急進の勇者
炎を纏った剣が、水棲甲殻類がベースであろう魔物を切り裂く。
炎剣を振るうシスの後ろにはナタージャとビトレイがいるが、殆ど何もしていない。
壁から、床から、天井から、生まれてくる魔物をシスは次々と倒していった。
十分前。
「クソ!」
シスが珍しく、冷静さを欠いた声で叫んだ。
蛸によって土の中に引きずりこまれ、この土中の空間に放り込まれた。
更に悪いことに、六人いた一行はいまここに三人しかいない。
「…リーナが、いない…!リーナ、私がいなくて大丈夫かなぁ…」
「…、分断、された」
この場にいるのはシスとナタージャとリーナ。
「…よし急ごう。急いでリーナと合流するんだ。」
「そうよね! やっぱりそうした方がいいと私も思う!」
「…了解…」
そして空間から唯一繋がっている道へ進む。
「…!!」
「…っ!」
「…、…っ!」
そこには、水棲甲殻類の魔物が大量にいたのだ。
シスはもう一度周りを見る。
全方向を厚い壁に覆われた道。
地下にある迷宮。
魔物が大量に要る場所。
つまりは。
「…、『発生迷宮』か…!!」
「…!」
「…、…!!!」
そうと分かれば、自然と足を進めた。
『発生迷宮』であのサイズ、あのレベルの魔物は、恐らく『迷宮の王』だ。そしてこちらに『迷宮の王』がいないということはつまり。今現在リーナ達が、蛸と戦っているということに他ならない。
恐らく、シスを圧倒したC種と、三人で戦っているのだ。
「道を…どけぇ!!
シスは『カリバーン』のルビーの魔封宝石を嵌めると、猛然と剣を振り始めた。
水生生物は、土の中を自由に移動できるらしい。
床から、壁から、天井から、唐突に現れる魔物は三人を倒そうと襲い掛かってくる。
その中にはC種もいるだろう。
魔力を使ってブツリ攻撃を行うC種は攻撃させればシスの体に穴を開けることが証明されている。
しかしシスはそんなことはさせない。
出現と同時にその魔物へ攻撃を加え、一刀両断する。
まるで出現座標を予知しているかのように魔物を倒す。
「…、どうやって…」
ビトレイの口から零れ落ちた疑問に、シスは魔物を倒す片手間に言った。
「熱源探知。周辺の熱の分布を知ることが出来る方法だ。さすがに星術の機械はないが、ルビーで代用した。」
先程回りに魔物がいない、と断言したのも同じ方法だ。魔物であれ、水棲生物であれ、生きている以上熱を発する。故に、熱源探知から逃れることは出来ない。
シスは更に足を捷める。
目的地は決まっている。『迷宮の王』がいる場所など、『発生迷宮』の動力源といわれている黄色の宝石がある場所しかない。
ならば奥に進めばいいだけだ。強くなる魔物を倒し、深部に達するのみ。
魔物を倒して進む。
少し大きな空間に出たところで、シスは足を止めた。
「…何止まっているのよ!」
「…、…?」
シスは全神経を集中させる。
シスが立ち止まったのは、この空間よりもはるかに広探査能力を持つルビーの熱源探知に何も引っかからなくなったからだ。
果たして。
土でできた人形のようなものが、何体も飛び出してきた。
「…へっ!?」
「っ!?」
後ろの二人が驚く中、シスは笑う。
「俺がリーナの元へ行く道へ立ちふさがるヤツは…、潰す!」
戦いが、始まった。
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