推測の勇者
「…はっ!」
シスはテントの中で目を覚ました。
「…疲れたな」
テントの外に出ると、既に空は橙に染まっている。
どうやら『関の守護者』と戦った広い空間にテントを立てて休んでいるらしい。
「…シス!」
「…っシス…!」
男用のテントに前に大きめの岩を置いて座っていたリーナとビトレイが、シスを認めると声をかけてくる。
ナタージャとキール、それにアチェリーは火起こし用の木や夕飯を確保しに行った様で、二人のほかに人影は見えない。
「だ、大丈夫、シス? あんなに大きな穴が開いて…」
「…、ほんとに…、大丈夫?」
見れば左腹の服もビリビリに裂けて肌が覗いている。後で着替えないとな、とシスは思う。
「あぁ、こんだけ寝たら大丈夫だ。逆に夜きちんと寝られるか心配なくらいだからな。」
「…よかったぁ」
「…、っ…」
リーナがシスに抱きついて、涙を流しながら言う。
「よかったぁ…本当によかったぁ…、ぐすっ、シスが、死んじゃったらどうしようって…、帰ってこなかったら…どうしようって、…、本当、怖かったぁ…」
「あぁ…分かってる」
「…。…っ、…。」
一人置いてけぼりにされているビトレイは、しかしこの中に介入する無粋な真似もできず、孤独に立っていた。
内心では同じようにしたいと思っていたビトレイの苦行は、約三十分後、ナタージャ達が帰ってくるまで続いた。
パチパチ、と火がはぜている。
六人で火を囲み、串に刺さった魚を食べながら、一行は青竜蝦について話していた。
「…、そもそもあの青竜蝦はなんだったの?」
「…、シスを撃ったのは…たぶん荷電粒子だと思うんだけど…」
「たぶんそうだろうな。…チェレンコフ光が出ていたし」
「…、それに…、私の攻撃も無傷だった…」
「…ん? どういうことだ?」
ビトレイがシスに『二百砲身』を撃ったときのことを話すと、シスは少し考えていう。
「…、エネルギー誘導、か? 外骨格は曲面が大量にあったしな…。恐らく、わざと自分の強硬な外骨格に当てて逸らしたんだろう。攻撃は相手と直角に当てないとエネルギーが拡散する可能性がある。それを意図的に行ったとしたら…少し恐ろしいな。」
それを聞いてリーナが言う。
「…そんなの無茶苦茶だわ。今までの魔物だってそんなことしなかったもの…。まるで誰かが改造したみたいね。」
「改造、ねぇ。やるなら魔王じゃないの?」
ナタージャの呟きにシスも言う。
「魔法攻撃ではなく、わざわざ魔物の魔力を使って荷電粒子加速、か。臭いな…。とにかく、暫定改造…C種と呼ぶことにするか。」
「全く分からん。」
キールがポツリと呟く。
青竜蝦がC種らしい所を見ていないキールは、その脅威がさっぱり理解できていない。
「誰か説明してくれぇぇぇぇぇぇ!」
キールの言葉に、一行はかいつまんで話し始めた。
「十三番が消えたァ?」
「はい、博士。」
機械的な片眼鏡をかけた男が、少女と話している。
「トー、推測は?」
「逃走、敗北のどちらかかと。」
「う、うン? 逃走はマーカーも消えてるしありえるねェ。敗北だとしたらマーカーも消すぐらいの一撃って事かァ? なんかきな臭いねェ」
「どうしますか、博士。」
「んー、二十九番を出してしばらくは0番周囲の観察かなぁ。」
「了解しました。」
トーが部屋を出てから男は呟く。
「逃走、ねェ。そもそも六番はどうやって逃げたのかねェ。こういった外部の任務中でもなかったし、外部からの手助けでもなければ不可能なはずだけれどねェ?」
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