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休止の勇者

 一行は紅龍(ファイアドラゴン)を倒したところで一度休憩を入れる事にした。

 マックスを撃退してから早二日。レジスタンスを作ったお偉方がいつ第二陣を送ってくるかわからないため、ウルテ密林を抜けることを急いだのだが。しかしもうウルテを密林の端近く、シラカタ山脈から紅龍(ファイアドラゴン)が飛んでくることの出来るほど近くに進んでしまったのでこれ以上進むと関の守護者(フィールドボス)に遭遇してしまうかもしれない。

 そうなる前に休息を取ることは必要不可欠であった。



 休憩中と言えども、警戒を怠って良い訳ではない。

 いつも探査魔法を使って警戒しているアチェリーこそ休むべきなのだが、豚鬼(オーク)の出るここで女子に一人で歩かせる訳にはいかないと警戒に出かけたワンに嬉しそうに着いていった彼女を止める訳にもいかない。

 座るにも都合の悪い焦土の端に移動し、倒木に座ったり木にもたれ掛かったりして休んでいるのは結局シス、リーナ、ビトレイ、ナタージャ、サリアの五人だけだった。


 「何故私はシスと善戦出来たのかしら……」

 ポツリと、サリアが呟いた。

 「どうしたの、サリア?……善戦?」

 「サリアが襲って来たときの話ね。リーナはその時気絶していたから……」

 「……、前線と言うより、……途中まで圧倒してた……」

 「嘘……!」

 ナタージャとビトレイから聞かされた自分が気絶していた時の話にリーナは驚愕した。

 対人戦闘においてリーナはシスに勝つことが出来るが、圧勝とはいかない。リーナの体感では実力は拮抗していて、運よく勝利を拾っているだけだと思えるのだ。

 「……シスの持ち札は……高火力のものが多い……。……それに星術は魔法と比べて準備時間が長いから……殺す訳にいかない対人戦闘ではシスは弱くなる……」

 「つまり、シスは対魔物の専門ということなの?」

 「いや、ちがうぞ。」

 サリアの疑問をシスは否定する。

 「俺はラザベイ・ラボトリーで対単戦闘実験体として実験に参加させられていた。別に魔物であろうと人であろうと一対一で勝つように調整されていたはずだ。……ただ俺の星術は威力が高すぎて、殺してはならないときに最適解の動きがしにくい。そういうことだ。」

 「ふうん? ということはもしシスを倒そうとした場合はわたしたち全員でかかればいいわけね。」

 「そういう訳でもないぞ。」

 「えっ!?」

 ナタージャはシスが否定したことを聞いて声を上げる。

 「だって、対単戦闘の実験に参加って……」

 シスははあ、と息を吐くとその理由を語った。

 「ラザベイ・ラボトリーは最終目的は世界征服だったと言っただろう。その尖兵になるデザインされた兵士を作るProject『Braver』に俺は所属していたんだ。ラザベイ・ラボトリーが不得意分野なんてデザインするわけがないだろう。全ての分野が上手いことが最低条件、その上にいくつ『得意』を積み上げられるかの競争だった。別に俺は対単戦闘が得意なだけで、本来はオールラウンダーだ。いやそうデザインされたと言うべきか。」

 「つまり、シスはできないことはないということ?」

 「そう。 シスに出来ない事がある訳無いわ」

 ナタージャの言葉にシスより早く答えたリーナの信頼に、シスは嬉しくなる。

 「そうだ、サリア。遠距離攻撃手段は欲しくないか? というかこの先何があるかわからないから持っていたほうがいい。」

 その嬉しさついでにシスはサリアについて思っていたことを言った。

 前衛の中でワンは言うにも及ばず、魔法剣士であるリーナも一応遠距離攻撃手段を持っている。近距離では致死的な効果を持った魔物がこれからいた場合、為す術もなくやられるだけになってしまう。また、爆発系の遠距離攻撃は合図・連絡にも使えるため持っていないと逆に不便なのだ。

 しかし、サリアの答えは、

 「ごめんなさい、シス。私に魔法は使えないのよ。」

 否定的なものだった。

 サリアもレジスタンスに入った時に一応の魔法適性試験は受けている。

 しかし、結果は適性なし。

 それは受ける前から予想出来ていたことだった。

 なぜなら魔法適性は子供のころ一度は受けているはずだからだ。

 子供のころに魔法の教育を受けていないということは適性が無いことを両親が知っていたということに他ならない。

 「……何を言っている? 遠距離攻撃手段は魔法だけではないだろう。星術銃の魔封宝石(ジュエル)を使っていないものや水晶(クリスタル)を使ったものだったら才能もなにもないだろう。構える、銃口を向ける、引き金を引くだけだ。簡単だろう? 『武器庫(アーセナル)』」

 「えっ?」

 思考が追いついていないサリアにシスはいくつかの水晶(クリスタル)を渡す。

 水晶(クリスタル)は内部に魔法を封じ込めることができる。そのため魔法が使えない=魔力操作ができない人間でも擬似的に魔法を使うことができるのだ。もちろん、使い切りや種類が限定的であるという点に目をつぶればだが。

 「今渡せるのはこれくらいだ。」

 「……ありがとう…」

 嬉しそうなサリア。それは遠い昔に諦めた希望の糸口が見えたからだろうか。

 「シス……?」

 そんな様子を見てリーナはシスを睨んだ。

 「? リーナ?」

 シスは何故睨まれたのか分かっていない。

 自分以外に宝石(魔封宝石ではなく普通の宝石という意味)を渡したのが気に入らないという女心を理解するにはシスはまだ経験を積んでいないようだった。

読んで頂いてありがとうございます!

ブクマ、評価点がまた増えていました! 

連載を始めてから最高記録です!本当にありがとうございます!

次回も頑張って更新するのでよろしくお願いします!

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