回想の勇者 ②
「…なっ! そん訳無い! 勇者はリーナよ!」
ガタッ! と音をさせて、ナタージャは立ち上がって叫んだ。
「ナタージャ…。シスのいうことを今は聞こう。そのうち説明してくれるはずだから」
「…っ…」
突っかかったのはナタージャだけだったにしろ、全員がシスの言葉に引っかかったようだった。
しかし、引っかかったとしてもシスのいうことを受け入れることを決心しているリーナは疑問を置いて、先に話を最後まで聞くことを選ぶ。
「…。…」
「でもおかしいよね…?」
二人が呟く中、リーナはシスに先を促す。
「シス、それでどうなたったの…?」
「ああ…、その日は村中が…
その日は村中が大騒ぎだった。
村長をはじめ、村中の人々が俺のところに来て祝辞を述べていった。
当然、どんちゃん騒ぎが始まって、夕方頃には宴が始まっていた。
父と話して、用意が完了する…。一週間後に出発することになっちたから、俺をも安心して楽しく食べ、飲んだ。
俺の人生の中で1番楽しかった日だと思う。
周りの人々が俺をたたえる。
周りの人々が俺を褒める。
周りの人々が俺を尊ぶ。
俺はいい気になって、上機嫌になって過ごした。
そのすぐ後ろに悪夢が忍び寄っているとも知らないままに。
流石に皆明日もあるから十時ごろには帰っていった。
片付けは明日することにして、家族も俺もベッドにもぐりこんだ。
酒も入っていたし、睡魔はすぐに襲ってきた。
だが、真夜中にはっと眼が覚めた。
強烈な危機感で、意識がクリアーだったことを憶えている。
父からもらった鉄剣を手に外へ出た。
丁度、新月の夜だった。
月の光もなく、星の光も暗く、遠くで寝ずの番の篝火だけが見えた。
俺は神経を尖らせた。
この危機感は、前にも感じたことがあったからだ。
冒険者の人たちが待機していて、そのときは何とかなった。
そのときは、俺が危機感を感じてから三十分後にゴブリンが襲撃してきた。
今回もそうだと思って、寝ずの番の所へそれを伝えようと奔った。
甘かった。
五分ほど奔って、寝ずの番の所へ行ったそのとき。
あいつらが。
あいつらが現れた。
「な、何だお前らは!」
寝ずの番のおっちゃんが叫んだ。
だが、その足は震えていた。
人の刃を向けるのは初めてだったのだろう。
そして。
おっちゃんが崩れ落ちた。
「え?」
俺の口から情けない声が漏れた。
あいつらは、そろって黒色系の装束に身を包んだあいつらは、おっちゃんを一撃を入れたそいつらは、音もなく俺に近づくと拳を放つ。
俺は気を失った。
その晩、俺が生まれ育った村は―――消滅した。
目が覚めた俺が最初に見たのは、白い壁と明るい光源だった。
純白の壁にはさまれた部屋の中で、俺は拘束具の椅子に全身を縛られて座っていた。
首には魔法を封じる首輪が嵌められて、非力な俺にはどうすることも出来なかった。
そして俺は混乱した。
ここはどこだ?
何故ここにいる?
何故拘束されている?
村はどうなった?
家族はどうなった?
数々の疑問と不安に押しつぶされそうになりながらも、俺は座っていた。
そして。
白い壁がスライドして、白衣の男と少女が姿を現した。
「んン…、いい感じだねェ。ラザベイ・ラボラトリーへようこそォ!」
機械的な片眼鏡をした男が言った。
読んで頂いてありがとうございます!
次回も頑張って更新するのでよろしくお願いします!




