混乱の勇者
「マックス…!」
「団ー長。あんたは吐き気がするほど生ぬるい。口ではあそこ倒すと言いながら、そこにいるエセ勇者とやらの言葉に共感し、信じている。……あんたは本当にあそこを滅ぼしたいと思っているのか? ただのポーズに俺は見えるんだが。」
「……」
「何も言い返せないか。ということはやはりポーズで、本心から倒したいと思っているわけではないんだな。」
「…違う! それは…それはシスが強かったから……!」
「…シス? 随分と仲良さげだなあ。…それで? あいつが強い? だから和解という選択肢を取る? おかしいだろう、本当に思っているんなら相手がどれだけ強かろうと関係ない。たとえ自分が絶対に敵わないとしても、思っているんなら打ち破れて死ぬべきだ。だがあいつはそうじゃない。怪物でも化物でもない、ただの人間だ。お前と相討ちになる程度の人間だ。もしお前が倒れたとしても、後ろの人員すべてを回せばあいつらの中で一番強い奴をお前が倒したんだから制圧は簡単だ。」
「……」
「だが。」
マックスは叩きつけるように言う。
「だがおまえそれをしなかった。お前は、本当に思っているのか?」
「……わたしは…」
「アチェリー……!?」
シスは珍しく混乱していた。
シスの中ではビトレイ、アチェリーは普通の民間人と認識していたからだ。
これではラザベイ・ラボトリーと関わりがない一行のメンバーが一人しかいなくなってしまう。
それは別に特別な意味を持つわけではないが、ランダムで選ばれるはずの一行のメンバー、そのほとんどに関係があるラザベイ・ラボトリーの影響力を考えると恐ろしい。
「シス…、落ち着いて」
リーナが優しくシスに声をかける。
その言葉にシスは必死に思考を立て直す。
(そういえば旅の最初、アチェリーが何か思わせぶりな事を言っていた……。最近は聞かなくなったから偶然だと判断していたが、感じさせないで訊くのに慣れただけだったのか!)
シスが歯噛みする中、ワンがアチェリーに声をかける。
「…アチェリー……?」
「……、…、……」
そこで初めてアチェリーに反応があった。
「アチェリー、なんでそっち側にいるかは知らないが、こっちへ来い。アチェリーは今までそんなことをしていて辛くなかったのか? もう大丈夫だ。お前が好きでやっているなら良い。だがそうでないならこっちを頼れ。一度裏切っていたオレが言うのも何だが、オレがそこから引っ張り出してやるから。……一言。たった一言で良い。返事をくれ。それがアチェリーが好きでやっているのかどうか。」
「……アチェリーは…」
そして。
二人の声が響く。
「……私のこの思いが、この気持ちが、この憎しみが、偽物だというのか、マックス。本当にお前がそう思っているなら、厳罰に処さなければならないな。母と、夫と、息子と、娘を殺した敵を憎む気持ちが偽物だというならなあ!」
「…アチェリーは本当はこんなことしたくない! みんなと罪悪感を持ったまま付き合いたくない! だから……、だから助けてよ! 助けて、キール………!!」
「なっ!!」
「分かった。」
瞬間。
全く正反対の答えが響く。
周囲から金属音が聞こえる。
マックスが何らかの指示をしたのだろうか、周りに潜んだ敵が攻撃をしようとする音だ。
その間隙を縫ってシスはワンに言う。
「ナイスだな、ワン。どこまで狙ったんだ?」
「全てさ。アチェリーがオレに淡く恋心らしきものを抱いている事は把握していた。アチェリーがそれを自覚していたかどうかは別としてな。無意識にそういう考えがある状況下でああいうことを言えば自ら本当の気持ちを教えてくれると予測しただけだ。」
ワンの答えにシスは悪戯を仕掛けるように言う。
「その予測とやらで、この後どうなるのかわかったのか? 恐らく、いや確実に今回でアチェリーは自分の恋心を自覚するぞ?」
「そうだな。……その場合にはオレがアチェリーを連れて行ってやるだけさ。一生かけて墓場までな。」
「……お熱いことで。」
シスがちょうどその言葉を言い終えるや否や、マックスとお揃いの、しかし高級感は劣る騎士鎧を着た者達が姿を現す。
「さて、さっさと何とかするか、ワンとアチェリーのために。」
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