理解の勇者
ワン。
ラザベイ・ラボラトリー、世界征服を企むProject『WC』所属、序列一位の実験完成体。人類最巧の最巧傑作。
女性。
何故かラザベイ・ラボラトリーの内情まで知っている謎の女性。扱うのは両手剣だが何らかの流派に属しているのか。
勝敗は明らかに思われた。
ワンが女性を瞬殺し、女性がワンに敗れると思った。
女性と、女性を団長と呼ぶ男以外は。
「『分解』…『開放』」
ワンが突っ込んでくる女性の背後の空気を分解、空いた穴へ流れ込もうとする空気が女性の速度を鈍らせる。
次の瞬間、眼前に極みの爆発。その極小規模なものが放たれる。
(終わった…)
誰もがそう思った。
次の瞬間、その予想通り一人が地に伏せた。
剣を水平に寝かせ、首を叩いた女性の足元に、ワンが。
「「「……!!」」」
衝撃が走った。この面子でシスの次あたりに近接戦闘に強いワンが倒されたことに驚きを禁じえなかった。
「選びなさい。全員私に打ち倒されるか、自ら旅を止めるか、どちらかを」
「勿論、貴方を倒して旅を続けるほうよ」
女性の言葉に、リーナは両手剣を抜いて応じる。
リーナはやや前傾気味の中段、対して女性は真っ直ぐ、どこにも力をかけすぎることもなくしかし必要な力は全て必要なだけ入れた状態でリラックスしたように同じく中段。
数瞬の静寂の後、リーナのほうが一瞬早く地を蹴る。
前傾中段をそのまま突き気味の構えを転化。四方八方へ撃たれた炎弾が曲線を描いて収束し女性に襲い掛かる。
魔法と剣術の『型』に沿った単純な攻撃。
互いに魔法を用いて防ぐが、通常のその型を、その女性は。
流れるように一歩前に進み、リーナの剣を弾き防御して逆にリーナを炎弾の焦点へと誘導する。
体勢が崩れた上に炎弾への対処をしなければならないリーナに向かって、速術で体の前後を入れ替えた剣が迫る。
「……!!」
「はっ!」
かろうじて防いで場所を入れ替わるように距離をとるリーナ。
(『型』は通じない…、初見でも全て対処される)
ならば、接近して乱戦に持ち込むしか勝機はないと考え、再び地を蹴るリーナ。
愚直なまで真っ直ぐに接近、逆に不意を疲れたか間合いに入って剣戟の音を響かせる。
同時に『平行魔法』をスタンバイさせ、リーナの最適化された動きが女性に攻めかかる。
激しいリーナの攻撃を冷静に裁く女性に、リーナは全身を凍結させる魔法を『平行魔法』で放つ。
シスでさえ囚われたその氷獄を。
女性は左に一歩動いて回避する。
「……!?」
「……」
リーナの驚愕に、今度は女性が責め立てる。
女性の剣を防ぎながらも、一瞬の空白で『型』、接線中に『平行魔法』と魔法反撃しても、悉く躱される。
魔法を封じられたリーナが剣に競り負けるまで、さほど時間はかからなかった。
「……」
黙ったままのシスに、リーナに奇襲、 一切使わず真正面から勝利した女性が言う。
「…さすが実験体。私の流派を知らないようですね。知っていたなら最初の男が負けた時点で降参していたでしょうし。…私の流派は『正統剣術』と呼ばれる、最強ですらない、極高の流派です。私に勝ちたいなら同じ『正統流派』の私より高位の剣士を連れてきなさい」
「正統な剣術、ね」
女性が言い終わって数秒、シスは言った。
「魔法や星術が生まれて数千年、当然剣術も、魔法を扱えず星術の才がないものの力も、相手がそれを使ってすら勝つことの出来ないレベルの『強さ』を目指したと言うわけか。その真髄はズラし。攻撃は『正しい時間』に『正しい場所』へ行わなければ意味はない。それは魔法にも星術にも言えることだ。その片方、または両方をズラすことで自分が対処できない攻撃を躱している、と言うことだな」
「…、…」
「そのためにはタイミングの把握が必要だ。『正しい場所』のほうは直前まで自分がいた場所だから問題ない。だから古くから伝えられてきた『魔法攻撃に共通する事前動作』やら『相手が事を起こす前兆』やらをキャッチする努力を積み重ねてきた、と言うことかな」
「初見でそこまで見破る人は始めて。…腐っても、あそこの実験体と言うことかしら」
自分の手の内が見破られた、と言う割には表情を変えない女性。
「さて、どうやればいいのか手本を見せよう」
『出来るかしら?』
激突が、始まる。
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