ネットダイアリ-57- GNAワールドの夜明け前 -7-
いつもどおり、グランソフトに出勤する亮と昴。
30分くらい遅れてくる美柑さん。
「最近、なんか、GNAやっていて面白くないなぁ」
「亮、愚痴るなよ。もう少ししたら、ワールドテレポートが出来て他の国からのプレイヤーが入ってくるから、面白くなると思うよ」
「まあね。でもさ、日本のサーバって過疎化が進んでいるから、他国プレイヤーに攻められると終わりじゃね」
「そうだね。まあ、遊べればいいんじゃないかな。美柑さんの作ったフィールドと同じように、他の国のサーバが作ったフィールドも見れるんだから、楽しみもあるよ」
「そういえばさ、ギルドどうすんの」
「一旦、今あるギルドに入ろうと思っている」
「イーデイさんいないからね。それで、どこか良いとこあった?」
「今知っているキャラがいるのは、ジンナイさんが率いる、ホワイトマジックかな」
「ジンナイさんって、ファイターだったでしょ。何でマジック?」
「ジンナイさんが中心なんだけど、マジシャンが多いらしい。それと、流行のホワイトハッカーを真似たんじゃない」
「正義という感じの意味かな。ジンアイさんらしいや」
「確かに、黒のイメージは無いよね」
「お前は、黒野なのにな」
「それって、関係ないでしょ」
「俺は、ゴッドだな」
「神崎の一文字だけだね」
「そういえば、最近、元気になったよな」
「だれが?」
「おまえ」
夏休み中のコンピ研の大会が終わり、全国大会に出場できたものの、全国大会初戦で敗退してしまったのである。戸村、江原ペアは、さすがに強かったものの、相手は、亮を中心に、カバーに入る昴を集中的に潰しにかかり、僅差で勝利を勝ち取ったのであった。
結局、そのチームが優勝し、実質2位だが、戸村の高校大会出場は終わったのであった。
また、ネットダイアリや偽昴の出現もなくなり、夏休みも終わり、すでに9月も中旬を過ぎていた。
「ワールドテレポートの実装は10月か」
「あっという間だよな」
「みんな、聞いてくれ」
突然、おっちゃんが真面目な声色で地下作戦室のみんなに呼びかけた。
「いよいよ、ワールドテレポートが実装されるわけだ。一部の者は、知っていると思うが、GNAは、情報世界の覇権をかけた擬似世界大戦だ」
突然の発表に、なにがなんだかわからない昴だったが、亮は、
「またまた、冗談でしょ」
おっちゃんの話は続いた。
「地理的な覇権が意味を成さなくなった今の世界は、情報世界の制覇がその国力になるという観点から、このGNA計画が始まった。GNAの国という概念は、その国に所属する国民のことではなく、国のあり方や考え方への賛否に基づき、GNA内のプレイヤーが増減する仕組みがメインテーマになる」
「単なるサーバ間が繋がるというものではないらしいね」
昴が亮にささやいた。
「君たちには、日本という国を守ると同時に、GNAでの日本の心をキャラクターに載せて、日本グラウンドの魅力を見せてあげてほしい。GNAでのキャラクターは、その国の鏡として見られるだろうから」
「突然、そんなこといわれてもどうすんの?」
「僕は、普通に遊べれば良いかな。それが、自分だし、それが日本だというなら日本だと思うしね」
「そんな、すごいことをやってたの!!!」
美柑さんが、僕たちのところにやってきて、驚いていた。
「グラウンド作りもたいへんだと思うけど、ミドリンにも参加してもらわないとね」
「まだ、下手なんだけどな」
「ギルドって言う仲間に入れてもらうんで、美柑さんも一緒にどうですか」
「うん。お願いする。でも、いいのかな」
「僕の知っている人だし、良い人なんで大丈夫だと思いますよ」
亮と昴と美柑さんは、ジンナイさんのギルドに入り、ワールドテレポート実装を待つのだった。
続きは別タイトルで掲載する予定です。




