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追憶の勇者 シス編

 街長の館はかなりまともに残っていた。


 城のような館で、高い柵と塀に囲まれていた為、魔物は進入し難くなっていた。


 一箇所だけ魔物が進入したらしい、破られた所を応急処置で塞ぎ、五十メートルほどに広がる庭を歩いているところでサンに襲われた。


 その後一行は暗くなる前館内の安全を確認する為、リーナ達にとって不可解なシスの言動の追及もそこそこに館内へ入った。




 そして現在、夜七時半。


 日は既に完全に暮れ、館外は暗闇に閉ざされている。


 一行は残っていた大燭台に外から目立たない程度に火をつけ、明かりを確保する。


 そしてシスとキールは扉に背をつけ座り込んでいた。


 (…どうしてこうなった…?)


 木を一枚はさんだ後ろの部屋からは、かすかに水音と歓声が聞こえ、扉からは温かみが伝わっている。


 そう、ここは風呂。


 一行の女性達が風呂に入っているのだ。


 「…シス。なんで女はそんなに風呂に入りたがるんだろうな?」


 「…さぁ?」


 現在の市民の生活では、自宅に風呂がある家は少ない。区に一つ程度には公衆浴場があり、男は三日に一度程度、または特に汗を?いた日に入るのが一般的だ。


 しかし女性は毎日入る。後衛である公衆浴場の売り上げの約七割は女性によってもたらされる、といわれているほどだ。


 館を一通り回った時、この浴場を見つけた女性の喜びようはとてもすごかった。

 ”半牛人統治者ミノタウロス・ルーラー”を倒した時よりも嬉しそうにしていた、といえばどれほどか分かってくれるだろうか。


 リーナとナタージャが率先して風系統魔法でバスダブの汚れを落とし、水を発生させ加熱する。三十分ほどで湯浴みの準備は完全に整ったのであった。


 リーナとナタージャ、アチェリーとビトレイの四人が浴場へ入っていく際、ナタージャから釘を刺された。


 「…もしリーナの裸を覗いたら、私の魔力全部使って記憶を改変するからね」


 リーナ以外ならいいのか…とも思ったが、口には出さない。惨事になることが目に見えている。


 こうしてキールとシスの2人は三十分近く精神攻撃に耐えているのであった。


 天井に取り付けられた低圧水銀蒸発放電ランプが、ジジッと音を立てた。


 ランプの光は真っ白な天井、壁、床に反射し眩しく輝く。


 三畳ほどの狭い部屋には、中から開けられる扉はなく、窓もない。唯一あるのはベッドのみ。


 白い簡素なシャツと半ズボンを着て、首に魔力操作を封じる首輪をつけた俺はベッドにただ腰掛けていた。


 唐突に、スライド式のドアが開く。


 「6番(シックス)、実験の時間です。」


 容姿が博士に気に入られ、人格定着形成操作をされた上で秘書のように働いている仲間――2番(トゥー)が俺を呼びに来る。後ろには武装し顔を隠した警備員が六人立っていた。


 二人に両手を取られ、四方向から銃を突きつけられた上で、俺は移動させられる。


 向かった先はあの部屋――、五十メートル四方の大きさの、戦闘演習室だ。


 俺だけ投げ入れられ、無慈悲に中からは絶対に開かない扉が閉まる。


 同じように、反対側から投げ入れられたのは十三番。 サンだ。


 「ハハッ! 今日の相手はお前かよ!? シス」


 「そうみたいだな、サン…」


 「まぁ俺様が勝つけどな。」


 「また言うかよ…。一回でも勝ってから言えよな…」


 ピッ、と音を立てて首輪が外れる。


 首輪をその辺に投げ捨てると同時、アナウンスが入った。


 「完成体比較サンプル、六番と挙術対自魔法併用対戦闘実験体、十三番のデータ収集を開始します。ピーという音が鳴ったら、戦闘を開始してください。」


 ピー。


 女性の合成音声が沈黙した直後音が鳴る。その音が鼓膜を揺らした瞬間に、俺は地を蹴った。



 「…ス! おいシス…? 起きろ! お前が寝たら俺の話し相手がいなくなるだろ! おい!」


 キールの声が突然聞こえた。


 「…?」


 「…やっと起きたか。お前、この精神攻撃の中良く眠れるなぁオイ。俺なんかさっきから覗きたくてウズウズしてんのによぉ」


 どうやら昼間サンと戦った疲れと背中から伝わってくる温度で、寝てしまっていたようだ、とシスは判断する。


 (…、夢か…。サンの戦闘を思いだした、てことは相当気にしてるのか、俺…。やっぱりあそこには戻りたくない。彼女も戻させない。あいつをどこかのタイミングで排除して話さないとな…)


 「シスは誰が好みなんだ? オレはやっぱり…、いやまだ言わないでいよう。シスの意見を聞いてからだな!」


 「…俺も言う気はないよ。扉一枚、木一枚で挟んでいるだけの、誰に聞こえているか分からない所で言うことじゃないだろう」


 (…そもそも、お前に情報を与えるつもりはないしな)


 シスが心の中で思っていることにも気付かず、キールは会話を続ける。


 「ッ! 本当だ、こんなとこで言うことじゃねぇな。じゃあお前は…」


 シスはキールの話から意識を逸らして、再び目を瞑った。

読んで頂いてありがとうございます!

シスの記憶の話です。予想通り、という方もいますか?

誤字脱字、ご意見等何でも歓迎です!

次回も頑張って更新するのでよろしくお願いします!

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