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攻略の勇者 "半牛人統治者"

 ディーリアの街に君臨するは、”半牛人統治者ミノタウロス・ルーラー


 今までの戦いからして、魔物の上位に立つものはすべてT種であった。


 さすればこいつも…と、一向は警戒しながら幅二十メートルほどの道で迎え撃つ。


 「シス…、今回は早く倒すわよ。ディーリアの街の惨状を見ておきたいし、そのためにはボスを叩いておくのは有効な手段だわ。」


 リーナがそう言ってシスの本気を促すと同時に、”半牛人統治者”が姿を現した。


 人間の三倍はあろうかという身長。筋肉はすさまじく鍛えられている様子で、右角が砕け左目が潰れている。それはダメージではなく、過去の戦いで受けた傷跡だ。そこからミノタウロスの強さが窺える。


 「『繊細織魔法(ミニェート・ウェーブ)』、『炎弾(ファイアバレット)』。…行け(ゴー)!」


 ナタージャが先手必勝と魔法を放つ。


 放たれたのは『炎弾(ファイアバレット)』、基本魔法の一つだが、『繊細織魔法』によりその威力は数千倍に高められ、”半牛人統治者”へ激突する。


 爆発。


 「ゴアアアアアアアアアアアアアアアアア!」


 ”半牛人統治者”が絶叫する。


 しかし。


 それは悲鳴ではない。怒りだ。


 煙が晴れればそこには無傷の”半牛人統治者”が佇んでいる。


 ユルド森『関の守護者』でさえダメージになった『繊細織魔法』でさえ防いでのける。


 おそらくは、魔法耐性を強化されたT種。


 ”半牛人統治者”改め、”半牛人統治者・強化種ミノタウロス・ルーラー・テンパード”は、こちらへ駆け出そうとする。手に持った大剣を振り上げその暴威を放とうとする。


 しかし、出端をくじかれる”半牛人統治者・強化種”。


 「二十四式『冷凍液体散布弾(バレット・オブ・4K)』…、発射(ファイア)


 20、22,24,28式は星術銃。旧式の榴弾をベースに中身を詰め散布する特殊弾頭を持っている。


 『冷凍液体散布弾』が”半牛人統治者”に命中すると同時、地上で最も冷たい液体、マイナス268.9度の液体ヘリウムが辺りに撒き散らされ”半牛人統治者”の動きを止める。


 同時、キールが自己加速で”半牛人統治者”を斬り、遅れてリーナの片手直剣が銀閃を舞わせる。


 馬鹿力で自身を縛めていた氷を砕いた”半牛人統治者”は、うるさい羽虫を落とすようにキールとリーナに剣を振り上げる。


 しかし。


 2人は既に剣の間合いにはいない。


 囮…、いや時間稼ぎが終わったからだ。


 「『武器庫(アーセナル)』」


 ”半牛人統治者”の真後ろで呟く男が一人。


 「HSNC、スイッチオン」


 命ずるは、天地神明あらゆる存在を灰燼に帰す、絶対的な攻撃。


 しかし。


 (…、やはりこいつには効かないか…)


 ”半牛人統治者”は、左腕を喪うだけでその攻撃を受けて見せた。


 ”子鬼(ゴブリン)”や”半牛人半牛女王ミノタウロス・トーラスクイーン”でさえ塵芥へ変えた攻撃を。


 ダッシュで一行の元へ戻ったシスにリーナの声が飛ぶ。


 「シスのアレが効かないってどういうことよ…!!」


 「…あれは攻撃の補助として敵自体ではなく空間自体を対象に確立操作と威力向上を使っている。それが魔法耐性の元に防がれているから本来の威力が出ないんだ。」


 リーナの心が不安で溢れた。


 ”半牛人統治者”は”半牛人(ミノタウロス)”が元から持っている高い物理体制に、T種として魔法耐性まで高めている。


 つまり現状”半牛人統治者”にダメージを通す手段が無いのだ。


 頼みの綱のシスの攻撃も有効には作用しない。


 リーナが撤退へ思い始めるその時。


 「方法ならある」


 シスが言った。




 ”半牛人統治者ミノタウロス・ルーラー”の大剣を避ける。


 地面を大きく穿って体勢の崩れた”半牛人統治者”に片手直剣を振るが、弾かれる。


 それでいいのだ。


 リーナが行っているのはダメージを与えるのではなく、戦闘を長引かせる事なのだから。


 (…捌ききれない…!)


 リーナは思う。大剣、拳、そして蹴り。大量の筋肉と巨体に裏打ちされたその攻撃は、大木が高速で向かってくるに等しい。


 (…『素』に戻して演算可能領域を増やすか…? いや、それでは足りない…!)


 リーナが捌き切れずに体を掠る攻撃で、リーナにもダメージが蓄積されていく。


 このままでは一方的にダメージが蓄積されていくリーナのほうが不利だ。


 (…どうすれば…。どうすれば…)


 必死に考えるリーナが、ふと思う。


 (…なんで私は意識が二つあるように思っているんだろう? …どちらも私だよね?)


 ”半牛人統治者”の攻撃を最初と同じように避けながらリーナは続ける。


 (…私なら区別する必要なんてない。強いのも、泣き虫もすべて私。分ける必要なんて、ない…!)


 瞬間、リーナの意識が統合された。


 『素』でない意識を走らせることを止めたのではない。『素』ではなく『本当』の自分の最適化された意識で思考が可能になる。


 演算領域が広がる。


 「せやああああああああ…!」


 『素』の可愛らしい声で雄たけびを上げる。


 ダメージを受けていない最初と同じように(・・・・・・・・)避けていた状況が、リーナの圧倒に変わる。


 ゴボォォ!


 と、”半牛人統治者”が赤黒い血を吐いた。


 無論、突きだけの威力ではない。


 「インフラサウンド。可聴域外の音を大音量で聞かせると、共振と似たような現象が体内で起き、内臓が殺られ、酷い場合には死に至る。俺はHSNCだけを本命としている訳ではないのさ。」


 そう、そこら中にシスが投げた発音星術銃から、二十ヘルツ以下の低周波が大音量で鳴らされていたのだ。


 遮音結界を張ることの出来るナタージャがリーナをそれで多い、他は星術銃を配置していた。


 完全にシスの作戦勝ちである。












 「…リーナが意識を統合した様です。再調整をするべきかと。」


 誰かが、呟く。

読んで頂いてありがとうございます!

次回から、本格的に今まで配置して来た意味深がもう一つの軸として登場します。

誤字脱字、ご意見など何でも歓迎です!

次回も頑張って更新するのでよろしくお願いします!

リアルが忙しくなり、2週間ほど更新不定期になります。よろしくお願いします!


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