった。

 着地したのは、その中でかろうじて元の地面が見えるところだ。

 着地した底の地面は、踏み固められてた。ある程度の行き来がある証拠だ。

 「アチェリー、生命の反応はどっちにある?」

 「えーと、北々東だよー?」

 「北々東……。こっちか。」

 一行は踏み固められた岩によって先も見えない道を北々東に進んでく。

 道中は不自然なほど静かだった。

 生物の気配が全くしない、ただザクザクと足音だけが響く不気味な世界が続く。

 岩を迂回するように曲がりくねる道は、待ち伏せに適していて、警戒で一行の神経を擦り減らせていった。

 代わり映えの無い景色は、この行為の妥当性に疑問を抱かせ、一行の意識を蝕んでいった。

 一時間ほどそんな気の狂いそうな道程を辿って、一行はやっと地獄から逃れることができた。




 突然、シスが立ち止まった。

 「ど、どうしたの?」

 「……?」

 心が折れそうになりながらもシスへの信頼で着いてきたリーナとビトレイがシスへ訊く。

 「着いたぞ。……とりあえず一度休もう。」

 その言葉に二人はへたりこむ。

 先導していたシスは更に後ろを振り向いた。

 ワンはなんともない。アチェリーもワンを信じて大丈夫そうだ。

 しかし。

 ナタージャとサリアが顔を暗くして無言で座り込んでいた。

 「やっぱりか。」

 「だな。」

 シスの呟きにワンが反応した。

 「いつ襲われるか分からない心理的不安と何も変わらない道。拷問の一つに何にもならない単純作業を延々と繰り返す、というものがある。それと同じだ。心理的不安と心理的圧迫で心を折ろうとしたのだろうぜ。」

 「結果、上手く行けば人は軽い鬱状態になり、無気力になって道を引き返す、か。落下死しなかった場合に備えた防御なんだろうな。」

 シスの言葉に頷くワン。

 「まあ、軽い鬱なら時間をおけば直る。少し待とうぜ。」




 リーナは周りを見回した。

 今まで複雑に入り組んだ岩の間を通って来たが、ここは違う。岩と岩の間が数十メートルあり、岩の陰であるが明るい開けた場所になっている。

 踏み固められた道は開けた場所の入口の所で途切れており、この先になにかあると判断したのは正しいと言えた。

 (だけど……どこに? 見当たる範囲に穴なんてないし、何かあるにしてもどう行けばいいか分からない……)

 リーナがそんなことを考えている間に、ナタージャとサリアが明るさの戻った顔を上げる。

 「……あれ?」

 「なにが起きたの……」

 二人が復活して少し経ち、全員の準備が整った所でシスがいう。

 「この下になにかあると思うんだが、アチェリー、生命反応はあるか?」

 「下ー? ……っ!? あったー! 物凄くたくさん!」

 アチェリーの驚きように、シスは推論を重ねる。

 「たくさん、か。『発生迷宮(ボーニングスポット)』へ魔物を送る基地の方だったか。」

 「すごい……なんで地下って分かったの?」

 「地上に心を折る細工をしていたからさ。ああいう細工はその実デリケートな調整を必要とする。そんなものと共存させて存在させるより、重ならない地下に作った方が効果的だ。」

 リーナの疑問に即答したシスは、

 「ビトレイ。」

 ビトレイを呼んで地面に風穴を空けさせる。

 「頼んだ。」

 「……うん。『1990式熱電離気体(ポインテッド)尖形射撃砲(プラズマカノン)』……発射(ファイア)



 閃光が炸裂した。



 貫通した地面の周りはオレンジ色から白っぽい色になり、ガラス質に変化している。

 一行は互いに頷きあうと、直径3メートルの穴へ飛び込んでいった。





 そこで見たものは。

 大量に整列するガラス製の大きな円柱と。

 



 その中に浮かぶ大量の魔物達だった。



 「な……、なんだこれ……」

 シスもそう言うことしか出来なかった。

 ワンも含めたその他の一行もただ絶句することしか出来なかった。


読んで頂いてありがとうございます!

次回も頑張って更新するのでよろしくお願いします!

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