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奪還の勇者 後編

「いっくよー! 『錬式電撃模倣銃サンダーバースト・ケミカリィ』、『撃て(ディスチャージ)』!」

 換装したナンがビトレイに向かって嬉々として放つ。

 物理攻撃ではなく魔法攻撃に切り換えたようだ。

 再び二重螺旋のような、正弦曲線と余弦曲線のような、美しい形を描いて戦う。

 互いに撃つ数千発もの数は、互いの未来予測で避けてあたることはない。

 このまま膠着状態に移行するかと思われた、そのとき。

 ビトレイの呟きが風に乗った。

 「…、どんなに未来を予想して…。避けられなければ、意味がない…!」

 ビトレイの『2048式斉射砲(デストロイヤー)』の各所が駆動する。

 「…なに…?」

 「『86式四連収束爆撃砲フォアクラスターカノン』…、発射(ファイア)

 デストロイヤーの四箇所から四角形を描くように巨大な弾が発射された。巨大な弾は数百もの子弾をばら撒いて分裂する。

 面を埋める攻撃。

 来ることがわかっていても、避けられない攻撃。

 番号が若いのは、クラスター爆弾からの発展という歴史ゆえだが、逆にその歴史が面を制圧する能力を保証している。

 空間を埋める爆弾に対して、ナンは。

 「撃て(ディスチャージ)ー!」

 自らの魔法銃を撃って対処する。

 放たれた雷撃は子弾を誤爆させ、その周りの子弾を吹き飛ばして安全圏を確保する。

 爆煙が立て込める空間を、ビトレイは見逃さない。

 「…、『1024式熱電離気体収束砲(プラズマカノン)』…、発射(ファイア)

 四億度のプラズマの奔流が、煙を散らしてナンがいた空間へ突き進む。

 迸るプラズマは空気の通過と同時空気を膨張させて歪に衝撃波を拡散させる。

 煙がはれた先に、ナンは――――。


 いない。


 しかしビトレイは驚いていない。

 ビトレイの『眼』には、上空へ脱出するナンの姿がくっきりと映っていた。

 「あぶないねー!」

 「…、外した…」

 再び始まる撃ち合い。

 ナンの『サンダーバースト・ケミカリィ』は、雷撃を発生させるもので攻撃は光速。放たれてから避けるのでは速度の勘定が合わない。

 よってビトレイは『未来演算者』を多用して、発射直前の銃口の向きを把握、そこから逃れることで『サンダーバースト・ケミカリィ』から逃れていた。

 逆にナンはあせっていた。

 『サンダーバーストケミカリィ』を使って当てることも出来ず、当てたとしても一撃で行動不能にできるかどうかは謎だった。少しでも早くエトの救出へ向かわなければならないのに、目の前の邪魔者はそれを許さない。

 「…、邪魔ー!!!」

 「…、行かせない…!!」

 一瞬の言葉の応酬。

 瞬間。

 「『錬式雷撃模倣銃サンダーバースト・ケミカリィ』、撃て(ディスチャージ)!」

 「『1026式熱電離気体収束砲(プラズマカノン)』、発射(ファイア)!!」

 「………!!」

 今度は実力の応酬。

 三つの(・・・)

 「…!」

 「…、……!!」

 鯰の荷電粒子。

 ナンは二つの攻撃に注意を払う。

 ビトレイの攻撃はナン直撃コース。しかし鯰が狙ったのはビトレイのようだ。

 ナンはそれを確認し、プラズマに対して対策を講じる。

 次の瞬間。

 三つの攻撃が結果を示す。


 「ぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁ―――!!」


 弱弱しく声を上げたのは、ナンだった。

 腹に二十センチほどの穴を空け、傷口はぐちゃぐちゃに蹂躙されている。

 ビトレイは、その傷口に見覚えがあった。

 …、当たり前だ。そうなるようにビトレイが仕向けたのだから。

 傷は、シスが青竜蝦から受けたものと酷似していた。

 (……なんでー?)

 ナンはビトレイに向かったはずの荷電粒子が自分へ向かってくる理由が分からなかった。

 プラズマも荷電粒子も操作方法は同じ、電場と磁場だ。

 プラズマを操る星術銃で、荷電粒子を操った、という真相を知らずにナンは落ちていく。

 沼の端に当たったプラズマが起こした水蒸気爆発が、勝利を知らせるゴングとなった。

読んで頂いてありがとうございます!

昨日は寝落ちして、更新できませんでした…

エトとナンは次回で一度終わりです。

昨日のぶんはまた投稿します

次回も頑張って更新するのでよろしくお願いします!

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