回想の勇者 ③
「ラザベイ・ラボラトリー…」
ビトレイは呟いて手元の『マルチファイラー』を見下ろした。
『マルチファイラー』は、『ラザベイ・ラボラトリー』の全技術を込めて作られたといわれる。
ビトレイは自分も0や6の番号を持っているのかと心配になる。
「…、……」
シスの話は続く。
「白衣の男は…
白衣の男は、ラザベイ、と名乗った。
「こんにちはァ、勇者君ン? こちらとしてはァ、君が見つかってくれてェ、本当に嬉しい所なんだけどねェ」
「博士どうなされますか?」
「そうだねェ、番号の欠番で、一番数が小さいのはァ、なんだいィ?」
「6番です」
俺はラザベイに
「おい、この拘束を解け!」
とか、
「どういうことだ、説明しろ…!!」
とか口で叫んでいたが、全く何の返答もなかった。
「6番ねェ、まァ、いいかァ、トー、やっちゃってェ?」
「了解しました」
トーと呼ばれた少女がそう言った次の瞬間、彼女から不意打ちで魔法が放たれた。
効力の弱い魔法が、何百と。
面食らってまともにそれを受けてしまった俺は愕然とした。
俺の名前が、思い出せなくなったからだ。
いや。
自分の名前を呼び出そうとすると、『6番』と思ってしまうようになってしまっていた。
精神干渉。それも自らに対する認識を改竄してしまうほど強力な。
他魔力拒絶反応を知らなかったそのときは気付かなかったが、トーが使ったのは他魔力拒絶反応を回避しつつ精神に干渉する為、効力も弱く干渉力も低い魔法を大量に放ったんだと思う。
「『刻名』、完了しました」
「はいはィ、トー。さて6番、君はProject『Braver』に加わってもらうね? 拒否権は当然ン、無いよォ? あァ大丈夫、君は実験体だけどォ、加工はしないよォ? データを取ることが目的だからねェ。あぁ、そうそう、もう二度と自由にはならないと思っていいよォ?」
何を勝手に。
俺は憤った。自由にならない? ふざけるな。
「おい、さっさとさっきの魔法を解除して俺を解放しろ!」
俺は怒りを込めてそう吼えた。
だが、ラザベイは全く気にしなかった。
「トー、忠誠魔法ねェ?」
「了解しました」
トーが再び魔法を放とうとした。
首輪が魔力に構造を与えることを阻害することはラザベイが来るまでにわかっていたから、俺は魔力に力を与えずにトーの魔法へぶつけて魔力構造を押し流した。
「ほうゥ、中々面白いことするねェ。魔法を無効化する、かァ。トー、もう止めていいよォ? 今追加実験可能な実験体は何番だいィ?」
「十五から二十三番。二十五番、二十八番から三十二番。三十七番から五十九番と、P-1298からP1355です」
「良いねェ。二十八から三十二、三十七から五十九、P1298からP1355までこの実験に割り当てようかァ。手配よろしくねェ?」
「了解しました」
「で、さっさと開放しろ!」
「んー、そこまでの敵意ならァ、消さずに残しておくといいかと思ってねェ?」
ラザベイはそう言うと、部屋を出て行った。トーもそれに付き従う。
「おいっ! 出せっ! 拘束を取れ!」
俺が叫ぶが、二人はもう部屋に来なかった。
暫く経った後、村を襲った黒装束で統一した男達がやってきて、俺を拘束したまま移動させた。
十人以上来て、魔法銃だか星術銃だかを俺に突きつける。
「歩け」
男は短く言うと、手を拘束されたままの俺を歩かせる。
どこまでの純白の壁を歩かされ、6、とペイントされたドアの中に放り込まれた。
狭い部屋に、ベッドだけ。
そんなベッドに腰掛けた時、声が聞こえた。
隣の部屋から。
「よう、6番。仲良くしようぜ、同じ実験台同士さあ」
これから、俺の実験体生活が始まった。
読んで頂いてありがとうございます!
今日から二週間ほど更新できません。すみません。
次回も頑張って更新するのでよろしくお願いします!




