攻略の勇者 前編 ウルテ密林『関の守護者』
「未開拓領域に行くにしても、まずはウルテ密林の『関の守護者』だな」
という訳で、一行はウルテ密林の最奥を進んでいた。
ウルテ密林北部はシラカタ山脈に接する北西部と、未開拓領域に接する北東部がある。
北東部目指して行く一行は、散発的に現れる魔物を倒して境界に近づいて行く。
小一時間ほど歩けば、ウルテ密林は抜けた。いや、途切れていた。
まるでここから先は異なる地域と明確に線引きしたように、そこからバイオームが変化している。
それを50メートル先に見ながら、一行は一度集合していた。
「アチェリー、頼む。」
シスの目配せに気づいたワンがアチェリーに探査を頼む。
「分かったーー!」
嬉しそうに魔法を発動させるアチェリーをみて、ワンはかすかに笑顔を浮かべる。
果たして。
「ええと……豚鬼戦王だってー! 強いのーー?」
「ウォ、戦王! 勇者が一対一でも勝てないと言われた存在じゃないの!?」
サリアが驚き声を上げるが、しかし誰も気にしていない。
それよりも議論すべきことはいくつかあった。
「あの唐突な環境の変化……C種か?」
「だろうな。ここは北度でいえばドーラ湿地と同じくらいだ、それだけでも鯰同じ程度の強さを持つと推測出来るが、さらに未開拓領域の入口だ。強化されているとみて間違いはないだろう。」
ワンとシスがそう言えば、
「C種かー、私の魔法は通じるのかなあ? 繊細織魔法で範囲威力じゃなくて貫通特化の魔法を組んだ方が良いかな?」
「……『二百砲身』だと足りない……」
後衛火力組が対策を話し合い、
「アチェリー、いつもみたいに戦場管理よろしくね? 私たちは豚鬼戦王に集中しているから、他の魔物の接近は教えてね?」
「わかったーー! キールの為にがんばる!」
リーナとアチェリーが前衛後衛間の連携を確認しあう。
「……ここにはリスクを考えられる人はいないのかしら。」
そう呆れたように呟いたサリアだが、分かっていないのはサリアの方である。
その証拠に、ワンが決定的な事を言う。
「はぁ……。勇者でも倒せない敵に……」
「何を言ってるか知らないが、それは何世代前の勇者のデータだ? 条件が揃えられていない実験データなんて意味がないだろ。それにここにいるのは誰だ? 世界征服の為の最終兵士、人造勇者、最終を打ち破った真の勇者だぜ? 倒せない理由があったら教えてほしいぜ。」
「言われてみれば……」
サリアが納得してから少し経って、一行は豚鬼戦王が書き換えた荒野に向かっていた。
荒れ果てた野には、全長2メートルを超えるであろう大きい豚鬼が佇んでいた。
右手と左手には、ひと揃いの剣が握られている。
剣はサイズから言えば、両刃大剣と言うのだろうが、豚鬼戦王が握っているのをみればただの双剣にしか見えなかった。
荒野はどう考えても豚鬼戦王に味方する。
明らかに陸戦型の豚鬼戦王が一番強さを発揮するのは開けた平らな場所だ。それなら草原でもいいはずだが、荒野というチョイスは魔物故の物なのか。
「いくぞ!」
シスのその声と共に、前衛三人が飛び出した。
今回はサリアも含めた戦闘方法の確立が目的の一つだ。
そのために、まずはオードソックスな前衛が後衛の高火力を撃つための準備時間を稼ぎ、後衛が敵を倒す、という手法を試す。
豚鬼戦王と三人の距離が50メートルを切ったとき、豚鬼戦王はこちらに気付いたようだった。
「ブフォォォォォォォオオオオオ!!」
叫びを上げてこちらに向き直ると、上体を反らす。
その姿に紅龍の火球発射モーションに近い物を感じたワンは、他の二人に注意を促す。
「来るぞ! 回避しろよ!!」
瞬間、直前までサリアがいたところを青白い光が通過した。
「なるほど、あなたの攻撃方法の一つはそれなのですね。もう当たりませんよ」
サリアが『正統剣術』によって回避する手段を確立する。
青白い光。
つまりは、チェレンコフ光。
「デザインされた方の魔力使用は、通常C種と同じ、荷電粒子砲か。」
中衛のシスが呟く。
シスが手を下さずに豚鬼戦王を倒すには、まだまだ時間がかかりそうだった。
読んで頂いてありがとうございます!
次回も頑張って更新するのでよろしくお願いします!




