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終戦の勇者

 「キール……」

 アチェリーは一心不乱にその様子を眺めていた。

 蹂躙される男達の顔は恐怖に歪み、ただ二人の行動に対処しようと、対応しようと、反応しようと攻撃を試みる。

 それは自負も あったのだろう。

 相手がどんな魔法を、星術を、どんな想定外の、規定外の、情報外の術を使っても、魔法も星術も持たない者でも真正面から勝利する。

 それが『正統剣術(リジテマシーリピアー)』の戦法なのだから。

 それが。

 その自負と技術と対応が、ことごとく撃ち抜かれる。

 真正面から、そう 『正統剣術(リジテマシーリピアー)』への皮肉のように。

 キールの放つ衝撃が、アチェリーを苦しませてきた者達をなぎ払うその光景に。

 アチェリーはその者の名を胸に呟いて安心する。

 (キール……)




 アチェリーの住んでいた村は『魔王覚醒』に際し、セントラルに村民全員で引っ越した。

 いや、引っ越そうとしたのだ。

 魔物の出現も多くなり、冒険者ですら歯が立ちにくいテンパード種の出現によって冒険者以下の戦闘力しか持たない村の狩人だけでは村の維持が難しくなっていたからだ。

 だが、その時点でセントラルは世界で数少ない現存都市になっていた。

 当然セントラルにも人口のキャパシティはある。よって、より遠くから来た人間を優先的に受け入れる事はセントラル内で確定になっていた。

 そんな中。、セントラルから5キロ離れていないユルデカの村が受け入れられる訳が無かった。

 あの男ーマックス・ピトレイドが現れたのは衛兵にそんな説明をされ、絶望に彩られて帰路を辿っている時だった。

 マックスはこう言った。

 「俺の指示に従ってくれるのなら、お前ら全員壁の中に入れてやる。」

 ユルデカの村の村人達に拒否権は無かった。壁の中に入らなければ、そこに待っているのは緩慢な死。それを回避できるのなら、どんな事でもできる。

 村人たちはそんな思いでマックスに飛びついた。




 マックスの指示で勇者と同い年の、女性でかつ狩りの腕が高い者、つまりアチェリーが更に戦闘訓練を受けさせられた。

 更にさりげない遭遇を演出、勇者ゼニール・エクリプス・リーナ・オクタビアと接触、好感を懐かせる。

 あとはマックスがいかなる手を使ってか、アチェリーを勇者一行に加えさせた。

 そして出された最後の指示。

 勇者を監視し情報をこちらに流せ、と。





 男達、さいごの一人が沈黙した。

 「ひ、ひぃぃいい!!」

 残るは一人、マックスのみ。

 無様にしりをつき、震えながら後退しようとする。

 「あれだけ、あれだけいた『正統剣術(リジテマシーリピアー)』の騎士たちが……!!」

 だが、マックスは決して命乞いはしなかった。

 醜い矜持だけは残っているのだろう。

 「マックス……」

 キールが左掌を下に向けて構える。

 「一度その性根、叩き直せ……『開放(バースト)』」

 たったそれだけで、アチェリーの絶望の象徴は昏倒した。

 「キール、キール……あり、がとう……」

 アチェリーの頬に水滴がたれた。

 これでもう良いんだ。

 辛い指示に従わなくとも。

 裏切っているという感覚に苛まられなくとも。

 旅の途中に心がチクリと痛まなくとも。


 もう、終わったんだ。



 「ああ(゛゛)あああああああ(゛゛゛゛゛゛゛)

 止めどなくアチェリーの目から水滴が流れる。

 (アチェリーは、アチェリーは……キールが、好きなんだ。アチェリーの、アチェリーだけの騎士……)

 騎士は、助け出した姫の所へ行く。

 騎士は、少し迷ってからこう告げた。

 「これで、悪夢のお終いだ。さあ、行こうか」

 「()ん」

 姫は、涙ぐみながら、しかししっかりと頷いた。

読んで頂いてありがとうございます!

遅れてすみません。しばらく最低週一の不定期更新が続きますが、お願いします。

次回も頑張って更新するのでよろしくお願いします!

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