回想の勇者 ⑦
「…、……」
俺はいつもの部屋で目を覚ました。
「どうなったんだ…?」
俺の記憶にはフンと戦い、最後に感覚に貫かれた所で終わっている。最後は普通考えないような、やらないようなことをした憶えもある。
扉に刺さっている箱の中から、透明な袋に入ったパンや紙でできたパックに入った牛乳等を取り出す。これが食事だ。
俺はこの一年で慣れた手つきで袋を開け、紙のパックにストローを突き刺す。
それらを腹に入れてから、俺はもう一度ベッドへ潜った。
違和感に気づいたのは朝だった。
村にいる頃からの習慣で、起きたら魔力操作の練習…というか確認を行う。魔力の具合を確かめるのだ。
違和感はぼんやりと頭にあったが、俺は特に深く考えることはしなかった。
数時間たって、端末のスケジュール通りに俺は護送される。
いつもと同じように、真っ白な部屋に入らされる。
ピッ、と音を立ててロックが外れた首輪を横合いに投げ捨て―――
強烈な違和感に溺れた。
何かがかけている感覚。今まで確固にあったものが煙のように消えた予感。
そして、生存本能が大音量で警鐘を鳴らす。
「っ…」
冷や汗が流れる。
今まで自分の強さを形作ってきた、自分の生命線を預けていたものが、使えなくなる。
そんな気がしてならない。
ダラダラと、気持ち悪い汗を流しながら体内の魔力に意識を向ける。
魔力を操作する。体内で構造を与える。
そこまで滞りなく実行できて、俺は安堵した。
魔法を扱うに一番大切な所をクリアできたからだ。
形無き魔力に構造を与えるのには特有のコツがいる。これを習得できるかどうかで、『不適合者』が毎年多く出るほど、そのコツを得るのは難しい。
思い当たる原因はフンとの自らの精神を巡る攻防戦くらいしかないが、直感の通り魔法が使えなくなったとしたら、そこだろうと俺は思った。
「はぁぁ…」
張り詰めていた息を吐いて、構造を体外に出す。
魔力で出来た構造はその構造に従い、魔法としての効果を表す。
はずだった。
魔法は発動せず、形無き魔力のみが拡散していく。
「っ!!」
それを示すことは一つ。
俺はそれを信じたくなく、何回も何回も繰り返す。
しかしそれは、部屋の中の魔力濃度を濃くする結果のみをもたらした。
魔法が使えなくなった。
俺がその事実を受け入れるのには、幾何かの時間を要した。
少しして、俺から最も問い扉から彼が入ってくる。
今の俺にできるのは、為す術もなく蹂躙されることだけだった。
二週間後…、俺はラザベイに直訴して、Project『Braver』からあそこの本来の目的である|世界征服《World Conquest》を目指すProject『WC』に移って、新しく得るべき力、かつて俺を制した力、『星術』を学んだ。そこで№1、№8、№9とかに出会ったわけだ。そして力を得た後、俺がいなくなってメインに据えられた№0…、リーナが出発するに合わせて俺も脱走して、ユルド森で合流したということだ」
シスが話し終えた。
「……」
「………」
「…………」
「……」
一行は黙るしかなかった。
シスが、嫌な前も分からない彼がしてきた凄絶な経験を前に、何も言えなくなった。
リーナは恐怖と、そして安心感を得ていた。
自らが何かと分からないという恐怖と、記憶の謎が解けたという安心を。
ナタージャは恐怖を感じていた。
リーナがその出自ということは、同じ村出身という自分は何なのか。
ビトレイは恐怖を感じていた。
自らの扱う武器を作ったラザベイ・ラボラトリーはなんと恐ろしいのか。
アチェリーは恐怖を感じていた。
ラザベイ・ラボラトリーはやはり恐ろしいものだ、と。
シスの言葉を受け、各々は考え込んだ。
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