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奪還の勇者 前編

 上空では、魔法銃と星術銃と錬式銃が火を噴いていた。

 足のスラスターが勢い良く噴射し高速起動するナンと、足場を動かして確実な動作を行っていくビトレイ。

 スラスターの炎が大きくなり、ナンの速度が上がる。

 足場に腰までの壁を付け、ビトレイの速度が上がる。

 複雑な軌道を描いて交錯し、離れる二人の実力は互角といえるのか。

 「…、『超伝導大磁力砲(マイスナーキャノン)』。発射(ファイア)

 「『錬式炎弾速射砲ガトリングフレイム・ケミカリィ』、撃て(ディスチャージ)

 互いに互いを狙った弾は、互いに当たらず虚空へ消える。

 螺旋のような、二条の正弦曲線のような、美しい軌道は際限なく続いていくかのように見えた。

 しかし、二本の線は唐突に止まる。

 (…、強い…。でも、対抗できないほどじゃ、ない…!!)

 (…面倒ー)

 そして2人は切り札を切る。

 星術銃の一種だが、攻撃機能は一切持たず補助に特化したそれを。

 「…『1024式

 「『錬式


 未来演算者フューチャーカリキュレイター』』

 

 …起動(ブート)

 …始動(スタート)

 片目に嵌めたコンタクトレンズに情報が投影される。

 腰の紺のポシェットからキィィィィィィン!!と駆動音が響き始める。

 『1024式未来演算者』または『錬式未来演算者』は周辺の情報を収集し、そこから導き出される未来を使用者に教えるというものだ。

 演算量の桁が人間の頭で対応できる範疇をはるかに超えているため、魔法で再現することが出来ず、脳以外に外部演算素子をつまないと行うことは出来ない。

 そして。

 この状態でのみ扱えるものを、ビトレイは展開する。

 「…全銃展開(・・・・)…。『2048式斉射砲(デストロイヤー)』」

 ビトレイの体が機械に覆われていく。体の各所に追加装甲が纏われ、コンタクトレンズを嵌めたのと逆の目へ照準用の小型モニタが示される。

 2048式は最適化され、旧世代機は新世代機へ一時的に組み込まれ、ビトレイの体に合うよう配置され、ビトレイのあらゆる行動がトリガーと化し


 少女は完全なる兵器となる。


 「……、面倒だねー。」

 体積が十倍以上に膨れ上がったビトレイに、ナンはそうコメントしながら『錬式炎弾速射砲ガトリングフレイム・ケミカリィ』を撃つ。

 百発以上の炎弾が色々な軌道を描いてビトレイに殺到する。

 「これで終わりー」

 ナンの目にはビトレイが破壊される様が映ったのか、ナンは余裕げに言う。

 しかし。

 「……、…」

 放たれた炎弾は、可動装甲に進入を阻まれそのエネルギーを無為に散らす。

 「…! なんでー!?」

 ナンが驚くが、しかしなんら不思議なことではない。

 『1024式』も『錬式』も、『未来演算者』は基本敵に条件を法則に従って演算する。

 つまり、『未来演算者』のセンサーが捉えることが出来なかった条件による現象は予想することが出来ないのだ。

 その動揺を逃すことなくビトレイの声がナンの耳に届く。

 「『1026式熱電離気体収束砲(プラズマカノン)』」

 (――――! まずい―――)

 「発射(ファイア)

 瞬間。

 四億度もの高速気体が、ナンに襲い掛かる。


 だが。

 

 ビトレイにとっては最悪。ナンにとっては最高のタイミングで。

 「…………、!!」

 鯰から放たれたチェレンコフ光―――荷電粒子が襲い来る。

 二つの攻撃が交差し、互いの電荷で進路が微妙にずれる。

 結果、誰にも当たらずただ空だけを灼いた。

 そもそもプラズマの定義は『電離した気体』である。

 どうすれば気体が電離するのか。それは加熱。

 とある実験では、本来プラズマを四億度にまで熱して使用している。

 固体を熱して液体に。

 液体を熱して気体に。

 気体を熱してプラズマに。

 故にプラズマは、『第四態』とも呼ばれている。

 そして電離した―――つまり原子核と電子が分離した状態では、電場と磁場の影響を容易に受ける。

 それを使って加速しているわけだ。

 荷電粒子の加速も同じ。

 面に電子であることが多いが、荷電粒子も自らの持つ電荷を取っ掛かりとして自らを加速する。

 そんな似た攻撃が交錯すれば、ズレるのが当たり前だろう。

 「…がんばらないと――。かなり危なかったー。」

 「…次は、当てる。」

 二人が、意気込む。


 

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