術中の勇者
「まずは私の名前から言わせてもらうわ。私はサリア・スラーンド。こっちは……」
「マックス・ピトレイドだ。よろしく」
夜。
豚鬼は夜行性ではないのである程度安全なウルテ密林、シスと女性―サリアが戦った場所で焚火をたいて、二人はそう自己紹介した。
昼の間にシスへ提案した話、それを話すための前準備である。
「観念したな…。さっさと話せや。」
微妙に殺気立っているワンが話しを催促する。
「どちらかと言うと俺が強くて全員倒すことを諦めた感じだな」
アチェリーが周りを警戒しながら、ビトレイが魔法銃・星術銃をすぐに取り出せるような体勢になりながら、一行はサリアとマックスの話を聞く。
「まずは謝罪ね。ごめんなさい、あなた達を襲ったりして。」
「まあ団ー長にも意図があったんだ。それを説明するってんだから許してくれ。」
「意図、ねえ。最初にラザベイ・ラボトリーの信用を失墜させるためみたいなことを言っていたが、後で聞けばいいと思ってあんま聞いてねえな。どういうことだ。」
ワンが思い出したように言った言葉に、サリアが頷いて続ける。
「今回この対外的には勇者一行とされているあなた達を襲ったのは、そのとおり、ラザベイ・ラボトリーにダメージを与えるためよ。ラザベイ・ラボトリー内で行われていること、その企みを阻むことで、外から見たラザベイ・ラボトリーは何の成果も出せないところになる。そうなるためにいまラザベイ・ラボトリーが直接手の届かないところにいるProject『Braver』の面子を狙ったのよ。」
「ふうん、つまりはラザベイ・ラボトリーを世間的に役立たずにさせたかったわけだ。そんな策でラザベイ・ラボトリーが困るとは思えないけどな。」
「まあそう言うなよ。」
ワンが冷酷に下した評価に、マックスが言う。
「それで、本当の…というか、目指している最終的な目的は何なんだ?」
「「「…?」」」
その次にシスが発した言葉にサリア、マックスが苦々しげな表情を浮かべ、シスとワン以外がクエスチョンマークを頭に浮かべた。
「俺たちを襲ったのがラザベイ・ラボトリーにダメージを与えたい、という理由なら、ラザベイ・ラボトリーにダメージを与えて何をしたいんだ、ということが疑問になる。まあそんなことはいくつか予想がつくんだが、どれなんだ?」
「そういうことね…。さすがシス、私が気付かないところまで…」
リーナが遅れて質問の意図に気付く中、サリアは重い口をしぶしぶ開く。
「ラザベイ・ラボトリーの破壊、または閉鎖よ…。……あそこは存在してはいけないのよ…」
「つまりは反ラザベイ・ラボトリー勢力ということか。……俺と同じだな。」
「……えっ?」
シスの答えが意外だったようで、サリアは間抜けなように声を漏らす。
「当たり前だ。あんな所在っていいはずがない。知らなかったのか? 俺はラザベイ・ラボトリーから脱走した身だぞ。そもそも脱走したときはProject『WC』に所属していたんだ、Project『Braver』の任務に同行しているのはおかしいだろう」
「…そうなのか…じゃあ協力を聞いてみても…」
「団ー長。あっちが嘘をついている可能性も考えてくださいよ。」
「……そういえば」
サリアとマックスがなにやら話しているときに、ナタージャがふと気がついたように訊く。
「サリアとマックスはどうやってわたし達の位置を知ったの?」
「「「「「……!!」」」」」
戦慄した。
シスは己の直感に従って周りを見渡す。
夜のためそう遠くまでは見渡せないが、それでもそう遠くないところに感じる。
人の気配を。
「アチェリー…!?」
この距離まで近づかれてアチェリーが気付かないわけがない。
そう考えてアチェリーへ声をあげながら目を向けると。
少し悲しそうな、そんなほほえみをかすかに浮かべながら全く探査魔法を使っていないアチェリーがそこにいた。
「団ー長。ラザベイ・ラボトリーの崩壊という目的の為なら、敵と和解してる場合じゃないんですよ。内通者に気付いていなかったのは驚きですが、それならそれで利用しないと。さあ、勇者一行を皆殺しだ。」
「マックス…!!」
人におぞましいと思わせるような笑みを浮かべて、マックス・ピトレイドはそう宣言した。
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