全滅の勇者
揃った鎧を着た男達が、揃った片手剣を握り、足並みをそろえて包囲するようにゆっくりと迫ってくる。
「……?」
アチェリーを中心に守るようにエンジンを組み直す中、シスは疑問を抱く。
(武器が揃っている…? 人間はそれぞれ特性がある。一律に同じ武器を渡すのは指揮者から見ればコストダウンだが、総合的に見れば戦力ダウンだ。…それに、魔法による遠距離攻撃がない?)
ざっと見て30人はいるだろう、包囲する男達はその包囲円にサリアから逃げ出すように近づいたマックスを加えると、一旦止まる。
続いてシス達の円陣に入ってきたサリアが、シスの横に立って言った。
「彼らは全員『正統剣術』の有段者なのよ。もちろん、私ほどではないけどね。シスにとっても倒すのは難しいかもしれないわね。」
その言葉でシスの二つ目の疑問が氷解する。
『正統剣術』は、魔法も、星術にさえ才のない者が、それでも才のある者に戦いで勝ちたいとできた剣。なれば魔法は使えるはずがないのだ。
マックスはサリアに気圧されたショックから少し回復したらしく、嫌みの残る声で指示を出す。
「さあ、ラザベイ・ラボトリーを憎むフリをした裏切り者を、そしてラザベイ・ラボトリーに与する者を討ち滅ぼせ!!」
おおおおおおおおお!!
と鬨の声を上げて突撃しようとする男達。
個々人の特性をも覆す流派の練習が裏打ちする凶刃がシス達に向かう。
しかし。
「武器庫」
シスの声が響く。
取り出したのは四角錐のような星術銃。いくつもあるそれをポンポンと男達に投げつける。
「……!?」
男達が警戒する中、まだ食う竜にあるそれは大音量で可聴域外の超低温を撒き散らす。
同時、男達の動きが鈍くなった。
「インフラサウンド。二回目だからリーナには説明不要か? 内蔵を揺さぶり最悪死に至る近く不能な音の攻撃だ。」
「あいつだ!あいつを狙え!」
マックスではない、男達のリーダーらしき男がこの攻撃をしたシスを人数のいる内に集中撃破しようと指示を出す。
「正解。確かに俺は勇者で一番強い。狙うべきは俺、と判断したくなるのは分かるが…」
瞬間。
男達の背後に影が現れる。
「今回の主人公はワンなんだよな」
「開放」
右手の掌を下へ向け、たったワンが爆発を引き起こす。
ワンが起こす爆発の中では小規模な爆発は、計10人以上を薙ぎ払った。
その中で運の悪い3人ほどは気絶し戦闘不能になる。
「「な……・!!」」
マックスとサリアが絶句した。
『正統剣術』の有段者がこれだけ簡単にやられ田のことがよほどショックなのだろう。
だが。
((簡単な問題だ。))
シスとワンは思う。
((検知できない人物からの、予測できない攻撃をよけられる人間。そんな者は存在しない。いるとしたら……))
(あいつくらいだ。)
(あいつくらいだ。)
サリアは言った。
「術者が視認できる状態にいるならば、意図を読んで遠距離攻撃を回避する」
では、術者の分からない遠距離攻撃は?
サリアは言った。
「術者が死なない自爆は術者を守る仕組みを利用して回避する」
では、利用できない仕組みなら?
先生で無視のできない攻撃を放ち。意識の焦点をシスに固定し、逆にシス以外に注目できないようにして。
爆発のエネルギーをその波長に合わせて体を動かし受け流すというマネどころか利用さえできない方法で攻撃を放つ。
いかに対策を練った『正統剣術』といえども、対策の穴……いや対策のその上に行かれれば為す術もない。
『錬式』の爆発を受け流せるのは二人。
シスとワン、二人に翻弄される男達の全滅は近い。
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