再起の勇者
エトの意識はゆっくり流れていた。
シスの策に嵌り、ブラックホールに引き寄せられているエト。
確実に自分が失敗した状況だったが、エトの表情は心配すらしていなかった。
何故ならば。
今、この時エトと戦っている間意識から外さねばならなかった者が必ず援護に来る。
そう信じ。
…否。
それを前提として組み上げられているからだ。
エトとナンは二人で一組のシステムである。
先頭面では一対一で戦うことも、連携して交戦能力を数倍にして戦うこともできる。
対処面では、一人では対処できない問題を二人で対処することが可能である。
…今のように。
「エト~~~~~~~!」
突然、ブラックホールに引き寄せられるエトへシスが忘れていたナンが飛び掛った。
「…ナン、お帰り。」
「エトー、うん、ただいまー。…って違うよー! いまはエトのピンチだよー!」
質量がおよそ1.8倍に増えたこと、そして横からのベクトルがかかったことにより、エトが吸い込まれる軌道はかなり外れた。
そして得たその猶予の間に、ブラックホールは消失してしまう。
そこでシスが驚いたのは二つ。
ナンは足に円柱状のパーツをつけて跳んでいること。恐らくは星術銃の発展系。シスとエトの関係と同じ、ビトレイの持つ『2024式全銃統合砲』の後継機だろう。
そして。
もう一つの、というべきではない。驚きのほぼ全てを占める理由は。
「…っ、リーナァァァ―――――!」
ナンがエトに飛びついた右手とは逆。左手に、ぐったりとしたリーナを抱えていたからだ。
シスの背後から足音が響く。
「…なに…?」
「…?」
ナタージャとビトレイが出て来たのだろう。だが時既に遅し。
リーナは敵の手に渡ってしまった。
回復薬で直せていない疲労などが溜まっていたリーナはもう戦える状態ではなかった。そこを突かれて捕まってしまったのだろう。
「……!? 酷い…!」
ナタージャがキールとアチェリーに最高位回復魔法を掛ける。治るには治るだろうが、一時間やそこらでは無理だろう。
「さて、旧式。ナンが0番を回収する間、予定通り僕に攻撃してくれてありがとう。おかげでこっちは確実に回収できた。」
「ありがとねー!」
「さて、僕らはここで御暇させてもらうよ、君達に構っている暇はないしね。」
「エトの方が大事ー!」
シスの口からギリッと歯軋りが漏れた。
「…、絶対に逃がすか。」
「ほざいてろ旧式。…さぁ、ナン」
「うんー!」
エトはナンに運ばれたまま上昇していく。
「…、『構築』」
更に、ご丁寧なことに穴へ蓋を被せることも忘れない。
一瞬の空白。
「あああああああああああああああああああ!!!!」
シスの絶叫が閉じた空間に響く。
ナタージャとビトレイは驚いたようにシスを見る。
シスが泣いているかと思ったのだ。
だが違う。
シスはそんな男ではない。
それは怒りの咆哮だった。
激怒の表れであった。
「…、……シス…」
ビトレイが心配そうに声を掛ける。
返ってきたのは力強い声。
「手伝ってくれ、ビトレイ」
「……、うん!」
シスに頼られた、という事実を噛み締めてビトレイは頷く。
「ナタージャは二人の回復に専念しててくれ。リーナを連れて、俺は戻る。」
「分かった!」
「…、HSNC、スイッチオン。…ビトレイ」
「…うん」
穴にされた蓋が消え去った。再び差し込む陽光に、シスはすぐに目を細める。
ビトレイの魔法銃で静かに上昇する中、シスは静かに誓いを思い出す。
(必ず助け出す…! そして守る!!)
2人は穴を登っていく。
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