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襲撃の勇者

昨日の分です。遅くなりました

 「ふうん…。思ったより早かったなァ…。」


 「博士(ドクター)、どうなされますか?」


 博士、と呼ばれた左目に機械的な片目鏡をかけた男が、片目鏡を触りながら考える。


 事の発端は被検体0番を監視していたものから0番の誘導する為の仮意識が元へ結合された、という報告が入ったことだった。


 「実験が終わる程度まではもつはずの思念操作だと思ったんだがねェ…。何か萌壊又は吸収を促す要因でも存在したのかねェ…。トー、報告に何かないかねェ?」


 トー、と呼ばれた少女が博士に答える。


 「いいえ、博士。報告は『意識を結合した』、『調整の必要の進言』のみで構成されていました。」


 その声の感情はない。石があり、冷静さが見えるがしかしどこか違和感が拭えない声だった。


 「被検体運用状況はァ?」


 「1~5番運用中、六番脱走、7~20番使用可能、21~38番実験中、39~72番調整中、以下省略、です。」


 よどみなく答える少女に、博士の顔が歪む。


 「六番はまだ見つからないのかィ?」


 「はい。おそらくは都市外に出たのかと。」


 「六番は専用武器まで持ち出したからねェ。さっさと回収してもう一度記憶改変だァ。…、都市外に出たって魔物しかいないのに、どうする気なのかねェ。」


 「恐らく監視の目を逃れようとしたのかと。」


 「それが本当なら忌々しいねェ。こちらとしては良いサンプルだから逃がす気はないけどねェ。」


 「最悪の場合、0番と合流して思念操作を解き、共同で反旗を翻す可能性があります。」


 「そうなることを一番は許さないだろうさァ。」


 「結局、博士、どうなされますか?」


 「んー、十三番を出して、回収させてェ。」


 「他の三人はどうしますか?」


 「死なない程度に気絶させて、一緒に連れて来てェ。記憶操作すれば問題ないからァ。」


 淡々と話を進めるトーを見て、博士は言う。


 「…人格形成は順調だねェ。ほぼ完成の域にあるかもしれないなァ。」


 「現在の人格の定着率は97.3%です。」


 「まぁいいやァ。そっちはお願いィ。」


 「了解しました。」


 トーは博士のいる部屋を出て、保管棟へ向かう。




 ナンバーがふられた扉が並ぶ棟、それが保管棟だ。


 13、とナンバリングされた扉の横に首から掲げるゲートをかざすと、ビッと音を立ててロックが外れる。


 「13番(サーティーン)、出番です。」


 小さな部屋の中で、ゆらりと一人が立ち上がった。





 一行がディーリアの街に入ったのは、別に壊れた街を見るためではない。中心にある、比較的無事な街長の館で休む為でもある。


 野宿というのは疲れる。


 魔物に襲われない様な加工をしているとはいえ、薄い布で出来たテントで寝袋に包まって寝るのは、精神的にキツイのだ。


 いつ襲われるかも分からない状況では常に警戒しておかないといつ死んでしまうか分からない。かすかな物音で即座に飛び起きてしまう。


 また、食材の補給も必要であった。


 長い旅をするならば、補給のチャンスがある時に行うのが基本。簡易携行食も、好き好んで食べる者はいない。


 「…、着いたわ…」


 リーナが言う。


 意識を結合したリーナは、無意識のうちに気を張る時と張らない時での調子をわけてしまっているが、じきに統一されるだろう。


 アチェリーの探査で魔物がいないことが分かっているので、今日はここで休もうと街長の家を進む一行。


 しかし。


 「…君たちは回収する。」


 どこからか、一人の男が現れた。


 「…っ!」


 「どこからっ!」


 「っ…!!」


 「へぇ…!」


 「…!」


 「…」


 即座に警戒する一行。


 アチェリーの探査(・・・・・・・・)に引っかからずに、一行を立ち塞ぐように立つ男。


 その言葉が、「回収する」?


 味方な訳がなかった。


 「あなたは誰? 敵対の意思があるなら排除するわよ。」


 リーナが言う。


 男の唇が、釣りあがった。

読んで頂いてありがとうございます!

予定通り今回から対立軸が登場しました。

あと数回はこの軸についてでいくつもりです。

誤字脱字、ご意見等何でも歓迎です!

次回も頑張って更新するのでよろしくお願いします!

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