流着の勇者
――――もう、仕方のない子ね。
声が、聞こえた。
――魔王を倒すために選んだあなたなのに、クラクナ火山に到着する前に死んでしまっては意味がないじゃない。
その声が神の――自らを勇者に選んだ者の声と気付いて勇者は佇まいを直す。
―――気付いてる? あなたは溺死しかけたのよ? 歴代の勇者の中でそんな死に方をしたのは貴方だけよ?
申し訳ない、といった概念を頭の中に思い浮かべる勇者。
―――ホントよ、ホントに。貴方を助けたことで、これ以上私は貴方に加護は与えられないわ。せいぜい、貴方が目覚めた所が神殿に近くなるように確率を操作するくらいよ。
ありがとうございます、と勇者は思う。
―――当然よ。私が守護する人類に滅びられたらたまらないもの。…、そうそう、貴方がご執心のあの子は無事よ。それどころか、一行全員命に別状はないの。たいした運よね。
驚く勇者。一人二人は死んでいるものと覚悟していたからだ。
――― とりあえず全員神殿に集まるように啓示をしておくから、神殿で待っていなさい。
はい、と返事をすると同時、神の気配は遠ざかって行った。
はっ、と勇者は目を覚ました。
河川に打ち揚げられている。片足はいまだに川に浸り、冷気を体に送り込んでいる。
「……、…」
勇者はゆっくりと、体を起こした。
体が重い。
まるで体中が棒になったかのように体が思うとおりに動かない。
とりあえず神の言っていた神殿まで行って、それから待とう。と勇者は思う。
勇者は、ゆっくりと足を踏み出した。
疲れた体に鞭打って、一時間ほど探し回った。しかし、目当てのそれは、未だ見つからなかった。
体に出血こそないが、流された時に色々とぶつけたのだろう、打身、打撲傷、色々出来ている。
更に体も冷えており、もう後三十分ももたないだろう。
しかし、勇者はあきらめてはいなかった。
神は近くに神殿がるようにする、と言った
ならば近くにあるはずなのだ。
樹齢千年を超えるであろう老大木に手をつき、後ろに回り込んだとき。
「…見つけた…」
古びた、朽ちかけている石造りの神殿をやっと見つける。
勇者は――シスは、最後の気力を振り絞って神殿へ向かった。
読んで頂いてありがとうございます!
最後につけたのは、アバウトな地図です。
初めて書くのでいろいろ拙いところもありますが、見てください。
最後の文は、シスです。リーナの打ち間違いではありません。
これから魔王討伐の旅から少し離れて、この世界の疑問点に迫っていく予定なので、よろしくお願いします。
次回も頑張って更新するのでよろしくお願いします!




