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赤面の勇者

 デカリア草原を進む、一行の姿があった。


 いや。


 襲われる一行の姿と言うほうが正しいか。


 「半牛人歩兵ミノタウロスインファリリー』は厄介な相手である。


 ミノタウロスの系譜に連なるトーラスが故のその硬さ。速さと攻撃力はそれほどまででもないが、その硬さがトーラスの中で最低のこの魔物でさえ勇者の剣数撃入れないとダメなレベルであることが、端的にトーラスの危険度を現している。


 リーナ達一行は、『半牛人歩兵・強化種ミノタウロスインファリリー・テンパード』を含む30体ほどの”半牛人歩兵”に襲われていた。


 一人5~6体を倒そうと各自散開して戦う。”半牛人族女王ミノタウロス・トーラスクイーン”に対して使った各々の切り札があるため、遅れをとることはないだろう、と判断しての事だ。


 ”半牛人歩兵”を三回――二体通常、一体強化種――を倒したところで、リーナの頭の片隅で小さな疑問が生まれた。


 (・・・T種・・・強化種ってなんだろう・・・?)


 それは、今回『魔王覚醒』で新しく確認された強化種についての疑問だった。


 通常種を相手にしながらもリーナの思考は続く。


 (戦ってると・・・通常種とT種の違いは分かってきた・・)


 リーナが戦って感じた通常種とT種の違い、それは。


 (アンバランスだよね・・・、T種が(・・・)


 と言うことだった。


 星術の中の生物学的に考えると、物理攻撃力を上げたい、つまり筋力量を増やそうとした時に、本当に筋力量だけを上げるとその生物は死ぬ。


 それはつまり、筋肉を増やしたことで体重・銃身の位置がずれ、既存の骨だけでは支えられなくなることを意味している。状況は、陸に打ち上げられた鯨と似たような所だろう。


 筋肉以外でも同じだ。皮膚を厚くしようが、魔力を高めようが、生物としてバランスを保つことを前提に進化してきた生物にとって、一部分だけ強化するということは、そのしわ寄せがどこかに訪れることを示している。


 魔物のT種は、まさにその状態だ。


 ゴブリンやミノタウロスと言う魔物である以前に、『生物』であるそれらが、なぜか一部分だけ強化された者が存在している。


 死んでいてもおかしくないような状況なのに。


 ・・・と、そこまで考えて、リーナの体に悪寒が走った。


 (・・・違う、死んでもおかしくないんじゃない・・・!死なない程度に強化のしわ寄せが弱かったやつが生き残っているだけなんだ・・・!)


 そう。強化されたしわ寄せから生き延びたのではない。


 しわ寄せの影響から、何とか死に免れただけなのだ。


 現在、T種は通常種の三分の1程度しか確認されていない


 (・・・でもそれはT種が三分の1しかいないんじゃなくて、三分の二が、しわ寄せで生き残れなかっただけなんじゃ・・・)


 そこまで考えれば、大きな矛盾点に気付く。


 そう、進化論的に考えてもおかしいのだ。


 (種の三分の二が死ぬような変異をするなんて・・・)


 進化とは、生物がそこに適応し生存する為におこる。それが、まるでサイコロを振るように一定の確立下でしか生まれることすら許されない進化なんてものが、行われるとは思えない。


 ならばT種はどのようにして生まれたのか・・・?


 リーナはこの問いを、直感的に大事なものと考え更にリソースを当てようとした。


 丁度そのとき。


 リーナの剣が”半牛人歩兵”の首を切り飛ばした。


 そしてその先に見えた人物の顔に、リーナの顔が瞬時に爆発した。


 (うううううううう・・・・・・うぅ・・・)


 顔が赤くなって、思考がまともに働かなくなる。


 思い出されるのはあの光景だ。


 リーナに迫る”半牛人族女王”の拳。回避不能なタイミングと状況、この先訪れるであろう未来の恐怖。


 そしてそれが打ち壊される。シスによって。


 そこで情緒が振り切れなくなり、リーナは・・・!


 (ううううう・・・・・・!)


 リーナは赤くなった顔を覆って座り込んでしまった。根本的にここが魔物発生地帯であることを忘れているようだ。


 ・・・シスに抱きついて泣きじゃくる。


 その行動に恥ずかしくなっているリーナ。 別にキスとかでもないのに、そうなっているのは『素』のリーナ故だからだ。


 「大丈夫?リーナ・・・」


 昨日から言動がおかしいことを気にかけてくれるナタージャが、こちらへ向かってくる。


 どうやら”半牛人歩兵”はすべて屠られたようだ。


 ナタージャの顔を見るために顔を上げたリーナは、その中にシスの顔を認めてまた爆発してしまう。


 (うううううううううう・・・・・・っ、シスうううぅうううううう)


 「ほ、本当に大丈夫・・・!?」


 ナタージャが慌てて駆け寄った。



 リーナのそんな反応に、シスはほとほと困っていた。


 江面で見れば、同年代の女の子(恥ずかしがり屋)を泣かせた男のように見える、と言う問題ではない。


 しかし、こちらを向くたびに急激に顔を赤面させて顔を覆う姿に辟易している・・・という訳でもなかった。


 それでは何かというと。


 (・・・ヤバイ、俺の理性が飛びそうだ)


 ・・・これではただの変態だ。SVOを明確にしてもう一度。


 (リーナのその姿が可愛すぎてヤバイ、俺の意識が飛びそうだ。)


 あまり変わらなかった。


 (なつかしい(・・・・・)なこの状態。リーナが可愛すぎてヤバイ。前になった(・・・・・)時は数日で終わったが、いつまで続くのか・・・な?)


 シスにしては珍しく、顔を微妙に朱に染めている。しかしただ見ただけでは分からないだろう。相違点を指摘できるのは本人と以前(・・・)のリーナくらいなものだ。


 勇者とシスはお互いに顔を赤くしながらデカリア草原を進んで行った。

読んで頂いてありがとうございます!

もうそろそろ意味深な所に迫っていく予定です。

それから魔物の表記法を変更しました。順次訂正していくのでよろしくお願いします。

次回も頑張って更新するのでよろしくお願いします!

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