決定の勇者
ちょっと短いです
「シス、とりあえずここまで、シラカタ山脈の麓近くまで来たけどこれからどうするの?」
ワンとアチェリーが警戒から戻り、この辺りに豚鬼がいないことを報告して二人が一息つく。
それからリーナはそう言った。
「どうするのって……、クラクナ火山にいって魔王を倒すのでしょう?」
サリアが不思議そうに訊くが、しかしナタージャはその意味を理解していた。
「ええと……、ここからクラクナ火山に行くには、シラカタ山脈を突っ切ってミナル森を抜ける元のルートに戻るか、未開拓領域を縦断して直接行くか、この二択になると思うわ。」
「アチェリーは速い方にすればいいと思うー!」
「速い方ね。でも危険だわ。未開拓領域はここ二年間、誰も帰って来なかった場所よ。魔王を倒さなければならない私たちは危険を犯す訳にはいかないと思うわ。」
アチェリーの意見を否定するナタージャに、しかし他の三人の言葉が反論する。
「だが速くいかないとダメだろう?」
「でも速く行くべきじゃない?」
「……速く……行かないと……」
「えーっ! でも急がば回れって言うよね? ……シスはどう思う?」
ワン、リーナ、ビトレイの順に言われたナタージャは驚きの声と共にシスへも訊く。
「未開拓領域、か。どこかきな臭いな。」
「え?」
思ってもいなかった言葉を言われて一行は黙り込む。
「俺達が魔王のいる場所を知っているのは、もちろん過去の文献もあるが、この二年間の冒険者の探索による成果によってだ。冒険者によってなんとか魔王の場所まで確認されている。一番難しいはずの魔王の迷宮がクリアーされてるのに、それ以外の何の変哲もない地域が攻略されていないというのはおかしな事だろう。」
「言われて見れば……確かにおかしいわね」
リーナが頷いた。
「確かに。そこには魔王が隠しておきたいものがあるとみて間違いないだろう。ナタージャ、『魔王覚醒』以前も未開拓領域だったのかそこは?」
ワンが肯定してナタージャに確認を取る。
「え、ええ。浅いところを隠密に長けた冒険者が探って命からがら逃げられたという記録があるわ。」
「つまり実際は有史以来未開拓だった訳か。」
シスは呟いた。
「……そこには……なにかある……」
「ああ。確定だ。」
ワンがそういい終わると同時、シスは宣言した。
「よし、未開拓領域を手早く探索しよう。」
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