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ネットダイアリ-38-   亮と昴とグランソフト

 いつもどおりの登校。あきらすばるは、いつものようにゲームの話や期末テストの話をしながら、学校へ行った。

 学校では、美柑みかんさんがいないかと、つい、ちらちらと女生徒を見回す。

「おい、すばる、お前、誰か探してるのか」

 すばるの挙動を見て、あきらすばるの後ろから声をかけた。

「びっくりしたな。いきなり後ろからなんて」

「びっくりするほどのことか。・・・ふむ、怪しいな。さては、女の子か」

 図星を指摘されて、顔がこわばるすばるを見て、

「え、マジ。まったく興味なかったのに」

 あきらからすれば、驚きであった。

「これ以上の追求はやめておこう。あとで話せよ」

 仕方なく、すばるは頷き、あきらは教室に戻った。


授業が終わり、放課後となった。期末試験前なので、お互い部活は、休みだ。

もっとも、コンピ研は、当面、活動しない。


すばる、帰るか」

「うん、帰ろう」

「例の件を話すには、どこか寄らないといけないか」

「もうちょっと、待ってもらっていいかな。アルバイト先の関係なので」

「そうか、今日も行くんだ」


 すばるは、おっちゃんに、自宅のパソコンの件を聞くと同時に、あきらのことについても相談することにしていた。


 グランソフトの3階に行くと、ちょうどおっちゃんがいた。

「ちょうど、今から下に行くところだ。例の美柑みかんちゃんは来ているぞ」

「井出さん、ちょっと、相談があるのですが」

「例のスパイの話か」

「いえ、自分のパソコンのことです」

「何か、変化があったのか」

「いえ、ネットダイアリには異常はないのですが、武装ゴブリン画像騒動以来、自宅のパソコンでGNAジーナを操作してないんです。大丈夫でしょうか」

「バル君は、どうやって、キャラを育てているんだ」

「ゲーム機に切り替えてやってます」

「それはまずいな。まあ、向こうもこっちがいろいろと探っていることは気づいているかもしれないが、相手のターゲットがバル君ひとりとは限らないし、事実、うちも攻撃を受けたことだし」

 おっちゃんは少し考えて

「自宅では、GNAジーナをパソコンでやって、相手の様子を見てもらったほうがいいな。一応、GNAジーナでの改変は、規約違反なので、ロシアや他国であろうとこのルールは敗れないはずだ」

「例えば、ロシアだとしたら、日本のGNAジーナに何かしても、日本は口を出せないんじゃないですか」

GNAジーナ参加者の規約だから、それはない。ロシアだって、主権を失いたくないだろうから」

 主権?


「あと、もう一ついいですか」

「なんだ」

「実は、美柑みかんさんに関係するというか、自分の個人的な問題というか」

「言ってみろ」

「友人の神崎かんざきあきらにグランソフトのこととか、ロシアのこととか話してもいいでしょうか」

 おっちゃんは、考えていた。

「彼は、バル君が信頼できる人か」

「もちろんです。幼馴染です」

「でもな」

「彼もGNAジーナをやっていて、いつも一緒に遊ぶ仲間なんです」

「それだけだと、厳しいな。警察との関係もあるし」

「え、彼も警察に行って、ツェットとは会ってますよ」

「それは初耳だ。ツェットからの情報は、当てにならんな」

「学校なんかで、あきらとしゃべるとき、僕が、しゃべれないことが多くなって辛いんです」

 すばるあきらとの間での会話がありきたりになっていることを感じており、また、あきらも同じことを感じているだろう。

「そうだな。彼にもアルバイトに来てもらうという条件付なら」

「わかりました。聞いてみます」

 あきらは、部活をしているので、どうなるかわからないが、あきらには、アルバイトの件を伝えることにした。


 おっちゃんとエレベータで地下作戦室に行く。

 美柑みかんさんは、画面に向って、必死にイラストを書いているようだ。

 すばるは、おっちゃんに聞いた。

「あの、ここでも、音声認識チャットできませんかね」

「構わないよ。今は機材ないから、あとで取り寄せるよ」

「ありがとうございます」


 音声認識チャットがあれば、ここでバルを育てることが容易くなる。


 いつもどおり、進化したウルフソルジャーで遊んでいると、美柑みかんさんがすばるの肩を叩いてきた。

すばる君。ちょっと来て」

 すばるは、試してみたかった「救援」スキルを諦め、美柑みかんさんに付き合うことにした。

「これこれ、妖精さん。いいでしょ」

 例のスパイ疑惑があるので当たりさわりのない返事で

「ええ」

「また、ダメ~」

 机に伏した美柑みかんさん。

「いえ、綺麗ですよ」

「なんか、感じ悪~い」

「いえ、そんなことないですよ」

「昨日何かあった」

 すばるは、顔に出ていたのかとあせり、

「いえ、特に何もないですよ」声が上ずった。

「君~~。何かあったでしょ。おねぇさんに白状しなさい」

「また、小悪魔プレイですか。美柑みかんさん」と心で思いつつ、

「いえ、特に何もないですよ」と普通に言った。

「う~ん。ロボットに近いサイボーグかな」

「次のモンスターですか」

 真面目に言った

「ふざけている??」小首を傾げる。

「いえ、真面目に」

「やっぱ、なんか変」

「妖精ですよね。いいんじゃないですか」

「あっそう」

 不機嫌そうに言い、また、イラストに取り組みだした。


 美柑みかんさんの対応を何とか切り抜けたすばるは、ウルフソルジャーのスキルを試すため、席に戻り、また、モンスター育成に取り組み始めた。

 ウルフソルジャーは、倒されたらしく、ウルフの生息区域に戻っていた。


 各モンスターの生息区域は、街の近くから、遠ざかるに従い、モンスターのレベルが上がり、基本的に放射線状に同じモンスターが生息する形になる。すばるのウルフソルジャーは、ウルフの上位種にあたるので、ウルフ区域の中でも一番街から離れた区域に生息する。まだ、生息数が少ないので、すぐ近くに、ウルフより強いプーマが生息している。


 恐らく、まだ、プーマの生息区域まで来るシビリアンはいない。プーマは、シビリアンが倒せない強さではないが、プーマの生息区域までたどり着いたとしても、街までの帰還が困難と思われる。プレイヤーがプーマ区域で倒れることが前提なら可能だが、経験値が大きく減るので、物好きなプレイヤー以外はそんなことはしない。

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