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攻略の勇者 前編 ユルド森『関の守護者』

 リーナが鍛錬を急いだのには理由があった。


 魔王のすむクラクナ火山までの道のりには、要所要所に『関の守護者(フィールドボス)』と呼ばれる強力な魔物が存在しているからだ。


 『関の守護者』は主に次のエリアに主にいる魔物の姿をとるため、『関の守護者』に対して整えた装備が次のエリアで有効であるということが分かっている。


 そして、要所要所とは、~森、~山脈、~湿地に一匹という感じに存在する。


 つまり、ユルド森にも一匹存在する、ということだ。


 『関の守護者』を倒さずに告ぎのエリアへ向かうことは難しいため、『関の守護者』は倒さねばならない。




 ユルド森とデカリア草原の境。森が草原に浸食を受けたように森が削られている場所。


 そこに、ユルド森『関の守護者』―――ミノタウロス・トーラスクイーンは存在していた。


 厳つい牛頭に筋骨隆々の体。毛皮に包まれた体は簡単に刃を通さないであろうことが予想され、手に持った粗末な鋳鉄製の大斧(ハルバード)の刃は二メートルを越えている。五メートルは下らないであろう巨体を持ち上げて、ミノタウロスは咆哮した。


 「ゴアァァァァァァァァァアァァ! ! 」


 リーナ達五人は、足を一歩踏み出す。


 「い…行くよ…! 」


 少し力弱いリーナの声と共に駆け出す五人。リミットは一時間。


 キールが大盾を構えて突撃する。リーナも盾と片手直剣を掴み走る。


 アチェリー、ビトレイは散開して攻撃位置を見定め、ナタージャは全体を見渡せる場所に陣取る。


 五人が思う。


 (…力試しだ…! )


 ナタージャが支援魔法をかけたのを皮切りにして、『関の守護者』攻略戦が始まった。




 シスはそれを、木の上から見ていた。


 『関の守護者』攻略には、まだ参加しない。シスが参戦すれば、恐らく一撃で終わってしまい、他の五人が鍛錬の成果を確認できないからだ。


 「シス、…。ちょっと待って欲しいの。一時間…。そう一時間だけ、待ってくれない…? 」


 まるで告白の返事のような言葉に、シスは二つ返事で頷いたのだ。


 故に、リミットは一時間。


 シスが介入するまで、シスがミノタウロスを倒すまで。


 …残り、一時間。




 「…やぁ! 」


 毅然とした時は出さないであろう可愛らしい掛け声と共に、リーナは片手直剣を振った。


 業物の剣は毛皮を切ったが、その肉まで切ることは出来なかった。


 毅然とした意識を保たせておいた時ならここで諦めただろう。


 しかし、『素』ではない意識を走らせることを止め、その分の演算能力をあけたリーナは、魔法を使うことが出来る。


 剣術プラス魔法。


 シス相手に練習したその戦い方は、まるで元々知っていた(・・・・・・・)かのようにリーナに馴染んだ。


 勇者の代名詞であるその組み合わせは、あたかもリーナの動きに合わせてデザインされたように見える。


 いや。


 リーナの体がその組み合わせに最適化されているのか。


 リーナは足を止め、魔法を放とうとする。


 が、ミノタウロスの動き、動いた先にリーナが突き飛ばされる。


 かろうじて足から着地したリーナは瞳にかすかな涙を浮かべて、しかし泣く事はなく次の行動を始めた。




 キールは自身に自己加速の魔法をかけていた。


 キールが最近体を鍛えているのはこれを使う為である。


 魔法による自己加速は、自身が考えたとおりに動く代わりに人体への影響を全く考慮することが出来ない。特に加速する向きを変えたとき、体へ慣性による衝撃が重く圧し掛かる。それを何とか抑えるには、魔法の操作を繊細にするか、強力且つ非連続的にやってくる衝撃に完全に耐え得る強靭な肉体を手に入れるしかない。


 「おおおおおおお! 」


 キールは後者を選択したのだ。それは戦闘中に必要以上に相手から意識を外すことを危惧したからであった


 キールの大盾がミノタウロスの大斧を防ぐ。力をそのまま受けるのではなく、タイミングを合わせて大斧を逸らし、衝撃を地面へ逃がす。


 「せいやぁぁぁぁぁぁ! 」


 加速した手が剣の振りを高速にし、斬りにくい肉を薄く断つ。


 「よしっ! オレも行ける…! 強くなれる…! ! 」


 「ゴルアァァァァァァァァァァァァァ! 」


 思わずのけぞったミノタウロスがリーナを弾き飛ばすのを見たキールは慌てるが、万が一にもリーナや後衛の方へ意識を向けさせない為にも、更に苛烈に攻撃を続けた。




 アチェリーは静かに集中していた。


 「…、アチェリーだって…! キールの力になりたいんだから! ! 」


 カッと目を見開き、魔法を使う。引き絞ったままにした矢へ魔法を纏わせ、魔力をも載せる。


 炎が蛇のように絡みついた矢は、放物線を描いてミノタウロスの角と角の間に突き刺さる。


 物理防御を強化されているらしいミノタウロスは、炎の魔法を受けて叫び声を上げる。


 アチェリーの方に憎々しげに視線を向けるが、キールが邪魔して具体的行動にまでは至らない。


 アチェリーが行っているのは、キールが諦めた物理と魔法、両方の同時攻撃だ。キールは前衛職な為難易度が高いが、アチェリーは光栄の為、キールよりは魔法に集中できるのだ。


 「…効いてる…! やったー! 」


 アチェリーが同じように矢へ炎蛇を絡みつかせて放つ。


 アチェリーの弓攻撃は、実は効率が良いものであった。


 魔法の対象が、敵ではなく矢だからだ。


 故に失敗することもなく、更に命中精度は元の弓に依存させられる。


 …しかし、ミノタウロスに一番火力を与えようとしているのはナタージャとビトレイだった。


 アチェリーが強烈な魔力を感じて後ろを振り向く。


 そこには…。


読んで頂いてありがとうございます!

今回は前後編構成となりました。一行のパワーアップ具合をご覧ください。

次回も頑張って更新するのでよろしくお願いします!

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