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討伐の優者 後編

 焦土。

 魔法的風水の観点から見れば、内包する属性は火、顕在する性質は土。相剋で考えれば相性は悪くなく、相生で考えれば火は土を生む。

 対して紅龍(ファイアドラゴン)の属性は風は木に含まれると考えれば火と木。火は同属性故に互いを強め、相剋では木は土に剋つため土を従えると解釈出来る。

 また、星術の観点から見れば空の敵に対して遮蔽物のない場所で戦うというのは推奨されない。敵からの攻撃を防ぐ術が無く、地上からの攻撃は重力によって減衰してしまうからだ。

 あらゆる面で紅龍(ファイアドラゴン)に有利なフィールドに書き換えられた。

 「鯰の時も覚えた魔法は周囲の環境を自分に好都合な状態に書き換えるものだったな。デザインされた魔力使用に環境を書き換える魔法を組み合わせれば、その生体系で頂点に立てるかもしれないほど強くなるな、それは。E種は必ずそういう進化をたどる、と推測するにはデータが不足しているが。」

 そんな環境、言い換えればシスに不利な環境で、シスは堂々と紅龍(ファイアドラゴン)へ歩み寄る。

 怒り心頭の紅龍(ファイアドラゴン)は既に高度50メートル辺りまで飛び上がっており、静かに、怒りを貯めるようにこちらを睥睨する。

 後ろでは、一行の戦闘をよく知らないサリアが騒いでいた。

 「えっ、シス一人で行くの!? 危険だわ!」

 「大丈夫、シスに任せておけば倒してくれるから。……やっぱりもっと強くならないと……」

 リーナの心地良い信頼に後押しされるようにシスは紅龍(ファイアドラゴン)と向き直る。

 (さて、こういうの相手だとワンのように地へ堕とすのがセオリーだが。)

 「グァガアアア!!」

 と咆哮する紅龍(ファイアドラゴン)に向けて、

 (それだと詰まらないだろう?)

 「武器庫(アーセナル)

 魔封宝石(ジュエル)を取り出した。


 取り出したのはペリドット。

 風の概念を内包するその魔封宝石(ジュエル)を操作して、シスは上空へ飛び上がる。

 「ガガァ!?」

 不思議そうにする紅龍(ファイアドラゴン)に、シスは遠慮無なく致死の一撃を叩き込む。

 「武器庫(アーセナル)……HNSC、スイッチオン。」

 内蔵された紺金の魔封宝石(ジュエル)、ラピスラズリによって高速粒子(ニュートリノ)の陽子への衝突確率が“増幅”され、連鎖陽子崩壊によって紅龍(ファイアドラゴン)は灰燼に帰す――――



 はずだった。



 紅龍(ファイアドラゴン)は無傷でそこに佇んでる。

 「不発っ!?」

 サリアがシスが攻撃をしようとしたことは分かったのか、叫ぶ。

 だがサリア以外は驚くこともなく見ていた。

 (やはり(・・・)効かないか。C種でさえHNSCを耐える魔物はいた。紅鱗は魔法の直撃を耐えることが出来るほど硬い。鱗をブチ抜くか、体内に攻撃を与える手段を使うか、どちらにするか)

 その間、紅龍(ファイアドラゴン)は何もしていなかった訳ではない。火球を何度も放つが、ペリドットを操り火球を逸らすシスには当たらない。

 「よし、面倒だし簡単にいこう。」

 シスはそう呟いてそのための準備を一言。

 「武器庫(アーセナル)…………ガーネット」

 『生成』を司るガーネット。重さに比例した魔力を使用して物質を生成する魔封宝石(ジュエル)を使って、シスは紅龍(ファイアドラゴン)を倒すことを決める。

 「紅龍(ファイアドラゴン)。元来持つ物理耐性の高い紅鱗。T種としてのHSNCを無効化するほどの魔法耐性、C種としての魔力を使った火球、E種としての環境書き換え。確かにこれほどの重装甲高攻撃力、干渉して攻撃を与えるのは難しいだろうが、それは体だけだ。生体というのは口から口まで穴が空いている。体の中だが体ではないそこには、鱗も魔法封印耐性も働かない。どっちかといえば紅龍(ファイアドラゴン)に干渉するのではなく、空間に干渉することになる。紅龍(ファイアドラゴン)の一部を基点に相対座標を定めれば、いくら動こうと外すことはない。」

 「ガアアアアアアアアア!」

 紅龍(ファイアドラゴン)は雄叫びをあげるが、言葉を言い終わると同時照準が終わっていたシスには遅く。

 「生成(フォーメイション)

 瞬間、紅龍(ファイアドラゴン)の胃のなかに生成された物質が――



 起爆した。



 「           」

 五感が消えたと感じられるほど強烈な刺激。

 一度死んだと勘違いしたリーナは、感覚が戻ってくると同時に生きる実感を取り戻していた。

 「な、にが……」

 『正統剣術(リジテマシーリピアー)』で予測するまでもなく倒れたサリアが死にそうな声をあげる。

 「っ! 紅龍(ファイアドラゴン)はっ!?」

 

 起爆の後、紅龍(ファイアドラゴン)の姿は消えていた。 のろのろと体を起こしたシス以外の一行はそうとしか理解できなかった。

 当然、事実は違う。

 消し飛ばしたのだ(・・・・・・・・)

 肉片の一つすら残さず、存在した証拠すら消去した。

 もう紅龍(ファイアドラゴン)がここにいたことを示すのは、地に刻まれた傷痕だけだ。

 ガーネットの魔封宝石(ジュエル)にある程度の魔力でここまでの爆発を引き起こす。

 「SHE(Super Heavy Element)爆弾。別名超重元素爆弾は、通常核爆弾に使われるウランやプルトニウムより重い、例えばカリフォルニウムのような放射性物質を使って作る核爆弾だ。その大きさは親指サイズにできる。そして核爆発は核物質の臨界量以上を一カ所に集まると発生する。臨界量が極めて小さいカリフォルニウムは少ない量で核爆発を起こせると言う訳だ。ガーネットで“生成”出来るような量でな」

 「あ、あの紅龍(ファイアドラゴン)をこんな簡単に倒した……?」

 シスの説明に、呆然とした様子でサリアが呟いた。

読んで頂いてありがとうございます!

前話、前々話とルビがおかしかったのを修正しました。

次回も頑張って更新するのでよろしくお願いします。

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