対抗の勇者
言葉に任せて地を蹴ったシスだが、実はそこまで有効な策を思いついていたわけではなかった。
(さて、どうしようか…)
シスは考えながら『カリバーン』を振るう。
「………」
女性は平静に、冷静にシスの動きを追い続ける。
互いに互いの剣をぶつけ合う二人だったが、こと剣の面だけで見ればシスが不利だった。片手直剣『カリバーン』は女性の持つ両手剣に重さで負ける。
更に、シスの剣は流派で習ったものではなく、野良剣術だ。きちんと積み上げられた『正統剣術』には劣る。
―――それは魔法併用前提の剣を、併用しないで転用した故の問題なのか。
「『武器庫』」
空間断層で女性の剣を防ぎ、取り出したのはその手に掴める量の一センチほどの萌葱の水晶。
『カリバーン』を横薙ぎに対処している間に地にばら撒こうと…
「!!」
「はっ!」
横薙ぎをしゃがんでかわした女性が、キラキラと宙を舞う水晶を剣の腹で弾き返す。
その衝撃で小さな『暴風結晶』は起爆風が吹き荒れ、下から突き上げるように風を食らったシスは溜まらず吹き飛ばされる。
(地雷を設置させてくれないか…)
地雷は踏んだ場所、踏んだ時に炸裂する為ずらす事が難しいと思ったのだが、それを許すほど女性は弱くない。
(…『滅魔帝』を使うか…? いや、人相手に使うのは…)
僅かに逡巡するシス。衝撃を殺して着地し、再び剣を構えて相対する。
「手本を見せると言った割にはなんと言うことはないね」
「今のは単なる確認だよ。『武器庫』」
シスは地を蹴り、女性は悠然と両手剣を構えて撃退の構えを取る。
「『武器庫』」
「……」
激しく剣戟が繰り広げられる。
上段より叩きつけるように振り下ろした『カリバーン』は甲高い音を立てて守られるのではなく弾かれるのではなく、ただ流される。
返す刀で迫る両手剣を強引に『カリバーン』を振って軌道をズラし避ける。
「『武器庫』」
「……」
取り出したのはルビーの魔封宝石。久しぶりに魔法らしい使い方をするな、と思いながらシスはルビーの魔力を操る。
半径五メートルの地面が、仄かにしかし確かに光る。
ルビーと同じ、真紅に。
瞬間。
強引に互いの剣が当たり、ともに体勢が崩れた状態で。
炎の姿さえ消し飛ばした膨大な熱量が半径五メートルの円の中に噴出する。
急激に加熱されたせいか、爆発的に空気が膨張する。
メキメキと、周りの木が根元から折れていく。五十メートル先の木も倒れた。
圧倒的な攻撃。
『正しい場所』の範囲をケタ違いに増やす範囲攻撃。
(…、こんなの…避けれるはずがない…)
ビトレイは思う。
自らの中心とした起爆。更に、起爆までの時間で避ける事の出来る程度の範囲ではない攻撃。
「…、…」
しかしシスは油断なく周りを見回し、反撃に備えている。
(…出来る訳無い…と思うけど…)
瞬間。
「っ、!『武器庫』!!」
シスが、空に向かって空間断層を張る。
同時、両手剣をその持ち主が空間断層に衝突する。
質量かける重力加速度かける時間分の運動量がシスにぶち当たる。
「ぐ、がぁぁぁぁあああ!!」
とてつもない加重を耐え切り、シスは女性を地へと滑らす。
着地した女性は完全に無傷だった。
「…『正統剣術』の基本にして極意、その十二。”非自殺型自爆は術者を守る仕組みがある。それを利用し回避せよ!! ……その手法は無駄なようね」
「…そうだな」
シスは次の策を練り始める。
その隙間を埋めるように、大量の炎弾を放つ。
だが無意味だ。
『正しい場所』をずらされた攻撃は女性と別の場所を貫き。
『正しい時間』をずらされた攻撃は女性が行く場所、居た場所を抉る。
全て、女性の障害にはなりえない。
明かに、シスの不利だった。
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