聴衆の勇者
マックスは敗れた。
しかし、そもそもの疑問がある。
なぜ、サリアやマックス達はリーナ、つまり勇者一行を追ってきたのだろうか。
ラザベイ・ラボトリーの行為を偶然知って、追い掛けてきた一般人だろうか?
否。それは有り得ないのだ。
ラザベイ・ラボトリーの情報隠蔽能力は、たとえ『魔王覚醒』以前、人類の最も繁栄していた時の情報機関が束になっても公表している情報以上の物は手に入らないだろう。
それは、辞めた研究員はおろか、処分された被実験体ですら見つからず、実験体を逃がさないために無駄に強固な入出管理システムが脱出をはおろか侵入さえ許さない。
つまり、ラザベイ・ラボトリーから情報を取得するのは不可能といえる。
そんな不可解な状況の説明を、マックスが裏切った次の日の朝、サリアは説明した。
どうやらサリアはシスのことを完全に信用したらしい。
「私があそこ、レジスタンスに入ったのは、私の夫と子供……さらにいえば私の住んでいた村人全員が行方不明になって三ヶ月後くらい、今から一年ほど前のことだったわ。私は川へ水汲みに行っていた間にいなくなったの……
あるとき、セントラルになんとか移住できた私の家に、小包が届いたの。
そこには、子供の靴と、夫の結婚指輪が入っていたわ。
同封されていた手紙には、二人は人間としての尊厳すら守られず死んだ、とあったわ。更に、二人を殺したのはラザベイ・ラボトリーだ。復讐したいという気持ちがあるならば、一緒に行わないか、ともね。
私はその申し出にすぐに飛びついたわ。私から愛しい人を奪ったのなら、許すわけにはいかないもの。
手紙の指示に従ってレジスタンスに入って、戦う訓練を積んだのよ。私には運よく『正統剣術』の才能があったらしくて、すぐに強くなれた。レジスタンス内の地位も上がった。魔法? ただの市民だった私に才能があるはず無いでしょ? 私が入ったのと同じくらいに、マックスも入ってきた。レジスタンスの中では一番頭が良かったから作戦立案役として同じように地位を高めていっていたわ。
そんな中で、不思議なことに手紙の贈り主はいつまで経っても現れなかった。ただ、その時点でレジスタンスのリーダー的立場にいた人にどうするか手紙が来ただけ。
……私たちはその手紙に従って、ラザベイ・ラボトリー内の実験体に接触を試みた。30会ほど試行して、ようやく一人に手紙を届けることができた。その人からラザベイ・ラボトリーにダメージを与えられそうな情報を聞いて、リーナが人造勇者という情報を手に入れることができた。そうして、あなたたちを倒してラザベイ・ラボトリーへダメージを与える、という計画が出来上がったのよ。」
「なるほど、そういうことか」
サリアが話終わって、シスはそうつぶやいた。
「シス、どういうこと?私は誰がサリアさんに情報を与えたか全くわからない…」
「恐らく、王宮の大臣の誰かだな。ラザベイ・ラボトリーがは王宮から依頼を受けて対魔物用の対処法を研究しているという面を持つ。何回か実験体の戦闘演習を含めた深いところまでみた奴もいる。大臣内で共有されたその情報に反感を抱いた者が主導したんだろうな」
リーナの疑問を、シスが言う前にワンが答えた。
「だろうな。そうでもないとあれだけの揃った鎧、剣は用意できない。レジスタンスはこの王国の組織という訳か。目的がラザベイ・ラボトリーを潰すことなら協力出来るかもしれないが。」
「それよりも一つ聞きたい。……ラザベイ・ラボトリー内の情報提供者はだれだ?」
ワンの問いに、サリアはあっさりと答える。
「ええと、ファイブ。フブって名乗っていたわね。」
「……!!」
「……!!」
(フブ…?お前なのか?)
ワンとシスが驚愕する中。
サリアは更に驚くことをいう。
「私も魔王を倒す旅に参加するわ。レジスタンスは壊滅したし、あそこを倒すにはそれが一番早そうだからね。」
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