ネットダイアリ-41- 新たな問題 -2-
「あれ?また何かあったのか」
登校途中の亮に言われる。
「何にもないとはいえないけど・・・」
「そうか。また、話せるときに話してくれ」
いつものとおりの会話だが、状況は、いつもどおりでない。
「アルバイトなんだけどさ、女の子ってなに」
いきなり確信に来ると思っていたが、まだ、黙っておこうと思い
「もうちょっと待って。あと、学校じゃ、グランソフトのことは言わないようにね」
「了解、了解」
「そういえばさ。昨日夜、GNAに来なかったけどどうした?」
「音声認識チャットの機械をつけていたから、遅くなってね」
「あれ?ゲーム機は諦めた?キーボード治った?」
パソコンのキーボードが壊れて、ゲーム機でGNAを操作していることになっていたのを忘れていた。
「まあ、キーボードが治ったのかな」と誤魔化した。
「そうか、良かったな。昴は、やっぱキーボードのプレイのほうが慣れているから安心するよ」
ゲーム機での操作があまりにもぎこちなかったんだろう。
「今日から普通にGNAできるから大丈夫だよ」
「今日からは、あそこでやる」
亮は、グランソフトの施設でプレイすることを楽しみにしているようだ。
昴は小声で、
「一応、音声認識装置がないから、当面、モンスターで狩りだぞ」
亮は声を出さず、頷いた。
昼休みに、写っていた校舎裏に行ってみた。
亮には、コンピ研の用事があると伝えて、昴一人で行ったのである。
「確かこのあたりだけど」
昴は、あたりを見回し、撮影したと思われる方向を見てみた。
「あった」
確かに、カメラはあるが、カメラの設置位置からすると、写っていた画像より広い範囲が写っているはずである。
見た感じ、人を感知してズームするようなセンサーが付いているような機種ではなさそうだ。
「あのカメラは、単純に、校舎裏を見張るための普通の監視カメラだ」
カメラが校舎裏あることが確認出来、昴は教室に戻った。
今日もコンピ研の活動はないから、コンピュータ室での確認作業は出来ない。
「放課後、おっちゃんに相談するかな」
放課後、亮と一緒にグランソフトへ向った。
「亮、開けてみてごらん」
と昴はエレベータを指差す。
「これ、すごい仕組みだよな」
「恐らく、簡単な仕組みだよ」
「そうか」
「最近、よくCMでやっている、携帯予約というのを応用したんじゃないかな」
「そうしたらさ。エレベータの入り口に人がいなくても、同じ番号をかけると、エレベータ開かないかい」
「ここからは、推測だけど、グランソフトが携帯の基地局になっているんじゃないかな」
「なんだそれ」
「携帯の電波を中継する場所みたいなところだよ。この近辺の電波は、グランソフトでキャッチして、携帯の位置情報がわかるだろうから、エレベータ前かそうでないかを判別してエレベータの開け閉めしているんでしょ」
「なるほどね。ナビの応用ってことね」
「推測だよ」
「やっぱ、昴はこういうのが得意だね」
「一応、コンピ研だから」
あまり、コンピ研とは関係ないけど、亮に納得しやすいような返事をした。
「お、エレベータの扉が開いた」
「昴。なんでさ、いちいち3階に上がらないといけないのかな」
「恐らくだけど、あんな施設がここにあることを隠したいのだと思うよ」
「みんなに自慢したい気持ちを抑えるのが大変だった。昴の気持ちが良くわかる」
違うんだけど。と思う昴だが、
「知っていることを言えないって大変だと思う。特に良いことはね」
昴にとっては、後ろめたいことばかりだったので、我慢という感じではなかった。しゃべらないようにするのに必死だった。
「え~と、次は・・・」
亮が操作しているところに、おっちゃんが来た。
亮の操作でエレベータが開くが、
「亮、ちょっと、井出さんに話があるから、先に行ってて」
「わかった。先に始めておく」
以外にも何も言わず、先に作戦室へといってしまった。よほど作戦室でGNAをやりたかったんだろう。
おっちゃんは、
「ネットダイアリに変化があったかね」
「いえ、もっと奇妙なことが・・・」
画像収集アプリで見覚えない自分の画像について、おっちゃんに話した。
「わかった。すぐに調査させる」
おっちゃんは、携帯を出し、電話をかけて部下に指示を出したようだ。
「すぐに、判明するだろう。地下に行って、亮君にいろいろと教えてやってくれ」
「わかりました」
昴はエレベータに乗り、地下作戦室に向かった。




