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回想の勇者 ⑨

 ところで。

 「そういえば、ここってどこなの…!?」

 ナタージャが叫んだ。

 そう、現在地がどこなのか分かっていないのだ。

 流され、彷徨い歩いたこの地点の座標は、全くといっていいほど分からない。

 「シスが壊されなければ現在地が分かる道具もあったんだけどねぇ」

 ワン(・・)が行った。

 「いや、お前を蛸殴りにしたのは俺ではないんだがな…」

 「シス…。なんでキ…ワンがいるのよ…?」

 リーナが疑問の声を放ち。

 「……(コクコク)」

 ビトレイも同意の声を上げる。

 「いや、殺すのも抵抗されて面倒だし、このパーティーとして見ても前衛職が一人減るのは結構な損害だ。”生成”を司るガーネットの魔封宝石(ジュエル)で構造構築を阻害する首輪を作ってワンにつけておいた。まぁあいつのことだから着けていても小規模な魔法は使えるだろうが、俺やリーナを傷付けるような出力にはならないはずだ」

 「むむむむ…」

 「……」

 シスの言葉に考え込む二人だったが、少しして納得した様子だった。

 「それで、シス。どうするの?」

 シスが勇者という事がわかった今、旅のリーダーをシスに戻そうとするリーナの声に、シスは従って言を紡ぐ。

 「川は大体南東から東南東へと流れていたはずだ。ドーラ湿地からクラクナ火山までは北東から北北東の方向だったから、とりあえず北へ進もう」

 そうして一行は北へ進んでいった。



 そんな中、リーナの心中は穏やかで入られなかった。

 シスの前では(・・・・・・)何もない様に装ってはいるが、心の中は一つの事に占められていた。

 つまり。

 (シ…シスが私のこと好きだって…! 私、私、なんて返事を言ったら良いんだろう…!!)

 ということだった。

 そう、昨日の話の中でシスはリーナに一目ぼれをし、ソレが理由でリーナを護ろうとラザベイ・ラボラトリーから脱走したといった。

 重く、怖い話というイメージとインパクトが先行していたが、よくよくシスの話を思い返してみれば、シスのリーナへの思慕が語られていたのだ。

 昨日の夜、毛布に包まってシスの話を反芻し、考えているうちに気付いたこれは、気付いたはじめリーナの心臓を勢い良く跳ねさせた。

 何度も何度も振り返って、ソレが自分の思い違いではないと確信し、ナタージャにも聞こうと思ったが思いとどまって、漸くリーナはそれを本当のことだと受け入れることが出来た。

 以来、リーナの鼓動は普段の数倍のペースで脈打っている。


 一行は周囲を警戒しながら進む。

 先陣を切るのはワン。その後ろのワンの監視と敵襲への対応の為シスが詰める。その後ろのは探査魔法を扱うアチェリー、更に後ろにビトレイが後方を見据えながら後ろ歩きする。進行方向を正面に見て左側はナタージャ、右側はリーナが用心し、茂った森の中を進んでいく。

 「北西百五十二メートル”豚鬼(オーク)”三、南南東八十三メートル、同じだよー!」

 「その距離ならこの森では視線は愚か、敵として認識することすら不可能だろう。無視して進むぞ」

 (…、こう見てみるとカッコ良すぎる訳ではないけど、それでも良い方だよね…)

 リーナは後ろからかけられた声に対し視線の向きを一切変えず、警戒を続けるシスの横顔をそっと見上げる。

 シスの顔はリーナの言うとおり、冒険端のヒーローというまでは行かないが、しかしそれなりに整っている…のかもしれない。鋭い眼光や粗野といえなくもない顔のパーツなどもあるのだが、そこはそれ。乙女補正で何とかなってしまうレベルのものらしい。

 (結局、私はシスのことをどう思っているのかな…?)

 リーナは改めて確認した顔から目を逸らし、自らの思考に沈んだ。

 (私は…、シスを信頼していることは確か。シスのことは信用できるし、好ましいとも思う。でも、それが恋慕かって言われると…、あれ? 何でだろう、これを恋心ではないと認めたくないと、私思ってる? シスに対して恋してる…? ちょっと待ってちょっと。よし、信頼できることイコール恋心ではないよね? …でもあれ? 子、恋人同士が信頼するのは当たり前だよね…?)

 ごちゃごちゃと考えているうちに頭がこんがらがってしまうリーナ。しかし、リーナのそれが恋愛感情であるかどうかを確かめるすべを、リーナは直に思いつく。

 (よし、シスが他の人と一緒に暮らしている様子を想像してみよう。それで簡単に分かるはず!)

 それが最大級の反動を生み出すとは、知らずに。



 新築二階建て、薄いライムグリーンに朱色の屋根の家。

 暖かいリビングは大きなソファと本棚などが並び、リラックスできる空間を創っている。

 黒色の、ゆったりとして二人がけソファの片方に座るシス。 

 その表情は穏やかで、優しそうだ。

 ふと、シスが笑う。

 暖かな、そう、幸せに満ち溢れた。

 シスの横に、女性が座る。

 シスはその女性の肩を抱き、そして…



 (嫌だ…)

 気持ちの奔流が。

 (嫌だ嫌だ何でそこにいるのが私じゃないの? 隣にいるのが私じゃないの? 抱き寄せられているのが私じゃないの? 嫌だイヤだいやだいやいやいや…!!)

 リーナの心を越えて流れ出す。

 「リーナ?」

 「…っ! な、なに? シス」

 「いや、ものすごい形相で空中を睨んでいたから、何か見つけたのかと思ったが、違ったか?」

 シスの声でリーナは我に帰った。

 「う、ううん、なんでもない! ちょっと思い出してただけ」

 「それならいいが」

 リーナは理解した。

 (そうか…。私はシスが、好きなんだ)



 「団ー長っ、みつけました」

 「なら行くわよ。あそこを滅ぼす為に」

読んで頂いてありがとうございます!

次回も頑張って更新するのでよろしくお願いします!


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