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探検の勇者

 デカリア草原はとにかく広大である。


 最大で端から端が三十キロメートル、最小でも二十キロメートルにも及ぶそこは、『魔王覚醒』以前は放牧と狩猟によって栄える街があったところだ。


 一行はその町、『ディーリア』を訪れていた。


 「酷いな…」


 シスが呟いた。


 元は活気溢れる街だったものが、もう廃墟に成り下がる。


 「えぇ…、これは酷いわ。」


 毅然としたリーナが言う。…視すと顔を合わせるのが『素』だと恥ずかしくて胸鎧を叩いたのだ。


 「アチェリー、とりあえず探査範囲を狭くして種がわかるようにしてくれる? こんな市街地だとどこから奇襲が来るかわからないから。」


 「うん。わかったー!」


 ナタージャがアチェリーに範囲の依頼をする。


 アチェリーの探査魔法は最小半径百メートル前後、最大半径1.5キロメートル前後の範囲を探査できるのだが、半径で探査できるものが変わる。


 最小の百メートルだと数と細かい種までわかる。例えば”半牛人歩兵ミノタウロス・インファンリリーという半牛人(ミノタウロス)というカテゴリーの中の種までわかるのだ。


 しかしそれ以上になると、半牛人(ミノタウロス)というカテゴリーと数、そしておおよその強さしか分からなくなり、最大半径だと数しか分からなくなる。


 ナタージャが頼んだのは、市街に潜む敵を正確に知るための方法だった。


 例えば”半牛人弓使いミノタウロス・アーチャー”や”半牛人投槍兵ミノタウロス・ジャベリン”が居た場合、先に対処しなければならない。市街であれば、平地戦では必要ない上下の動きを意識して動かなければならないため、遠距離攻撃をする敵は面倒なのだ。


 果たして。


 「北東五十七メートル、”半牛人隊長ミノタウロス・コマンダー”1、”半牛人上等兵ミノタウロス・ファーストクラス”3、”半牛人歩兵ミノタウロス・インファンリリー”10、”半牛人投槍兵ミノタウロス・ジャベリン”5体!目標はここみたいだよ!」


 アチェリーの探査に、19体もの魔物が引っかかった。軍隊のように徒党を組んで歩き、敵を確実に倒す。”半牛人(ミノタウロス)”の種族特性、”軍隊行動(アーミーアクション)”をもつ半牛人は、軍隊のように上下関係がしっかりしている。


 アチェリーの声で左前に向き直った一行は、前衛と後衛に分かれて戦闘準備を始めた。





 そもそも街は、二重三重の防護結界と、冒険者による結界外の討伐や、騎士団による結果以内の巡回などによって外敵を防いでいる。


 多くの都市は、それに加え防壁を築いて、都市内への進入に備えているわけだが、例外的にディーリアの街は壁を持っていなかった。


 商業都市として発展したその出自より、拒むようなことは不利益であったという説や、一番近い採石場、粘土採掘場でさえ五十キロメートル以上離れた場所にあったため、壁の建造に膨大な料金がかかったためという説など多数あるが、結果としてこの街はどこよりも早く滅亡することになる。


 魔法耐性が強化されたT種によって。


 魔法が自分へ及ぼす影響を抵抗(レジスト)する魔法耐性は、T種に一定範囲内にいる魔物の意識をディーリア外に向けさせる第一結界を突破させ、魔物に対して物理的な壁の効果を持った第二結界をも突破させ、いずれも結界を発生させている機構を破壊した。


 さすがに魔物に対する致死効果を持った第三結界をT種だけで突破するのは不可能だったが、第一、第二結界が破られてしまったことで集まった魔物全てを第三結界だけで対処することは不可能であり、キャパシティを越えて第三結界が破られるのは時間の問題であった。


 第三結界が破れて三日後。


 ディーリアは滅亡した。




 そう耳に聞くディーリアの跡地は。


 完全に廃墟になっていた。


 街の長であった者の館を中心に立ち並ぶ多数の商店だったものは、跡形も無く崩れ落ちている。


 少し中に入ったところには、1.5メートルほどの粗末な急造の壁だったであろうものが地に転がっている。魔物に抗戦した時に使われたのだろうか。


 リーナの構える盾に、”半牛人投槍兵”の投げた槍が当たった。


 人間をはるかに越えた腕力で投げられた槍は『関の守護者』もかくやという衝撃を与える。他の”半牛人投槍兵”ではそんなことはないので、腕力に特化したT種かもしれない。


 そのT種も、アチェリーの放つ魔法矢に射られて絶命する。


 リーナは自らが戦う”半牛人歩兵”に向き直った。


 ”半牛人歩兵”の持つ両手剣は一撃一撃が重く、通常の冒険者ではすぐに吹き飛ばされてしまう威力を持っているだろう。


 しかしリーナは耐える。


 「せぇい!」


 そして反撃する。片手直剣は違わず弧を描いて”半牛人歩兵”の首にあたり、弾かれた。


 やはり”半牛人(ミノタウロス)”は種族として物理防御に優れているようだ。


 ならリーナが魔法攻撃を行えばいいのだが、そうは問屋がおろさない。『素』ではない意識を走らせているリーナは、なぜか魔法が使えない状況にあるのだ。


 魔法は使えるけれど、自己加速しか行っていないキールと同じだ。


 ”半牛人歩兵”の物理防御が高すぎて、倒しきる前に交代されてしまう。順調に数を減らせているのは、剣の炎を纏っているシスと後衛だけだ。


 ビトレイ、ナタージャ、そしてアチェリーは”半牛人投槍兵”をすべて倒すと、後ろで経っている”半牛人隊長”とそれを守る”半牛人上等兵”を無視して、”半牛人歩兵”の殲滅を始めた。


 同時にシスが叫ぶ。


 「四体は任せろ!」


 四体とは、”半牛人隊長”と”半牛人上等兵”であることを理解したビトレイは、キールとリーナの隙間を縫って、十の魔法銃を同時に放つ。一匹三発、三匹倒したところで、シスが交戦を開始した。




 体外魔力操作。


 魔力が構造を与える体内魔力操作に比べてかなり難しいその技能を使って、俺はルビーの魔封宝石(ジュエル)を操った。


 今日のルビーはその手の内にあるのではない。


 『カリバーン』のスロットにはめ込んだのだ。


 『カリバーン』は、スロットに水晶(クリスタル)又は魔封宝石(ジュエル)をはめることで、剣にその属性を付与することが出来る。順物理攻撃の剣が物理プラス魔法になれるのだ。


 付与する炎の量を最大にして三体の”半牛人上等兵”を瞬時に切り捨てる。


 「『武器庫(アーセナル)』」


 と呟き、凍冷結晶フローズン・クリスタルを左手に準備。”半牛人隊長”に斬りかかる。


 流石の反応速度で受け止める”半牛人隊長”の剣に凍冷結晶を叩きつけ物理的風化で破壊。袈裟斬りで絶命させると後ろを振り返った。


 ゴオォォォ!


 と炎が一瞬狂い踊り、すぐに消える。ナタージャの魔法で倒された”半牛人歩兵”はまとめて地に伏せる。


 終わった、と思った瞬間、アチェリーが声を出す。


 「ほ…、北東六十二メートル、”半牛人統治者ミノタウロス・ルーラー…!!」


 崩れ壊れたディーリアの街の新たなる支配者が、姿を現した。

読んで頂いてくださってありがとうございます!

初めてのブックマークが来ました!

PVも500を超えました!

本当にありがとうございます!

次回も頑張って更新するのでよろしくお願いします!


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