反撃の勇者 後編
「エトー! 飛ばすよー!?」
「いいよ、当たり前さ。ナンの判断を拒否するわけがないだろう?」
圧倒的な火線がエトとナンを襲う直前、ナンとナンに抱きかかえられたえとが射線から身を退かす。
「…シスか。追いかけてきたのか。」
「面倒だねー。」
「…………………!!」
二人が談笑する中、火線の直撃を食らった鯰が声無き絶叫を上げ悶える。
C種であったとしても、あの様子では戦線へ戻ることは出来ない―――
否。
鯰の体が急激に治っていく。
「…T種…?」
ビトレイの疑問形の声がその減少の唯一の心当たりを示していた。
だが、おかしい。
T種?
C種の方がはるかに脅威だ。次のエリアの代表が来る『関の守護者』で、クラクナ火山に近づいているのに魔物が弱くなるはずがない。
しかし、これで一体一対一。
三つ巴の戦闘が始まる。
地に降り立ったシスは、すぐに歩き出すことは出来なかった。
何故ならば。
液状化現象によって地面がドロドロに、底なし沼のように成ってしまっていたからだ。
体重を掛ければすぐに沈み、もがけばもがくほど全てを飲み込む死の泥。
ここを自由に動けるのはナンやビトレイのように空を飛べるものだけだ。
動きに不自由しているシスへ、エトを抱えリーナを担いだナンが接近、エトが攻撃を仕掛ける。
「『構築』、…『開放』」
小規模な爆発で構築した質量体をいくつも高速で飛ばす。
「……、シスッ!」
「面倒―」
上空からビトレイがナンを狙って魔法銃を撃つが、ナンは難なくそれを回避する。
その結果、大量にばら撒かれた弾の一部がシスに当たる軌道から逸れていく。しかしそれでも三十は下らない弾がシスへ降り注いだ。
(たとえ空間断層で防いだとしても衝撃が6番を泥の中に叩き落すだろうさ。これで終わりだ)
エトの思考が走ると同時、大量の質量体が着弾する。
しかし。
全て湿った音を立てて泥に沈み、悲鳴や肉を撃つ音すら聞こえない。
(…?)
「エトー!」
突然、エトの視界が回り、落ちた。
回る視界に掠った景色は青白い閃光。
「チェレンコフ光…!?」
バレルロール、という後ろから迫る自らより速い物体を避ける挙動で回っていると理解し、チェレンコフ光を確認したシスは、その発射元を見て嗤う。
(…そういうことか)
「……!!」
驚きはビトレイの方が大きかった。
今の行動からすると、鯰はT種とC種、両方の性質を持っていることになる。
(…、強い……!)
「エトー! 一回パージするよー! 鯰、面倒ー!」
「分かったよ、ナン。…、っ!」
ナンが一度手を離す、という声に同意し、体を安定させて宙に浮く中エトは思い出す。
シスのことを。
(弾をばら撒いた所に死体はない。ならどうやってか浮いて逃げたはずだ)
そう考え、足裏に小さい足場を発生させると魔法を待機させて上を探す。
泥から一ミリの所に足場を発生させて体重を乗せて探すがどこにもいない。
「戦闘中に太陽観察か。結構なご身分だな」
「…っっ! 『分解』!!」
エトの背後から声をかけたシスに、エトが過剰に反応する。
しかしシスがいる場所とかけ離れた所を分解した所で殴り飛ばされる。
シスは普通に泥を歩いていた。
「…!? なぜ!?」
「レイノルズ現象。液体と粒子が混ざった所に、急激に力をかけると一瞬硬化する減少だ。つまりは、このような場所では早足で足踏みすることで歩ける、ということだな新式。」
エトの体は既に三分の1ほど埋まっていた。シスはそれを眺めている。
つまりエトが助かるかは、ナンにかかっている。
エトは交戦中のナンがいる空を見上げる。
読んで頂いてありがとうございます!
対エトとナン戦が長引く…
次回はナン対ビトレイの予定で、あと数回でエトとナンは終わる予定です。
次回も頑張って更新するのでよろしくお願いします!




